2021.04.14

中村太地が韓国挑戦1年目を語る…「KBLで戦うためには常に自分のフルマックスのパワーが必要」(後編)

韓国で自身のPGスタイルを模索する中村太地 [写真提供]=KBL
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日本人として初めて韓国プロバスケットボールリーグ(KBL)でプレーした中村太地。今回、帰国に合わせてインタビューにこたえてもらった。前編ではKBLでプレーして感じた手応えや悔しさなどを聞いたが、後編では来シーズンに向けての展望を話してもらっている。折しも日本代表候補に選出された中村選手の挑戦をお伝えする。

苦しみながら課題を得て、将来を見据える

――通訳が帯同していたとはいえ、言葉の面で苦労したことは?
中村 通訳の方には詳細に訳してもらいましたが、自分から話しかけて、コミュニケーションを取るようにはしました。難しかったのがチームの雰囲気を把握することでした。シーズンが変則なスケジュールなのでコンディションが悪くなることがあるのですが、先輩たちはそこから上げることができるんです。その秘訣がチームの雰囲気をすごく大切にすることで、雰囲気を良くするためにたくさん話し合いをしていました。言葉がわからないとその雰囲気を知ることができないので、何を話しているか気になります。言葉を知った先にある世界が知りたいので、そこをモチベーションにして、これからも毎日韓国語を勉強しようと思います。

――これまで課題ばかり上がりましたが、成長できたと思う点は?
中村 自分がクリエイトするところの判断、トランジションの中で自分が果たす役割については、意識して考えるようになりました。パスの選択肢も増えたと思います。

――長身ポイントガードとして技術や考え方を学びたいと韓国に渡りました。実際にガードとして学んだことは? また理想のガード像は見えてきましたか?
中村 韓国に行く前は“THE・1番(PG)”をやりたいと思ってましたけど、ちょっと違うタイプのガードができるんじゃないかと思うようになりました。THE・1番というよりは1.5番くらいの感じです。オフェンスではクリエイトをして、シュートを決めることもできる。ディフェンスではスピードがある選手についても、フォワードについても、ポストアップされても押し込まれないようにして、場面、場面に応じてやれるガードを目指したいです。

 もちろん、今の状態ではゲームをコントロールするところまでは至っていなくて、監督やヒョン(兄貴、先輩の意味)からは『もっとシンプルに攻めろ』『動きながら判断できるようになれ』とずっと言われていました。いま何をすればチームが機能するかを考え、それもプレーを止めないで、流れの中でより考えて動けるようにならなければ、韓国では使ってもらえません。自分がどう生きて、味方をどう生かして、自分もどう生かされるか……。それが場面場面でできるようになるには経験を積むしかないのかな、と思います。試行錯誤を繰り返して経験値を積んでいくことで、自分のやりたいガードになれるのでは、という考えに今はなっています。

――挫折や戸惑いがあったKBL初年度でしたが、それでも海を渡って良かったと思うことは?
中村 自分が韓国で結果を残さなきゃいけないという使命感がさらに強くなりました。僕が韓国で独り立ちすれば、これに続くアジア枠の道も拓けるというか。海外の選手と戦うと、『絶対に負けたくない』というアドレナリンが日本にいるときより出ますし、僕はそう考えることがモチベーションやパワーになったので、韓国に行って良かったと思う。これは日本でプレーしていたらわからない感覚でした。日本でもハングリー精神ある選手はたくさんいますが、僕自身は海外に出たことで、もっとやらなきゃだめだ、まだまだ全然足りないということを痛感したし、学びました。

――来シーズンの契約はどうなりますか? 
中村 まだ何も決まっていなくて、これからチームや監督と相談して決めることになりますが、僕自身としては来シーズンも韓国でプレーしたいです。まだ何も結果を残していないですし、韓国でも成功したいと思っているし、何よりイーさん(イ・サンボム監督)にまだ何も返せていないので恩返しがしたいです。まだまだ学ぶべきものが韓国にたくさんあるので、来シーズンもKBLでプレーして成長したいです。

中村太地は来シーズンも韓国でもプレーを望んでいる  [写真提供]=KBL

 KBLによれば、「アジア枠でプレーする選手は1年ごとの契約」というルールがあるため、来季の契約についてはこれからの交渉となるが、原州DBのイ・サンボム監督はシーズン中に「今シーズンの太地はルーキーと同じ。初年度はKBLで戦うための基礎を作り、来季に戦力化したい」と何度も発言していた。現時点では未定ではあるものの、契約するための交渉のテーブルにつくことは間違いない。イ・サンボム監督に中村の初年度の評価を聞いたところ、以下のような答えが返ってきた。

「今シーズンの太地は様々な点で成長したし、今後も成長しかないと思う。特にバスケットのセンスはやはりあると確信した。逆にいうと、高校以降、基本的なことを学ばずセンスだけでやってきてしまった。可能性を秘めている選手であるが、本人がビックガードという特殊性の長所を生かしていない。それらを踏まえた宿題としては、ディフェンスに対する理解度を高めること。韓国ではフィジカルコンタクトが日本より多いので体力をつけること。スピードをつけることの3点。体力とスピードはトレーニングでつけられるが、そのトレーニングが足りない。これらの短所を冷静に見極めて強化していけば、本人もチームとしても効果が出てくると思っている。太地にはオフシーズンにこれらの短所を見つめ直してほしい」と語る。

 中村太地のKBL初年度は山あり谷あり。「思った以上にいろんなことが次から次へとやってきて壁がたくさんあったけど、試練を乗り越えようとチャレンジすることでしか道は拓けない」と実感し、来季への意欲をさらに高めたところだ。課題である身体作りから取り組み、成長するためにKBL2年目への準備を始める。

取材・文=小永吉陽子

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