2018.08.15
8月14日。オクラホマシティ・サンダーのフランチャイズプレーヤー、ラッセル・ウェストブルックが初来日を果たす。
ここでは、ウェストブルックのここまでのNBAキャリアと功績の数々をお届けしていこう。
■ウェストブルックが残してきたNBAにおける功績
レギュラーシーズンMVP:1回(2017年)
オールスターMVP:2回(2015、16年)
オールNBAチーム選出:7回(うちファーストチームは2回)
オールスター選出:7回(2011~13、15~18年)
得点王:2回(2015、17年)
アシスト王:1回(2018年)
■ウェストブルックが持つ唯一無二の偉業
1シーズンにおけるトリプルダブル達成数:42回(歴代1位/2016-17シーズン)
シーズン平均トリプルダブル達成数:2回(17、18年)
■アメリカ代表における功績
オリンピック金メダル:1回(2012年ロンドンオリンピック)
世界選手権*金メダル:1回(2010年トルコ大会)
*現ワールドカップ
NBAデビューとなった2008-09シーズン。若手の多いサンダーで、ウェストブルックはシーズン序盤の11月末から先発ポイントガードのポジションに定着すると、平均15.3得点4.9リバウンド5.3アシストをマーク。フィールドゴール成功率は39.8パーセント、3ポイントシュート成功率では27.1パーセントと低調に終わるも、攻防両面でエネルギッシュなプレーを披露し、オールルーキーファーストチームに選出。
翌09-10シーズンにはジェームズ・ハーデン(現ヒューストン・ロケッツ)がルーキーとして加入し、シックスマンとして活躍。ウェストブルック、そしてケビン・デュラント(現ゴールデンステート・ウォリアーズ)と共に“3本柱”を形成したサンダーは、このシーズンに50勝を挙げてプレーオフの舞台に立つ。
ファーストラウンドの相手は、このシーズンに2連覇を果たすこととなったロサンゼルス・レイカーズ。コービー・ブライアント(元レイカーズ)、パウ・ガソル(現サンアントニオ・スパーズ)を筆頭に、経験豊富なディフェンディング・チャンピオンとのシリーズは、若いサンダーにとっては1勝できれば御の字かと思われた。
しかしサンダーは持ち前の身体能力の高さと爆発力で予想外の健闘を見せる。2連敗で迎えたホームの第3、4戦に連勝し、シリーズを2勝2敗のタイに持ち込んで見せた。そしてその要因の1つがウェストブルックの存在だった。
第4戦終了時点で、ウェストブルックは平均21.8得点、フィールドゴール成功率55.2パーセントという大暴れでレイカーズへ脅威を与えた。そこでコービーはフィル・ジャクソンHCに「俺にアイツとマッチアップさせてくれ。アイツを止めなければ俺たちは負けてしまうかもしれない」と主張するほど、少なからず危機感を抱いていたのである。
すると集中力を増したコービーの前に、ウェストブルックは残り2戦でフィールドゴール成功率33.3パーセントにシャットダウンされ、サンダーは2勝4敗で初のプレーオフの舞台から降りることとなった。
それでも、デュラント、ウェストブルック、ハーデンという強力なトリオはリーグでも有数の爆発力を誇り、“近い将来の優勝候補”と称された。翌10-11シーズンにはカンファレンス・ファイナルまで進出、11-12シーズンにはハーデンが最優秀シックスマン賞に輝くほどの成長を遂げ、スパーズとのカンファレンス・ファイナルを2連敗から4連勝。ウエストを制し、NBAファイナルという頂上決戦へ。
ファイナルの相手はレブロン・ジェームズ(現レイカーズ)とドウェイン・ウェイド(現未所属)擁するマイアミ・ヒート。初戦こそデュラントが最終クォーターに大活躍して勝利を挙げたものの、翌戦からレブロンが大暴れし、1勝4敗で初優勝を逃してしまう。
ウェストブルックは頂上決戦であろうと平均27.0得点6.4リバウンド6.6アシストと奮闘。第4戦では43得点と大爆発。しかし試合終盤にミスを犯してしまうなど、勝ち切ることはできず。
ファイナル返り咲きと優勝を目指すサンダーだったが、12年10月下旬にハーデンがロケッツへと移籍。その後はウェストブルックとデュラントによる超攻撃的デュオを中心に戦うも、NBAファイナルへ舞い戻ることはできなかった。
16年のプレーオフではカンファレンス・ファイナルでウォリアーズ相手に3勝1敗と圧倒的有利な展開に持ち込むも、そこから無念の3連敗を喫し、シーズンを終えた。すると16年夏にデュラントがウォリアーズへ移籍し、サンダーは名実共にウェストブルックのチームとなったのである。
デュラントの移籍後、サンダーと延長契約を結んだウェストブルックは「世界最高のファンの前で、新しいチームメートたちと共に前へ進むことができ、とても興奮している」とコメントし、自他ともに認めるリーダーとして16-17シーズンを迎えた。
このシーズンのサンダーは、ウェストブルックが攻防両面でフル回転しなければなかなか勝利することができないという状況に陥る中、スティーブン・アダムズやアンドレ・ロバーソン、ビクター・オラディポ(現インディアナ・ペイサーズ)のサポートもあり、ウェストブルックはリーグを席巻。トリプルダブルを連発するだけでなく、試合の重要な局面でショットを決め切るなど勝負強さも誇示し、サンダーをウエスト6位となる47勝35敗へとけん引。
そしてウェストブルック自身は平均31.6得点で得点王に輝いたばかりか、シーズン通算42度のトリプルダブルでリーグ新記録を樹立。さらに、1961-62シーズンのオスカー・ロバートソン(元シンシナティ・ロイヤルズほか)以降、誰も達成したことがなかった金字塔の1つ、平均トリプルダブル(平均31.6得点10.7リバウンド10.4アシスト)も達成するなど強烈なインパクトを残し、自身初となるシーズンMVPをも獲得。
昨季はポール・ジョージとカーメロ・アンソニー(現ロケッツ)をチームに加え、強力な“ビッグ3”体制でシーズンに臨むも、チームはなかなかかみ合わず。48勝34敗でウエスト4位となって迎えたプレーオフでも、ユタ・ジャズの前に2勝4敗と沈黙してしまい、早々にシーズンを終えることとなった。
それでも、ウェストブルックは平均25.4得点10.1リバウンド10.3アシストを挙げて前代未聞の2シーズン連続平均トリプルダブルを達成。まるでゲームのようなとんでもない成績を残し、あらためてリーグ屈指のプレーヤーであることを証明してみせた。
今夏は移籍もウワサされたジョージが残留したことで、着実に戦力増強を断行したサンダー。ナーレンズ・ノエルやデニス・シュルーダーといった戦戦力を加え、ウェストブルックはサンダーを統括するリーダーとして今季を迎えることとなる。
誰もが認めるほどの卓越した能力を誇るウェストブルックは、まぎれもなくリーグトップレベルの選手。この男が繰り出すプレーの数々には、現地観戦でなくとも、画面上からもその迫力が伝わってくる。
相手選手を置き去りにしてしまう電光石火のドライブ、豪快極まりないダンク、鋭い矢のようなパスに鬼気迫るリバウンド、勝負強さを兼備したプルアップジャンパーは見ていて爽快だ。
リーダーとしてチームをまとめあげる統率力と行動力も見事なものを持つウェストブルックだが、その一方で「自身のすべてを注ぎ込む」この男のプレーには、全身からほとばしる熱い情熱が感じられる。また、人々を惹きつける笑顔も魅力的であり、感情を表に出す表情筋豊かなウェストブルックのプレーの数々は、世界中のファンをNBAというすばらしい世界へと引き込んでいく。
8月14日。世界最高峰のNBAの中でも、人々に一際強烈なインパクトを与えるウェストブルックの一挙手一投足から目を離してはならない。
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