2019.03.04
昨年12月中旬から今年の2月22日(現地時間21日)のロサンゼルス・レイカーズ戦にかけて、ヒューストン・ロケッツのジェームズ・ハーデンは32試合連続で30得点以上を奪取。
NBA史上、30得点以上を連続して挙げた選手として、ハーデンは65試合連続という天文学的な数字を残したウィルト・チェンバレン(元フィラデルフィア・ウォリアーズほか)に次ぐ歴代2位の最長記録を残してみせた。
自慢のボールハンドリングから繰り出されるステップバック3やクロスオーバー、巧みなステップワークからペイント内へ侵入して変幻自在のフィニッシュを見せるハーデンは、現役有数の“ガードすることが困難な選手”の1人であることは間違いない。相手チームのファウルを誘発し、成功率8割を軽々と超えるフリースローで得点を稼ぎ出すことができる点も、ハーデンの魅力の1つと言っていいだろう。
26日(同25日)のアトランタ・ホークス戦。ハーデンはフィールドゴール21投中成功わずか7本、3ポイントは10本すべてミスしたことで28得点に終わり、連続記録は32でストップ。それでも、ハーデンが約2か月間、30得点以上を連続して挙げていたことは称賛に値する。
そんな中、往年の名ディフェンダーたちがハーデンの記録について言及していたので紹介したい。
まずはシドニー・モンクリーフ(元ミルウォーキー・バックスほか)。190センチ81キロのコンボガードは、キャリア11シーズンで5度のオールスター選出、オールNBAチームにも5度選出された実績を誇るレジェンドの1人。1983、84年には2年連続して最優秀ディフェンシブプレーヤー賞を獲得しており、5度のオールディフェンシブチーム(そのうち4度がファーストチーム)に選出された名ディフェンダーとしても知られる男である。
『HoopsHype』のアレックス・ケネディー記者に対して、モンクリーフはハーデンのオフェンス力を称賛しつつも、自身がプレーしていた当時、ハーデンがプレーしていたらどうなっていたかと聞かれ、このようにコメントしていた。
「彼(ハーデン)は同じように連続得点記録を残すかもしれない……。いや、(俺たちの時代では)それは無理だろうね。俺たちが彼をノックダウンしていたはずだ」。
80年代と言えば、3ポイントが導入されたばかり。モンクリーフが全盛時だった80年代中盤までは、特にビッグマン中心のリーグだったと言っていい。モンクリーフはこのように見ていた。
「当時はディフェンスが(今よりも)ペイント内でヘルプするようにセットされていたんだ。3ポイントはそこまで大きな要素でもなかったからね。だからマッチアップ相手をペネトレイトさせるように仕向けていたものさ。今のような1対1のディフェンスではなく、チームディフェンスとして機能していたんだ。そしてセカンドラインと言われるインサイドの選手たちがレイアップを何度も防いできたのさ」。
マイケル・ジョーダン(元シカゴ・ブルズほか)さえも苦しめたというモンクリーフ。現役最高級のオフェンシブ・プレーヤーとなったハーデンに対し、どのようなディフェンスを見せるのか、できるなら見てみたいものだ。
そしてモンクリーフの意見に賛同したのが、ロン・ハーパー(元シカゴ・ブルズほか)。80年代後半から00年序盤にかけてプレーしたハーパーは、キャリア序盤は主にスコアラーとして、90年代中盤からはスマートなディフェンダーとして君臨。90年代後半にブルズ3連覇の主力として、00年と01年はロサンゼルス・レイカーズで裏方として2度の優勝、計5度の優勝を勝ち取ってきた。
ハーパーは「俺が現役の頃だったら、ジェームズ・ハーデンはどこか痛めて寝込んでるだろうね」と口にした。ハンドチェッキングが頻繁に見られた90年代は、ドライブを得意とする選手でも、相手ディフェンダーの激しいディフェンスに苦しむシーンが頻繁にあり、ファウルを誘発してフリースローを何度も獲得できる選手はめったにいなかった。
その当時は現代にはないタフでフィジカルなマッチアップが日常茶飯事で、ケガも防ぐことはできない状況だったのである。
ハーデンは90年代のバックコート陣ではいなかったほどのパワフルな体躯を誇っているとはいえ、モンクリーフやハーパーといったディフェンスでリーグを生き抜いてきた選手たちからすると、「まだ甘い」ということなのだろう。
とはいえ、ハーデンが誇るシュート力と衰え知らずの驚異的なスタミナを駆使すれば、90年代でプレーしていようと、32試合連続とはいかなくとも、それに近い記録を残すことはできるのではないか。おそらく、ハーデンに足りないのは優勝経験のみ。今後ハーデンがチャンピオンシップを勝ち取ることができれば、この男のプレーに対する評価も大きく変わってくるに違いない。
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