2023.01.11

八村の未来はウィザーズとともに?チーム関係者はトレードの噂を否定、さらなる成長に期待

トレードも噂された八村ですが、現地記者によるとその噂は誤りとのこと[写真]=Getty Images
某ストリートメディアのシニア・エディターを経験後、独立。ひとつのカルチャーとしてバスケットボールを捉え、スポーツ以外の側面からもNBAを追いかける。

 NBAにおける日本人選手の契約は、我々バスケットボールファンにとって最も関心が注がれる項目のひとつである。

 八村塁は、ワシントン・ウィザーズにまつわるトレードの噂で頻りに名前が挙がっている。最近では、行き場を探しているフェニックス・サンズ所属のジェイ・クラウダー獲得のために八村を提示したとされているが、サンズはウィザーズからのオファーを見送ったと言われている。

 しかし、本当にウィザーズは八村を差し出したのだろうか。『The Athletic』のジョシュ・ロビンスは、SNSでファンからウィザーズに関連する質問を募集。その中には八村のトレードについての話題もあり、ロビンスは彼の持つ情報を提供している。

 必要とされるチームで1日でも早くコートに戻りたいと燻っているクラウダーは、ウィザーズのみならず、ほとんどの球団の戦力を底上げしてくれるに違いない。ハードなディフェンス、マッチアップ幅の広い優れたフィジカルとサイズ、計算可能なアウトサイドショットの三拍子を兼ね備え、3&Dプレーヤーを格付けするのであれば、リーグでも最上位にランクインするだろう。また、八村より守備能力に長け、デニ・アブディアより3ポイント成功率が高い事実は、数字が証明している。

 しかし、ロビンスが匿名のチーム関係者から入手した情報によれば、ウィザーズがクラウダー獲得のために八村を提示したという報道は誤りだという。そして、ロビンスは「仮にクラウダーが最高のコンディションにあるとしても、ウィザーズの長期的なチーム作りの観点から、八村を差し出す意味はない」とし、ソースへの信頼を強調している。

 今シーズンでルーキー契約が終わる八村は、交渉期間中に契約延長には至らなかったが、2月10日(現地時間9日)までに同選手をトレードしない限り、ウィザーズは制限付きFAの優先権を所有することになる。仮に、オフに他球団が八村にオファーシートを提示しても、その契約条件にマッチすれば、ウィザーズはブラックサムライをチームに留めておくことができる。

 一方、クラウダーは7月に無制限のFAとなるため、仮にウィザーズがトレードでクラウダーを獲得したとしても、クラウダーがウィザーズと再契約する保証はない。こうした観点から、来季球団を自由に選択できる32歳と、優先交渉権付きの未来ある24歳の若武者をトレードするのは、あまりにも近視眼的だろう。

 そして何より、最も肝心なのはウィザーズフロントの“ハート”だろう。球団は八村のことを愛しており、チーム関係者たちは彼が選手として一回りも二回りも成長できると信じている。今シーズンの36分換算のスタッツでは、平均得点がキャリアハイ。また、ディフェンス面でも昨年からの改善が見受けられるほか、コート上でチームがどれだけ該当選手を使ってプレーしたかを数値化するUSGパーセンテージが昨シーズンから約2パーセント向上していることは、ウェス・アンセルド・ジュニアHCの戦術理解度とチームからの信頼の深まりの表れと言える。

 もちろん、現在の中心選手であるカイル・クーズマクリスタプス・ポルジンギスがプレーヤーオプションを破棄すれば、八村を含めた契約延長とともにサラリーキャップの計算が必要になるだろう。

 しかし、上記の懸念点を踏まえたとしても、八村とクラウダーのトレードは理にかなっていない。復帰まもなく、まだプレーにムラはあるものの、中終盤に向けてコンディションと存在感が高まってくれば、ウィザーズは八村との契約更新を最優先に検討することだろう。

文=Meiji

BASKETBALLKING VIDEO