2024.06.27
ワシントン・ウィザーズは、2019年にドラフト9位指名で迎えた八村塁を手放す苦渋の決断を下した。日本のNBAファンとしてはともに過ごした3年半を名残惜しく思うものの、新天地は説明不要の名門ロサンゼルス・レイカーズ。史上最高の選手であるレブロン・ジェームズとの共演も実現し、期待は膨らむ一方だ。
一方、八村が抜けたウィザーズは1月30日(現地時間29日)時点で、イースタン・カンファレンスの9位でプレーイン圏内を確保。ただし、圏外との勝率差は紙一重であり、引き続き油断できない状況に変わりない。
大黒柱のジョン・ウォール(ヒューストン・ロケッツ)との別れを皮切りに、ウィザーズは変革に向けて舵を切った。そして、2019年には八村、2020年にはデニ・アブディヤ、2021年にはコーリー・キスパートと、ドラフト上位指名で有望株を次々と獲得することに成功。しかし、チーム作りはまだ序章で、ここ数年で劇的な変化や改善が見られたかと言えば、若干の疑問符が残るのも事実だ。フロントはこうした状況を見つめ直し、結果として八村のトレードに踏み切ったと思われる。
ウィザーズのトミー・シェパードゼネラルマネージャーは『NBC Sports』のインタビューで、八村を絡めたトレードの意向を説明。その真意は、アブディアの成長を促すためだったようだ。
「1月下旬になり、2月のトレードデッドライン(2月9日)が迫ってきましたが、これはウィザーズにとっていい機会だと思いました。デニ・アブディヤのためにプレータイムを確保しようとすると、彼のポジションでは“渋滞”が起こっていたので、ここに小さな分岐点がありました。これが今回のトレードの最大の理由です」
それでも、シェパードGMは八村との決別も容易な決断でなかったとコメントした。
「もちろん、塁は間違いなく素晴らしい選手です。今シーズンも素晴らしい仕事をこなしてくれました。1年目はオールルーキー(セカンドチーム)に選ばれ、2年目はプレーオフのフィラデルフィア・セブンティシクサーズ戦でビッグショットを決め、ソリッドな選手へと成長してくれました」
「しかし、我々が改革に着手すると、KP(クリスタプス・ポルジンギス)の加入によってラインアップやローテーションも変化し、彼(アブディヤ)のプレータイムは減少の一途をたどりました。我々が目にしているのは、守備面で前進しなければならないウィザーズの未来において重要なパートを担う選手です。私は彼が素晴らしいディフェンダーで、ピック&ロールを活用できるウィングだと感じています。彼はリーグでもベストの1人であり、ご存知のとおり(塁のトレードは)難しい決断でした。すべてが思い出ですから、心底悩みました」
「同時に、我々ウィザーズは前に進まなければならず、ケンドリック(ナン)のような新たな才能を迎えるのは非常に重要なことです。彼がオフェンスで即戦力になれることは、リーグで証明済みですよね? 彼は間違いなく、ペリメーターで脅威となります。しかし、我々が本当に必要としていたのは、デニにもっと責任とプレーする機会を与えることだと感じています」
アブディヤの成長に賭けたウィザーズは、この決断が今後の明暗を分けることになるかもしれない。事実、八村は今シーズン、コート上における選手使用率でチーム4位のパーセンテージを誇り、豊富なオフェンスバリエーションを武器にベンチから30得点を期待できる数少ない選手だった。
一方、アブディヤは3ポイントシュート成功率がキャリア最低の27.5パーセントとアウトサイドの不調が顕著で、『NBC Sports』は彼の将来がパワーフォワードにあると予想。しかし、シェパードGMが評価するディフェンス性能はスタッツにも表れており、守備面に限定した勝利貢献度指数はアブディアがチーム3位、八村がチーム11位と、前者が後者を大きく上回っていた。
球団は違えど、新たな役割が与えられた八村とアブディヤ。このトレードが未来ある2人の若者にとって有益なものだったのかは数年後にわかるだろう。
文=Meiji
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