2024.02.13

渡邊雄太がサンズからトレードされた理由…地元メディアが3つの観点から分析

トレードで古巣グリズリーズへ移籍した渡邊雄太 [写真]=Getty Images

 2022-23シーズンにブルックリン・ネッツで存在感を示した渡邊雄太は、その活躍が評価されてフェニックス・サンズと複数年契約を締結した。この複数年というのが渡邊への期待の表れだったが、トレードデッドラインを目前に、サンズは彼をメンフィス・グリズリーズへ放出。ジョージ・ワシントン大学出身の日本代表は、NBAデビューを果たした球団でリスタートを切ることになった。

 開幕当初こそプレータイムを獲得していた渡邊だが、なぜ両者はシーズン半ばにして袂を分つことになったのだろうか。地元メディア『Valley of the Suns』は、渡邊がトレードされた理由を3つの観点から分析した。

■シュート精度の低迷

 サンズが最も渡邊に求めていたこと。それは紛れもなく、オープンからの3ポイントシュートだった。

 昨シーズンの渡邊は、3ポイントシュート成功率44.4パーセントという驚異的なスタッツを記録。コーナーからのショットでは長きにわたり、リーグトップの確率をマークしていた。しかし、今シーズンはこの数字が32.0パーセントまで低迷。体格と長さに恵まれ、ディフェンスでもハッスルできる渡邊は、ロールプレーヤーとしては完璧な“3&D”と見なされていただけに、リング獲得を任務とする球団にとっては想定外だったのだろう。

 ライターのルーク・ダフィー氏は、アウトサイドからリズムをつかめなかったことが、トレードを決定づける何よりの理由だったと考える。1試合平均13.2分の出場時間や、先発出場の機会がないことはそれを証明しており、1試合平均66.7パーセントのフリースロー成功率、オフェンシブ/ディフェンシブレーティングの低調さを見ると、その他のカテゴリーでも十分な多様性を表現できなかった。ベンチから目に見えるインパクトが残せなければ、今後も出番は減少する一方だったかもしれない。

グレイソン・アレンの存在

シューターとして活躍するグレイソン・アレン [写真]=Getty Images

 プレータイムという観点から見ると、チームメートであるアレンの好調ぶりも挙げられる。彼がこれほどまでに安定していなければ、渡邊にも先発のチャンスが巡ってきたかもしれないが、デューク大学出身のシューターはキャリアハイに匹敵するパフォーマンスを披露しており、チームにとって欠かせない得点源となっている。

 アレンは2月13日時点で3ポイント成功率49.0パーセントをマーク。約2本に1本の高確率でアウトサイドを沈める正確性は、言わずもがなリーグトップの成績で、2位のアーロン・ネスミス(インディアナ・ペイサーズ)を約3パーセントも引き離している。

 ダーティーなイメージこそ拭えないアレンだが、ハードなプレーの中で渡邊以上の存在感を示しているのは明らかだった。運動能力、スペーシングの技術はもちろんのこと、最近の試合ではシューターながら14アシストを記録。チームには安定感のあるベテランのエリック・ゴードンも在籍しており、渡邊が安定した役割を与えられるためには、非常に高い壁が立ちはだかっていたのだ。

■コーチングスタッフからの信頼

 ネッツを率いるジャック・ボーンヘッドコーチとの関係を振り返ると、渡邊はフランク・ヴォーゲルHCからゲーム面での信頼を得られなかった。それは、同じく苦しい状況にあったボル・ボルとの比較からもわかる。

 ボル・ボルは開幕からの20試合でわずか3試合の出場にとどまり、合計プレータイムはたったの6分40秒だった。しかし、30試合程度の消化を境に出場時間が急増。11日(現地時間10日)のゲームこそ8分43秒の出場だったものの、最近では15分以上のプレータイムを与えられる試合も少なくない。

 しかし、ロールプレーヤーの信頼については、渡邊に限った話ではない。サンズは今回のトレードで渡邊、ケイタ・ベイツ=ディアップ、チメジー・メトゥ、ジョーダン・グッドウィンというオフに獲得した4名を放出。チームパワーではカンファレンス首位でも全く不思議ではない球団だけに、ヴォーゲルHCがベンチプレーヤーを戦術に組み込めず、結果としてテコ入れを余儀なくされたのだった。

 渡邊としても、浮上のきっかけをつかめない状況での古巣復帰は、いいカンフル剤となるに違いない。再び18番をまとうことになった29歳は「絶対にやれる」と、主力が軒並み離脱中のグリズリーズで鼻息を荒くする。

文=Meiji

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