2023.11.06

神童と呼ばれた学生スター選手の転落劇…現在はチーム帯同や施設の出入り禁止

学生アスリート界屈指のスターだったマイキー・ウィリアムズ[写真]=Getty Images

 かつて“神童”と呼ばれ、高校世代のベストプレーヤーとして未来が期待されていたマイキー・ウィリアムズは、その栄華から一転、厳しい裁判に直面している。

 本稿執筆時から約1年前、ウィリアムズはPodcast番組『I am Athlete』で「25歳になるまでに、10億ドル(約1495億円)の価値がある人間になりたい」と、壮大な目標を語っていた。

 しかし、『Yahoo Sports』によると、メンフィス大学に進学したガードのキャリアは前途多難な状況にあるという。ウィリアムズは今年4月、サンディエゴの自宅に意図せぬ複数の訪問者が訪れると、住宅内で口論に発展。そして、自宅から追い出す際には拳銃で脅迫したとされ、彼らが立ち去る際には車に向かって発砲。ケガ人こそ出なかったものの、銃弾はトランクとリアウィンドウを直撃した。

 この事件により、ウィリアムズは銃器使用の傷害容疑で暴行6件、発砲1件、そして死亡または大きな身体的損傷をもたらすリスクのある脅迫2件の罪に問われており、9つの重罪には最大30年の実刑判決が下される可能性があるという。

 メンフィス大学の広報担当の説明では、ウィリアムズは現在、2023年12月14日の陪審員裁判に向けて地元カリフォルニアに滞在中で、大学の授業はオンラインで受講している模様。また、チームの名簿に名前の記載こそあるものの、施設への出入りや活動への帯同は禁止されていることが明らかになった。

 この一件を追いかけてきたロサンゼルスの刑事弁護士アラシュ・ハシェミは、裁判の証言や間接的な証拠が“非常に強力”と考えており、その信憑性はウィリアムズが刑期の大部分を全うする可能性があるほどのものだと述べている。

「有罪が証明されるまで司法上は無罪とされていますが、9つの罪状で起訴されれば、どのような状況でも苦しい戦いになるのは間違いありません。我々が知らない新しい証拠が出てこない限り、彼の弁護士には大変な仕事が待っているでしょう。いずれにせよ、彼にとって良い結果にはならないと思います」

 事件前、ウィリアムズはInstagramに約400万人、TikTokに200万人以上のフォロワーを抱え、プーマとも契約を結んでいた学生アスリート屈指のスーパースターだった。

 しかし、彼のキャリアはそれ以前から少しずつ崩れ始めていたのかもしれない。高校時代、彼の父親が立ち上げたバーティカル・アカデミーは、ホームジムを持たず、どのリーグにも校体育協会にも所属しない独自プログラムだった。試合数は年間40試合以上で、全米を飛び回りながら、モンベルデやオークヒルといった名門高校と対戦を積み重ねたが、『Yahoo Sports』は同チームが勝利よりもソーシャルメディアで脚光を浴びるハイライトを優先し、ウィリアムズ本人もディフェンスの努力を怠るなど、目に見えない競技上の問題が多数存在したと考えており、某NBAスカウトも「彼の成長に最善な道だったとは言えず、間違いなくモンベルデやIMGの方が良い選択だったでしょう」とコメントしている。

 また、バスケットボールや既述の刑事事件以外でも悪評はあった。ウィリアムズは、靴に装着してフィットネス活動を追跡するスポーツ関連のスマートデバイス「レースクリップス」とNIL契約を締結していた。しかし、担当者の説明によると、同社は最大20万ドル(約2990万円)を支払う約束だったが、ウィリアムズは撮影以外には非協力的で、やるべきSNS投稿はせず、デバイスも一度も着用しないなど、多くの契約違反が確認されていたという。

 もちろん、今回の容疑を受けて、プーマやレースクリップスとの契約は解消。言わずもがな、プレーヤーとして大学に復帰する目処も立っていない。

 高校生スターの転落劇。その原因は経済力か、知名度か。富と権力は正しく使えば人々や世間を豊かにするが、その裏では常に自己を蝕む危険性を兼ね備えているのかもしれない。

文=Meiji