2021.07.08
三井不動産がJBAのオフィシャルパートナーとして、2020年から応援をしている男子日本代表は1976年のモントリオール大会以来、実に45年ぶりにオリンピック出場を果たす。開催地枠でのエントリーだが、これを付与されることは決して容易ではなく、自国開催ながら出場できないという事態が起きる可能性も低くはなかった。
東京2020オリンピック開催が決まったのは2013年9月。しかし、その翌年に国際バスケットボール連盟(FIBA)から日本バスケットボール協会(JBA)に制裁が発動され、各年代を含む日本代表チームの国際大会への出場が停止されることになった。これに対してJBAは体制改革に着手。川淵三郎氏をJBA会長に招聘して問題点をクリアすることで、2015年にそれが解除され、日本は資格を取り戻すことになる。
改革の大きな部分として男子代表の強化が盛り込まれていた。川淵氏は東野智弥氏を強化の現場責任者に登用。東野氏はJBAの技術委員長に就任すると、アルゼンチン代表ヘッドコーチとして世界レベルの大会で実績を残していたフリオ・ラマス氏に白羽の矢を立て、新ヘッドコーチに迎え入れた。東京2020オリンピック出場に向けた強化は、ラマス新ヘッドコーチ(HC)が誕生した2017年7月から本格的にスタートしたと言えるだろう。
ラマスHCが最初に目標としたのは、2019年開催予定のFIBAワールドカップの出場権を勝ち取ることだった。しかし、男子日本代表は2006年に日本で開催されたFIBA世界選手権(現ワールドカップ)を最後に国際舞台にコマを進めたことがなく、予選を突破しての出場となると1996年のギリシャ大会までさかのぼらなければならない状況だった。
FIBAワールドカップ2019の予選はそれまでの1カ所に各国代表を集めて行う集中開催から、ホーム&アウェーの方式に変更となり、1年以上も各国を回って戦うスタイルに変更された。男子日本代表の初戦は2017年11月24日、駒沢体育館(東京都)にフィリピンを迎えて対戦。ホームのファンの後押しを受けて順調なスタートを切りたかったが、オフェンス面でのミスがたたり71−77で敗退。その後、アウェーでのオーストラリア戦、ホームでのチャイニーズ・タイペイ戦、アウェーでのフィリピン戦に敗れ、4連敗を喫してしまう。
崖っぷちに立たされたチームにとって救世主が表れたのが2018年の6月、それまで申請を行っていたニック・ファジーカスの帰化が認められ代表チームに加入は決まった。さらに当時ゴンザガ大学の主力と成長した八村塁も合流し、千葉ポートアリーナに詰めかけたファンの大声援を受け、世界的な強豪でもあるオーストラリアに79−78で初勝利を果たす。これで勢いに乗った男子日本代表は、チャイニーズ・タイペイにも勝利して二次予選進出にコマを進めることとなった。
二次予選ではメンフィス・グリズリーズと2ウェイ契約を結んでいた渡邊雄太が加わり、フルメンバーがそろった男子日本代表さらに勢いをつけてアジアの上位チームであるイランとカザフスタンに連勝。その後はBリーグ所属の国内組で勝ち星を重ね、4連敗から8連勝という快進撃で、遂にワールドカップの出場権を獲得したのだった。
さらに朗報が飛び込む。この結果を受けて、2019年3月30日、FIBAがオリンピックの開催国枠を与えることを発表したのだ。ラマスHCの招聘、NBAで活躍する若手選手の台頭、そして2016年にスタートしたBリーグにより国内の選手のレベルが向上したという相乗効果がオリンピック出場を促したとも言えるだろう。実に1976年のモントリオール大会以来44年ぶりとなるオリンピック出場が現実のものとなった。
2019年8月31日から9月15日の日程でFIBAワールドカップ2019が中国各地で開催された。日本は抽選の結果、アメリカ、チェコ、トルコが属するグループEに入り、上海で試合を行うこととなった。予選では大学生だった八村は日本人として史上初となるNBAドラフト1巡目でワシントン・ウィザーズに指名を受け、晴れてNBAプレーヤーとしてワールドカップに出場。そして八村よりも先にNBAのコートに立っていた渡邊とBリーグの精鋭10名が世界のトッププレーヤーが集い舞台に立ったのだ。日本からも多くのファンが現地に駆けつけ、日本戦は大いに盛り上がった。
しかし、そこに待ち受けていたのは世界の壁だった。日本のバスケットボールはスカウティングされ、対戦相手は徹底的に日本の弱点を突いてきた。それはNBA選手だけで構成されたアメリカ代表も例外ではない。それでなくても高さ、パワーの面で劣る日本は世界のバスケの洗礼を受けることとなった。
男子日本代表はグループステージ3試合に全敗、さらに17〜32位決定戦でも勝ち星を上げることができず5戦全敗で大会を終了。帰国の途に着くこととなる。
本来ならこの結果を受けて翌年に開催が決まっていた東京2020オリンピックの準備を速やかに始めなければいけなかった。しかし、周知の通り、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、代表チームは対外試合をすることはもちろん、合宿さえできない事態に至ってしまう。代表の強化は個々に委ねられ、それぞれ所属チームでその時を待つことになった。そして、東京2020オリンピックは開催が2021年に延期も決定した。
2020年2月24日以来の公式戦となったのが6月16日から始まったFIBAアジアカップ2021予選だ。同大会は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて延期が続いていたが、フィリピンでの集中開催を決定。日本は中国、チャイニーズ・タイペイと対戦することになった。今回のメンバーは国内組17名で構成され、東京2020オリンピックに登録するメンバーを決めるトライアウトの場にもなった。
結果は初戦の中国に57−66で敗退、第2戦のチャイニーズ・タイペイに98−61で勝利、第3戦の中国に61−98で敗退と、1勝2敗で大会を終了。ラマスHCはFIBAワールドカップで得難い経験を踏まえ、オフェンスとディフェンスでの改善を視野に入れたチーム作りを進めているが、その試金石となったことだろう。
男子日本代表は今後、沖縄アリーナで7月7日にハンガリー代表、9日にベルギー代表、11日にフィンランドと対戦する。サイデン化学アリーナ(さいたま市記念総合体育館)で16日(対戦国未定)、18日(フランス代表)に2試合行い、東京2020オリンピックを迎えることになる。
八村塁と渡邊雄太という2人のNBAプレーヤーとともに迎える初めてのオリンピックで、男子日本代表は予選ラウンドのグループCでスペイン、アルゼンチン、そして世界最終予選を勝ち上がったスロベニアと戦うことになっている。
7月26日に顔を合わせるスペインは、FIBAワールドカップ2019で2度目の優勝を果たした。リッキー・ルビオ(NBAミネソタ・ティンバーウルブズ)、マルク・ガソル(NBAロサンゼルス・レイカーズ)を軸にコンビネーションプレーをベースとしたチームバスケットボールが特徴だ。男子日本代表にとって、自らの力を計る絶好の機会となるだろう。
8月1日に対戦するアルゼンチンはラマスHCの母国でもある。アルゼンチンもチームバスケットボールを軸に試合を展開、司令塔のファクンド・カンパッソ(NBAデンバー・ナゲッツ)の変幻自在なパスワークも要注意だ。
ラマスJAPANの総決算とも言える東京2020オリンピック。世界の強豪との対戦を控えてはいるが、自国のコートでこれまで培ってきたバスケットボールを披露する絶好の舞台となる。男子日本代表の活躍に期待したい。
2021.07.08
2021.07.07
2021.07.07
2021.07.07
2021.07.06
2021.07.06