2024.04.17
2023-24シーズンのB1は10月5日、SAGAアリーナを舞台に佐賀バルーナーズと琉球ゴールデンキングスによる一戦で幕を開ける。昨シーズン王者はどのようなスタートを切るのか。開幕カード発表会見に登壇した牧隼利へインタビューを実施。新シーズンに向けての思いなどを語ってもらった。
インタビュー・文=酒井伸
――リーグ王者としてオフシーズンを迎えました。どのようにして過ごしていますか?
牧 シーズン終了後、ありがたいことに日本代表候補合宿へ参加したので、息をつく暇がなくて。今はようやくゆっくりできています。会う人たちみんなから「おめでとう」と祝ってもらえて、優勝したことを改めて実感しましたね。
――オフに入ってシーズンを振り返った時、何か新たな発見はありましたか?
牧 一昨シーズン(2021-22シーズン)にケガをしてしまい、7月に手術をしてから開幕を迎えました。今はバスケットのことより、自分の体のことを見直す時期になっています。
――体作りのために取り組んでいることを教えてください。
牧 ただ筋トレをするのも大事ですけど、それ以前に体の癖や動き、呼吸など、そういった部分にフォーカスしながら準備しています。チームのトレーナーさんはもちろん、個人的に信頼しているトレーナーさんと一緒に、オフシーズンならではのことに取り組んでいます。
――具体的には?
牧 呼吸でいえば、息が抜けやすいところ。抜けやすいと、シュートを打った時も抜けやすくなります。ディフェンスやドライブで相手と接触する時、力が伝わりきらないこともあるので、そこの癖は意識しています。人間は骨盤がズレてしまうと、腰を痛めたり、本来の力を発揮できなかったりすることがあるのを勉強しました。まずは体を整えた上で、トレーニングすることを大事にしています。また、僕は足首のケガが多いので、足首周りの強化などにも取り組んでいます。
――体作りについては筑波大学時代に学んだことですか?
牧 大学では学ばなかったですね。プロ選手になって、自分の理想像を追い求めたら、そういった部分を突き詰めていく必要があると感じました。今の時代はいろいろな情報もありますからね。
――「第19回アジア競技大会」に向けた日本代表候補合宿についても話を聞かせてください。
牧 いろいろな発見がありました。Bリーグではどうしても外国籍選手のところにアドバンテージがあって、そこがポイントの一つになっています。でも、代表では帰化選手が1人で、全員でいかに得点チャンスを作っていくのか。トム・ホーバスヘッドコーチは3ポイントを中心に、速い展開のバスケットを求めていますが、こういったバスケットもおもしろいと感じました。
――ホーバスHCのバスケットを実際にプレーした感想は?
牧 僕のようなタイプにとっては少し難しかったです。「これ」といった武器があるわけではないので、最初はアジャストするのに苦しみました。特に言われたのはシュートを打って、決める意識。合宿で一緒だった富永(啓生/ネブラスカ大学)選手のシュートは、練習で1本も落とさないほど高いレベルでした。彼のシュート力を目の当たりにして、ホーバスHCのバスケットでは改めてシュートが大事だと感じました。
――シュート以外の部分で何かアドバイスを受けましたか?
牧 得点ですね。シュートにつながる部分ですけど、自分はもっと得点を挙げていかないと、存在感を発揮できません。得点は自分自身の進化にもつながってくるキーポイントだと思います。チームの勝利が一番というのはもちろんですが、今シーズンは2ケタ得点にこだわっていきたいです。
――琉球はどこからでも得点を取れるのが強みでした。
牧 周りに意識が強まり、空いた僕が得点を取るパターンが多かったのかなと。そうではなく、僕がもっと怖い選手になっていかないと、チームとしての成長はないと思います。
――琉球はロスターに大きな変更がなく、新シーズンに挑みます。植松義也選手、ヴィック・ロー選手それぞれの印象を聞かせてください。
牧 植松選手は頑張り屋で、ハッスルできる選手。彼の身長(190センチ)は僕(188センチ)とそれほど変わりませんが、ゴール下でリバウンドに飛び込んでいくプレーはチームに勢いをもたらしてくれると思います。ロー選手は身長のわりに速さがあって、3ポイントを打てるなど、何でもできるイメージです。彼の加入でポジションレスのバスケットがより加速して、展開も速くなると思っています。2人と一緒にプレーできるのが本当に楽しみです。
――新シーズンの注目ポイントや注目選手は?
牧 チームバスケットを掲げているので、誰か1人というより、チーム全体に注目してほしいですね。昨シーズンはポジションレスがうまくいかなかった時、負けがかさんでしまったこともあったので、そういったことをなくしていくためにも自分たちのバスケットをもっと確立していきたいです。
――追われる立場としてシーズンを戦います。
牧 僕個人としては、追われる立場なんておこがましいことは言えなくて、優勝を昔の出来事に思えています。自分の思い出として胸にしまっておいて、リセットした状態でシーズンを迎えたいです。「昨シーズンに優勝したから」という気持ちはなくて、今シーズンもまたイチから、優勝をつかみ取るためにチームとして取り組んでいくことがカギになると思っています。
――オフシーズンの移籍市場で各チームが大きく動きました。注目の選手やチームは?
牧 サンロッカーズ渋谷は元アルバルク東京のルカ(パヴィチェヴィッチ)ヘッドコーチを招へいして、選手も大きく入れ替えました。シーズン序盤(第2節)に対戦するということでとても楽しみです。あとは宇都宮ブレックス。ギャビン(エドワーズ)選手と(ディージェイ)ニュービル選手が加わったことで、これまでの宇都宮とは違うチームになって、怖い存在になると思っています。
――牧選手自身は琉球在籍5シーズン目を迎えます。どのような選手になっていきたいですか?
牧 岸本(隆一)選手や田代(直希)選手、今村(佳太)選手が引っ張ってきたチームで、僕は引っ張られてきた立場でした。在籍5シーズン目、そして25歳という年齢も加味して、「自分が中心になってやっていくぞ」といった気持ちでいないと、選手としての成長はないと思います。今シーズンはチームを引っ張ることを意識したいです。
――連覇がかかるシーズンです。
牧 昨シーズンを思い返すと、シーズンをとおしてうまくいっていたわけではありません。優勝という目標に向かって、前進するだけではなく、1歩進んで2歩下がる時期もありました。ただ、そういった時、みんなが同じ方向を見て、目標にこだわっていけるのかが大事。優勝したからとか、昨シーズンはこうだったからという思いを捨てて、新たな自分たちを見せることが大事だと思っています。
――琉球のファンは自身にとってどのような存在ですか?
牧 チームとして掲げる“団結の力”を象徴する存在だと思います。10得点分くらい活躍していると感じるほど、チームに勢いをもたらしてくれる。とても頼りがいのあるファンだと思います。皆さんがいることで、僕たちはプレーできています。僕たちが恩返しできるのは、コート上で結果を出すこと。今シーズンも皆さんとともに戦っていきたいと思います。
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