2018.01.17

倉石平氏が中地区前半戦を振り返り、後半戦を展望「富山グラウジーズと新潟アルビレックスBBは面白い存在」

富山は宇都(左)、新潟はガードナー(右)が好パフォーマンスを維持できるか [写真]=B.LEAGUE
バスケットボールキングプロデューサー(事業責任者)

Bリーグ2017-18レギュラーシーズンは第15節までの28試合を消化し、残すところ32試合となった。前評判どおりの安定した戦いを見せるチームや、指揮官交代や外国籍選手獲得などで巻き返しを図るチームなど様々だ。そこで今回、元日本代表ヘッドコーチで、現在は早稲田大学スポーツ科学学術院教授を務める倉石平(くらいし・おさむ)氏に、B1中地区に所属する6チームの戦いぶりを評価してもらった。(12月9日取材)

インタビュー=村上成
写真=Bリーグ

――中地区の現状について聞かせてください。
倉石 中地区はシーホース三河の一強ですね。開幕を前にしっかり準備を進めてきました。ベテランをどう長生きさせるかも考えていて、攻守のバランスも非常にいいです。ただ、新しいプレーヤーがあまり出てこないのが気掛かりです。

――即戦力として西川(貴之)がレバンガ北海道から加入しています。
倉石 北海道で経験を積んでから三河へ移籍したので即戦力ですよね。ただ、チームはシーズンを戦いつつ将来的なことを考えると、若干の不安を抱えているのかもしれません。がんばらなきゃという思いはあるはずですけど、(桜木)ジェイアールがどこまでできるかですよね。

1試合平均6.4得点を記録している西川 [写真]=B.LEAGUE

――41歳ですからね。
倉石 彼がいつまでできるのか不安ですが、「動けなくなるまでやる」と言うと思います。ですが、ある程度厳しくなったら、チームをリニューアルしなければいけません。その代わりを外国籍選手、または日本人選手にするのかなどの課題はあると思います。

――絶対的な存在かつ、大ベテランということもあり、新たなチーム作りは難しいということでしょうか?
倉石 あとは全ポジションの選手層があまり厚くないんですよね。日本代表になるような選手はたくさんいますが、ベンチは若干不安ですね。比江島(慎)、金丸(晃輔)、(橋本)竜馬、彼らのうち誰か1人でも大ケガをしたら大変だと思います。

――三河以外は横一線のような状態です。
倉石 富山(グラウジーズ)と新潟(アルビレックスBB)は昨季に比べてかなりがんばっている印象です。両チームともダメなところを改善して、チームを浮上させようという努力が見えるので、特長がはっきりしています。新潟の場合はインサイドを起点に得点を取れていますよね。

――ダバンテ・ガードナーが活躍しています。
倉石 彼がインサイドで得点を奪えるといいですよね。また、富山はヘッドコーチが(ミオドラグ・ライコビッチに)代わったことで、外国籍選手たちの使い方が変わり、戦術に幅が出ていると思います。そして、宇都(直輝)が成長しているので、チームとして縦のラインがハッキリして楽になったのかなと。ほかのプレーもキャッチ&リリースで良くなり、大勝ちする試合もあります。富山と新潟はチームの色がハッキリしているので大丈夫でしょう。三遠(ネオフェニックス)は少し失敗したように見えます。

――昨季は安定した戦いができていたと思いますが?
倉石 今季は出だしで間違えたのかなと。外国籍選手を入れ替えたことにより、後半戦にかけて落ち着くと思います。

――主力の選手はあまり変わっていません。
倉石 もっと勝率が上がっていてもおかしくありません。8勝11敗ではなく、11勝8敗でもいいくらいのチームです。三遠は外国籍選手の選択ミスが大きいと思います。予想外なのは名古屋(ダイヤモンドドルフィンズ)かな。いい選手がそろっていますが、梶山信吾HCに代わったことでリニューアルされ、オフェンスとディフェンスにおける戦術も新しくなり、そのたびにもがいています。張本(天傑)にもっとプレータイムを与えてもいいと思いますが、オンザコート2の時はあまり出てきませんよね。オンザコート1の時は彼だけが伸び伸びプレーしているように見えますので、全員の力を集約させて戦えばいいのにと思います。

笹山をはじめとする若手の台頭が見られる名古屋[写真」=B.LEAGUE

――中東泰斗笹山貴哉など若いタレントはそろっていますが、チームのバランスが悪いんでしょうか?
倉石 接戦になっている時やここで1本ほしいという時に得点が取れない傾向があります。これが試合中に1回だけならいいですが、2回、3回と続けると点差が開いてしまいます。特に第9節の琉球(ゴールデンキングス)戦は大接戦に持ちこんで、一番重要な時間帯に張本を出していけると思ったら、そこから立て続けにミスを連発して。ポイントガードの笹山(貴哉)が入れ返して応戦していましたが、先手を取って試合を進めることができたと思います。

――HCの引き締めが大事ですか?
倉石 チームの特徴をどのように捉えているか、自分たちの強みは何なのかがハッキリ表現されていない印象です。自分たちの弱みが相手に引きだされて、そのまま歯止めが効かずに落ちこんでいくような。メンバーは悪くないのですが、もったいないと思います。

――横浜ビー・コルセアーズは苦戦が続いています。
倉石 外国籍選手(ジェイソン・ウォッシュバーン)がケガをして、新しい選手(ウィリアム・マクドナルド)に替えましたよね。(ハシーム)サビート(マンカ)はすごく特徴があっていい選手なので、彼をもっと活かしたら他のチームは対応できないと思います。でも、彼を使う時間が短いのは気になります。ボールを触る時間帯も少なく、得点をあまり取れていないですし。彼のブロックショットを活かすゾーンを採用していますが、それもなかなかうまくいっていないような印象です。(トーマス)ウィスマンがアドバイザーになったから少しは変わると思います。彼のカリスマ性がチームに良い効果を与えるはずです。

横浜はハシーム・サビート・マンカの高さを活かしたい[写真]=B.LEAGUE

――三河一強の中地区ではありますが、注目しているチームは?
倉石 富山、新潟の2チームが面白い存在になるんじゃないかなと思います。2チームとも雪がたくさん降る地域に拠点があり、ファンの皆さんはあまり外に出たくなくなるような。けど、寒い中でも応援に来てもらえるようなチームになれると思います。

■中地区(第15節終了時点勝敗/勝率/得点/失点/得失点差)
1位:シーホース三河(22勝6敗/0.786/2401/2203/198)
2位:三遠ネオフェニックス(13勝15敗/0.464/1987/2002/-15)
3位:富山グラウジーズ(13勝15敗/0.464/2186/2232/-46)
4位:名古屋ダイヤモンドドルフィンズ(11勝17敗/0.393/2266/2305/-39)
5位:新潟アルビレックスBB(10勝18敗/0.357/2286/2341/-55)
6位:横浜ビー・コルセアーズ(8勝20敗/0.286/1954/2144/-190

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