2019.03.26

「スポーツビジネスのトップランナーに聞く」 第6回:木村弘毅さん(株式会社ミクシィ) <前編>

バスケ情報専門サイト

2017年、Bリーグ(日本プロバスケットボールリーグ)「千葉ジェッツ」のスポンサードを皮切りに、2018年にはサッカー・Jリーグ「FC東京」、2019年にはプロ野球「東京ヤクルトスワローズ」と、近年スポーツ業界への投資を続けている株式会社ミクシィ。特に、ゲーム、スポーツ、アニメ、映画、リアルイベントなど、アドレナリン全開のバトルエンターテインメントを展開し、友だちや家族とワイワイ盛り上がれる場所を創出しているエンターテインメントブランド、「XFLAG」のロゴが今シーズンからFC東京の胸に掲出されている。「XFLAGって何なのだろう?」と疑問に思ったスポーツファンも多いのではないだろうか。

その株式会社ミクシィでスポーツ領域の担当役員を担っているのが代表取締役執行役員の木村弘毅氏。木村氏は、XFLAGはもとより、同社の看板タイトル「モンスターストライク(以下、モンスト)」の生みの親、成功の立役者として、IT業界にその名を馳せている。

スポーツ市場に多くのIT企業が参入している近年、今回そのキーマンである木村氏にスポーツのこれからの可能性について伺った。

インタビュー=サッカーキング編集部
カメラマン=兼子愼一郎


――まず木村さんの人となりについてお伺いできればと思います。どんな学生生活を送っていたのでしょうか?

木村 うーん、特に学校が大好き、みたいなタイプでもなかったと思いますし、どちらかと言うと、普通の学生でしたね。

――ゲームはお好きだったんですか?
木村 高校生の頃はむちゃくちゃやっていましたね。自分のことをスポーツゲーマーと定義していて、「ファイナルマッチテニス」、「フォーメーションサッカー」、「エキサイトステージ」、「ウイイレ」、「パワプロ」……その他にもレースゲームとか、とにかく友達と一緒にスポーツゲームばかりに熱中して盛り上がっていた思い出があります。

――そんな学生時代、どんな職業に就きたいと思っていたのでしょうか?

木村 学生の頃は、漠然とエンタメ業界に行きたいなと思っていました。ゲームにせよ、スポーツにせよ、自分の楽しさの根源を考えたときにはいつも「コミュニケーション」があったなと思ったからです。

――その頃からすでに「コミュニケーション」というキーワードがあったんですね。

木村 そうですね。ミクシィの前に勤めていた企業もコミュニケーションサービスをやっていた会社でした。「打倒mixi」ということでSNSを運営していたのですが、mixiがしっかりとモバイルをやってきて勝敗が色濃くついて…。その時に当時ミクシィの副社長だった原田明典さんに声を掛けて頂き、ミクシィに入社することになり、入社当初はSNSのサービスを担当していました。

――木村さんといえば、「モンスト」の生みの親として有名ですが、「モンスト」誕生の裏にはどんなストーリーがあったのでしょうか。

木村 必然性をもって生まれてきたのが「モンスト」だと思っています。私たちは今まで蓄積してきたノウハウがありますので、自分たちをコミュニケーションの専門家と自負している部分があり、なおかつ今は「フレミリー消費」というものを定義しています。「フレミリー」とは、フレンド(FRIEND)とファミリー(FAMILY)を掛け合わせた造語です。親しい家族や友人との消費活動について、私達はSNSの運営を通して身近に感じることが多く、また、プラットフォームの階層論みたいなものがあって、いままでのインターネットの歴史を見ると上の階層にどんどん主権者が移っていくという歴史があるなと考えていたんです。例えば、インターネットの登場以降、インターネットプロバイダがプラットフォームになって、ポータルサイトからいろいろなアプリが出てきて、その上に携帯キャリアというプラットフォームができてきて、その上にmixiとかgreeとかモバゲーとか、SNSのネットワークアプリが出てくるという階層概念です。その後、ソーシャルアプリケーションが多数出てきました。その歴史を見る中で、ソーシャルアプリケーションレイヤーで上場する企業が出てくるんじゃないかという議論がずっと社内であったんです。ネットワークアプリとしてmixiが影響力を失っていくなかで、我々がソーシャルアプリケーションレイヤーで成功するモデルというのを社内で語り続けていました。

――その背景の中で、「モンスト」が生まれたんですね。

木村 「フレミリー」や「コミュニケーション」がキーワードの中で、「モンスト」も親しい友人

や家族間でプレイされるような形で設計をしていきました。そんな中でキーポイントだったのがmixiのapi(※)を使わずに、その時に実際の家族や友人とつながっているネットワークを使おうということでLINEのapiを利用したことです。mixiのapiを使わなくてもLINEのapiで大丈夫という仮説の下、進めてきましたので、当たると思って立てた仮説がハマった時は嬉しかったですね(笑)。

※api:アプリケーションプログラミングインターフェースの略。昨今のwebサービスではapiにより機能連携を行う

――素晴らしいですね。「モンスト」のブレイク後、2018年に木村さんは代表取締役に就任。新たな領域としてスポーツビジネスをご担当することになりました。スポーツにどんな可能性を感じているのでしょうか。

木村 先ほどから申し上げている「フレミリー市場」という観点でスポーツに可能性を感じています。我々の行っているゲーム、アニメ、イベントなどのエンターテインメント領域で、ある一定の成果を挙げている中で、近しくフレミリー市場が盛り上がる場をいろいろリサーチし、その一つにスポーツ市場がありました。スポーツマーケットが近しい家族や友人と観戦して消費するということで、「フレミリー」に近いんじゃないかという仮説から始まっていますね。

――一貫して「コミュニケーション」がありますね。

木村 例えば、アメリカのスタジアム周辺は、至るところにBarがあり、コミュニケーションの場として確立しています。日本のスタジアム周辺と単純比較をしたときに、日本にはもっとフレミリーの要素が入れられる余地がまだまだあるなと感じました。日本は家族や友人たちとの憩いの場、交流の場としてまだ設計しきれておらず、今あるものにそういった要素を入れて良い変化をもたらすというのが僕らの戦略です。たとえば恋人とのデートや家族の行楽地として選んでもらえるような場にするとか。「テーマパークもいいけど、味の素スタジアムに行ってみよう」と選択してもらえるような場所に再設計していきたいなと。そうすることで、チームにとっては新規顧客の獲得にもなりますし、スポーツシーンというものがもっとコミュニケーションの場となりえると思っています。

木村 弘毅(株式会社ミクシィ 代表取締役社長執行役員

電気設備会社、携帯コンテンツ会社等を経て、2008年株式会社ミクシィに入社。ゲーム事業部にて「サンシャイン牧場」など多くのコミュニケーションゲームの運用コンサルティングを担当。その後モンスターストライクプロジェクトを立ち上げる。 2014年11月、当社執行役員就任。2015年6月、当社取締役就任。 2018年4月、当社執行役員スポーツ領域担当就任。(現任) 2018年6月、当社代表取締役就任。(現任)

申し込みはこちらから

千葉ジェッツの関連記事