2020.03.17
2019-20シーズンの開幕戦、サンロッカーズ渋谷と千葉ジェッツの一戦が10月5日、青山学院記念館で開催。この日を待ちわびた4132名のファン・ブースターが駆け付けた。
「40分間、相手がすごくタフでチームとして戦う姿勢を持っていました。今日はそれに尽きると思います」
千葉の大野篤史ヘッドコーチが試合後の記者会見で開口一番に発した言葉がすべてだったと言えるゲームだった。前半からSR渋谷は今シーズンから取り入れたオールコートのプレッシャーディフェンスを相手に仕掛け続けた。前半は一進一退の攻防を繰り広げて3点ビハインドで折り返すと、後半入って徐々に点差を広げていく。第4クォーター残り3分には最大17点差を付けて大きなリードを広げる。終盤に千葉の猛攻を受けるも逃げ切って、最終スコア88-80でホームでの開幕戦で快勝した。
勝利を収めた渋谷はゲームの終わり方という部分に少し問題はあったにしろ、点差以上の素晴らしいゲームを行ったと言っていいだろう。千葉の富樫勇樹を筆頭にボールを運ぶ役目のポイントガードに対して常に前からプレッシャーをかけ続け、相手の強みである早い展開のバスケを封じた。加えて昨シーズン見られた終盤での失速で逆転されてしまうこともなく、今後のシーズンに大いに期待を寄せられる素晴らしいゲーム内容だった。
「開幕戦で千葉さんに勝ったことはクラブにとっても非常に大きかったと思います。準備してきたディフェンスを選手たちが40分間やり続けてくれました、これが大きかったです。今シーズンの自分たちの強みはディフェンスのインテンシティと断言できます。常にフルコートでボールプレッシャーを掛け続けること、オフシーズンはそればかりを練習していました」と試合後の会見でゲームを振り返った伊佐勉HC。
オフシーズンから準備してきた成果が出た開幕戦、特に印象に残ったのがレバンガ北海道から移籍してきた関野剛平とスペイン代表としてワールドカップ予選にも出場したセバスチャン・サイズの2人だ。
富樫をはじめとする相手ポイントガード陣に対して常にハードに前からプレッシャーを掛け続けてストレスを与え、明らかに千葉のオフェンスリズムを狂わせた関野。「それをしてもらうために北海道から呼びました。今日はいい仕事をしてくれましたし、これからもどんどんポイントガードに対してディフェンスさせていきます。彼は笑いながらディフェンスしている感じで、見ていると少し気持ち悪いですけど(笑)。これからもっといいディフェンダーになると思いますし、どんどん伸びますよ」と伊佐HCは彼を高く評価した。
それに対して関野は「(笑いは)意識しているわけではなくて、自然と出ますね」と答えた後、「相手に付いていくだけで精一杯でまだまだですね。もっと練習が必要かなと思います。それでも相手のファストブレイクを消すことがこのゲームの目標だったので、それはできたので良かったですね」とHCから評価されたディフェンスに関して自己評価を下した。
大好きな故郷の北海道を離れ、新天地での新たな活躍を見せた彼は「このチームは自分のプレースタイルに合っているし、チーム全体で助け合うスタイルで非常にやりやすいです。個人的にはディフェンスで相手に嫌がられる印象を与えられる選手になるのが今シーズンの目標です」と強い想いで今シーズンを戦っていく。
関野が語った「助け合う」という部分において攻防両面で大きな役割を果たしたのがサイズである。20得点、7オフェンスリバウンドを含む16リバウンド、4ブロックのスタッツに加えて、ディフェンスでは積極的にダブルチームを仕掛けていくなどチームを助ける動きを常に見せつけて勝利に大きく貢献した。
伊佐HCに「1人で3人くらい守れる能力がありますので、とても素晴らしいと思います」と言わしめたのがサイズ。試合後のメディア対応でゲームを振り返って、「チーム全体としてしっかりと準備をして来た結果だと思いますし、シーズン開幕戦を勝利できたのは非常にチームにとっていいことです。ウイングスパンが228センチあるのでブロックショットやリバウンドにつながっていますし、今までの経験で攻守両面での細かい動きを叩き込まれてきたのもあり、チームを助けるような献身的な動きが自然と出たのかなと感じています」とコメントを残した。
キャリアでの新しいチャレンジを求めて日本にやってきたサイズ。とんこつラーメンが好きで箸も使いこなし、さらには少しずつ数字や時間は日本語で話せるなど、公私ともに日本にアジャストしている。今シーズン注目の選手であることは間違いない。
他の選手たちもこの開幕戦勝利に手応えを感じ、シーズンを戦っていく。今シーズン、チームのキャプテンとなったベンドラメ礼生は「この勝利はチームの自信になるし、今後に向けて強豪と戦った時に今日の経験を活かせると思います。我慢できた、そして突き放すところで突き放せたのは昨シーズンより成長できた部分で新しいサンロッカーズを見せられました。まだ反省点はありますが、経験を積めばより良くなるし、いいチームになると感じています」と話した。
そして、古巣との開幕戦となった石井講祐は「(古巣との対戦に関しては)仲間が敵になるのはどうなるかなと感じながらも、結構楽しみでした。前日は普通に寝られましたね。今日は40分間、ディフェンスとリバウンドでタフにプレーできたのがすべてです。この開幕戦で勝利をしたというのが大きいですし、これからシーズンを戦う上でこの経験が大事になってくると思います。今日の内容をコンスタントに表現できるように日々の練習からしっかり取り組んでいきたいです」と口にした。
新たなスタイルで過去の悔しいシーズンを払拭しようとしているSR渋谷。この開幕戦での大きな経験を活かしながら、どんな状況になっても信念を持って継続させることが明るいシーズンを過ごすためのキーになるであろう。シーズンはまだスタートしたばかりだ。
文・取材=鳴神富一
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