2019.11.13

セバスチャン・サイズの挑戦…再び母国スペイン代表のユニフォームを着るために

今季はここまで“平均ダブルダブル”の活躍をみせるサイズ[写真]=鳴神富一
1981年、北海道生まれ。「BOOST the GAME」というWEBメディアを運営しながら、スポーツジャーナリストとしてBリーグを中心に各メディアに執筆や解説を行いながら活動中。「日本のバスケの声をリアルに伝える」がモットー。

世界での学びを日本で活かすサイズ

 次世代のスペイン代表を担う存在がBリーグの舞台で輝いている。

「FIBAバスケットボールワールドカップ2019」には選出されなかったが、大会前のヨーロッパ予選では全12試合にスタメン出場して本戦出場に貢献した実績を持つプレーヤー、それがサンロッカーズ渋谷に所属するセバスチャン・サイズだ。25歳と伸び盛りのインサイドプレーヤーでミシシッピ大学卒業後はNBAに次ぐ世界屈指のリーグでもあるスペイン1部リーグでのプレー経験を持つ。元NBAプレーヤーである昨シーズンまでSR渋谷の大黒柱であったロバート・サクレがオフシーズンの契約合意後に引退表明し、その後オファーを受けてチームの緊急的な事態を聞き、受け入れ、「キャリアでの新しいチャレンジをしたかった」という思いで日本にやってきた。

 11月10日にホームの青山学院記念館に新潟アルビレックスBBを迎えた試合では、立ちあがりの悪さでビハインドを背負ったが最後の最後に追いつき、延長戦に突入。最後は相手のインサイドを突く攻撃に力尽きてしまったものの、サイズはこの日も鋭いドライブやポストアップから素晴らしいクイックネスで相手をゴール下で交わすなど20得点10リバウンド。“ダブルダブル”の成績を残してチームに貢献したのである。さらに彼の活躍もあってSR渋谷は昨シーズンと見違えるような序盤戦を過ごしている。開幕から5分の1を消化して9勝3敗と好調をキープしている。昨シーズンの同試合での通算成績が2勝10敗、ファン・ブースターは非常に気分のいい時間を過ごしているのではないだろうか。

今季開幕からチームをけん引するサイズ[写真]=鳴神富一

 その好調なチームの中でサイズ自身は12試合のうち7試合に出場しており、平均20.3得点12.6リバウンド2.3ブロックという素晴らしい数字を残している。まさしく攻守のチームの要と言っていいだろう。開幕戦でチームを率いる伊佐勉ヘッドコーチは彼のことを「1人で3人分くらいディフェンスができる能力がある」と褒め称えていたが、オフェンスでも期待感を持ちながら良い評価を与えている。

「セバスチャンのあのクイックネスに関して、ディフェンスはもちろんオフェンスでもテンポを上げられるという点ではアップテンポなバスケを展開していく上で非常に良いものをもたらしてくれています。外のシュートも毎日練習していますし、まだまだ伸びます。でも、荒削りな部分もあります。その部分に関しては毎日アシスタントコーチ陣と一緒に個人練習しているので、1カ月、2カ月と時間が経つにつれて変わってくるんじゃないかなと感じています」

 荒削りではあるが、日々成長を遂げているサイズ。加えてプレー面だけではなく、チームのリーダーとしての自覚をコート上でのコミュニケーションという形で表現し、積極的にチームメートに話しかけ、そしてハドルの際には自ら言葉を発する場面が多く見られた。その点に関して、伊佐HCは「慣れ」という言葉を使ってコメントを続けた。

「もともと人として尊敬できる選手です。その中で日本に慣れてきたというのは大きいかなと感じていて、日本語も少しずつ覚えてきていますね。さらにはチームメートにも慣れてきたのも大きいかなと感じています。自分のパフォーマンスをコートで示せているのも自信につながっている状況です。ベンチでも試合に出ていない時でも練習前後でも良いコミュニケーションを取ってくれています」

チームの新戦力は指揮官からの評価も高い[写真]=鳴神富一

 指揮官が発した言葉をそのままサイズにぶつけると、「今、ここでは日本語で話すのは恥ずかしいから言えないけど……」と笑顔を見せた。そして、リーダーとしての自覚を本人自身も感じながら日々を過ごしている様子だ。

「そういう部分は非常に意識してやっていますし、自分がこのチームに居る理由はそういう部分にあると感じています。そうやって自分がチームのリーダー的な存在になれる事でチームが1つになるように意識しています。言葉を覚えることによって、もっとチームメートと円滑にコミュニケーションが取れると思っているので、そこはがんばって習得しようと努力しています」

 素晴らしい活躍をコート上で見せてチームの勝利に貢献し、好調なシーズン序盤戦を過ごしているが、サイズ自身は全く奢ることなく「すべてが課題だね」と言葉を残す。

「主にシューティングやボールハンドリングのスキルなど課題はあります。自分が見てきた偉大な選手というのは、常に何かを改善していかなくてはいけないという気持ちを持って日々生活しているので、すべてにおいて改善しないといけないと考えています」

 彼は世界トップクラスの環境で様々なことを学び、ここ日本でその経験を活かして素晴らしい活躍を見せながらも、今までと同じように日々精進している。サンロッカーズ渋谷というチームを高みへ押しあげると同時に、スペイン代表でのユニフォームを再び着て、来年行われる東京オリンピックの舞台に上がるために——。

 彼の夢は、この日本の地でまだまだ続く。

周囲の期待に応えるため、練習にも勤しむサイズ[写真]=鳴神富一

写真・文=鳴神富一

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