2020.03.09
「B.LEAGUE ALL-STAR GAME 2020 IN HOKKAIDO」が1月18日、レバンガ北海道のホームアリーナである北海きたえーるにて5073名の大観衆を集めた中で開催された。
北の大いなる大地「北海道」で行われた今回、テーマは「日本バスケ界レジェンドのラストダンス」であったことは間違いない。今シーズン限りで現役を引退する、レバンガ北海道の折茂武彦。人生のすべてを賭けて北海道という地に身を捧げてきた侍が、Bリーグがスタートとして初出場、かつキャリアとしてラストとなるオールスターゲームを迎えたのだ。
「ファン投票で選ばれなければ出場しません」と断言していた折茂は最終的に58,932票を獲得し、B.BLACK PG/SG枠の第1位で選出され、慣れ親しんだホームアリーナでオールスターゲームの当日を迎えた。3ポイントコンテストでは5番目に出場して暫定1位となる13ポイントを獲得したが、ラストに登場した前回王者の金丸晃輔に逆転されて優勝を逃す。それでもこの日一番の大歓声の中で花道を進み、コートに足を踏み入れたオールスターゲームでは、17分43秒の出場で真骨頂の3ポイントシュート2本を含む14得点2リバウンド3アシストを記録。SNS投票で79%の投票率を獲得して、見事にMVPを受賞した。ゲームのファーストポイントも折茂、ラストシュートも折茂。さらにはB.BLACKのチームメートが折茂をオフェンスのファーストオプションに考え、「折茂さんのために」というプレーが随所に見られた。折茂は、MVP受賞で獲得した賞金は公約通り、試合後に選手たちと食事をしてすべて使い切ると断言した。
試合後にメディアの前に現れた彼は、感謝と自身の複雑な気持ちをストレートに語ってくれた。
「MVPを獲らないといけないプレッシャーはありました。ファン投票1位で出場できたのも、MVPを受賞できたのも応援してくれるファン・ブースターのお陰でしかなく、最後にいい花道を作っていただいて感謝しかないです。入場の時の大声援はうれしくて、その声援にしっかり応えようと思いました。自分は北海道に13年いますけど、これ以上の喜びはありません。シーズンはまだ残っていますけど、気持ちは寂しさとうれしさの半々で複雑ですね。『こういう感覚を味わうのはもうないのかな』とか『もうオールスターゲームには出場することは無いんだな』とか…。来シーズン、コートの外からバスケットボールを観る人間になるので、その時に何かを感じるのかな」
オールスターゲームのラストに叫んだ「北海道、ありがとう」という言葉。事前に考えていたわけでなく、自然と出てきた言葉だったと折茂は続ける。
「北海道に来て、ずっとたくさんの方に支えてもらって、応援してもらって、何か恩返しがしたいと思っていました。これまで精一杯やってきたつもりですが、何かを残せたのか…。北海道に対しては感謝しかないですし、この先もずっとそういう風に思いますね。自分はもう49歳ですよ、あれだけの声援を頂けるのは本当に感謝しかないです」
そして、今回はもう一つドラマがあった。2007年から折茂とともに北海道の地に人生を捧げている、チームメートの桜井良太とのオールスターゲームでの共演。率直にうれしさを言葉にしたのであった。
「しっくりくるなと。まったく違和感はありませんでした。彼はいつもそばに居てくれて、僕のことをなんだかんだ言いますけど(笑)。お互いにしっかりと尊敬しあっているし、僕にとって彼が大きな存在であることは間違いないので。2人そろってオールスターで同じコートに立てたのは本当にうれしかったですね」
加えて「一緒にコート立ったのは10年ぶり以上じゃないか」と本人が語った、竹内公輔(宇都宮ブレックス)と竹内譲次(アルバルク東京)との夢の共演に関しても、感慨深い様子を見せながら言葉を残す。
「もう本当に2人が学生の時から日本代表で一緒に戦ってきて、その時の印象が非常に強いんですけど、今日は2人とももう大人だなと感じました。また共演できて本当に感無量というか、こういうのが神様からの巡り合わせなんだなと思いましたね」
最後には胴上げもされて、複雑な気持ちになった折茂。「あの感覚は、ちょっと何なのでしょうね。間違いなく胴上げされるのは優勝の時か、引退の時なので…。うれしい気持ちはありますけど、『あれっ?』という複雑な感覚になりました」
夢の祭典が終わり、悲願のチャンピオンシップ出場に向けた勝負の後半戦が待っている。北海道は、シーズン序盤こそ好調であったが、前半戦を終えた段階では苦しい状況。強豪ひしめく東地区の中で反撃の狼煙をあげていかなくてはならない。
再びレバンガ北海道のユニフォームを纏い、まだまだ続く、折茂武彦のラストダンス。一日でも長く彼のユニフォーム姿を見たいと思っているのは北海道民だけではなく、すべてのバスケファミリーも一緒だろう。日本バスケ界のレジェンドがレバンガ北海道を、チャンピオンシップという夢の舞台へと導くはずだ。
文=鳴神富一
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