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和歌山にて開催された「第35回近畿高等学校バスケットボール新人大会」(2月15、16日)。男子は東山高校(京都府)の2大会ぶりの優勝で終えた。
「新人戦を迎えるにあたり、薮元太郎(2年)、新井伸之助(1年)、鈴木勇功(1年)らに経験を積ませたいという思いがあったので、佐藤凪(2年)と中村颯斗(1年)をワンガードにして臨みました」(大澤徹也コーチ)
その言葉どおり、東山は、初日は中村がスターターで佐藤を控えのガードとして起用。翌日の準決勝と決勝では佐藤、中村ともにスターターで佐藤がポイントガードを務めたが、「まだまだチグハグしてしまう部分はありましたが、非常に伸びしろがあるというか、こういったこともできるなという材料が集まった大会でした。経験値がなくて慌てたり、ターンノーバーが起きたりもしましたが、チームとしてはいい経験ができましたし、フォワード陣の伸びを夏までに取り組んでいければと思います」と、大澤コーチは大会を振り返った。
新チームがスタートし、東山の選手起用も試行錯誤を続けている [写真]=田島早苗
瀬川琉久(3年/千葉ジェッツ特別指定選手)を擁し、昨年のインターハイで初優勝を飾った東山は、そのときのスターターである佐藤、中村、カンダ マビカ サロモン(2年)らが残る。そこに今年は身体能力の高さを見せる薮やアウトサイドシュートが特長の新井、オールラウンドな働きを見せる鈴木らフォワード陣がからむ。それだけに新戦力たちの成長はチームの躍進のカギを握っていると言えるだろう。
一方で、これまでと変わらずチームの中心を担うのが佐藤だ。昨年まではシューティングガードとしての動きが多かったが、新チームでは正ポイントガードとしてチームのオフェンスを司っている。球離れがよく、素早くボールを前線へと送るなどアップテンポなオフェンスを演出しており、攻撃力が持ち味の東山の扇の要とも言える存在だ。
「昨日(1、2回戦)は自分がベンチスタートだったり、今日(準決勝、決勝は)はスタートをさせてもらったりと、いろいろなことを試しながらやりましたが、いいところも悪いところも見つかった、すごくいい経験になった大会だったと思います」と、語った佐藤。加えて「今年のチームはサイズが大きく、走れる選手がいることが特長なので、それを生かすことを一番に考えています。昨年はなかなかペースが上がらずに得点が伸びない試合も多かったのですが、東山は“オフェンスのチーム”にならなくてはいけないと思うので、原点に戻って、100点取られても101点取り返すスタイルにしていきたいとポイントガードとしては考えています」と、新たな思いも語った。
また、新たに主軸を担う薮、新井らに関しては、「高いポテンシャルを持っている選手たちなので僕も期待していますし、彼らにストレスなくやらせてあげるのがポイントガードの仕事。自分の得点も必要ですが、自分がやるところと周りにやらせるところ。周りがやるときはストレスなく自由にやらせてあげることは、これからもっとできると思っています」という。
司令塔として高いパスセンスやゲームメークを見せた佐藤だが、その分、昨年までとは異なり自身のシュートの打数は減る。1年生からこれまで得点力の高さも見せてきた佐藤は、自身の得点とパスとのバランスについて、「正直ちょっと悩んでるところもあって、自分が点を取らなければいけないところで取れなかったり、逆に自分ではいいパスを出せていたけれどシュート入らなかったりと、チームの流れが作れなかったというのが準決勝、決勝のゲームでした。自分でやるところと生かすところのバランスはまだうまくできていないので、これからだと思います」と、口にした。
対して大澤コーチは「全体にやらせつつ締めるところでは凪が締めるというゲームコントロールを頑張ってほしいと思っています。点数を取ることはできるし、シュートを打つこともできる選手なので、コントロールの面でチームのストロングポイントをどう生かしていくか。それは私が言うだけではなく、凪自身もうまく“指揮者”として導いてくれればと思っています」と、言う。さらに「僕の思いとしては真のポイントガードですよね。どちらかというとシューティングガードっぽいところを見せてきたけれど、今年は絶対的なポイントガードになるというところで彼のコントロールの面にこだわっています。駆け引きもうまい選手でピックの使い方も一人抜けているので、彼がそれをやり遂げたときには誰にも止められない存在になるのではないかと思います」と、期待を込めた。
新チームにおいてキャプテンも務める佐藤は、「昨年は2人のキャプテンで今年は自分一人なので難しいところもありますが、僕が先頭を切って引っ張っていかなければいけないという自覚は昨年のウインターカップで負けてから強く持ってるので、気持ちを出して、周りを巻き込んでいけるような、そういうキャプテンになっていきたいです」と、意気込む。
佐藤は背番号「5」を引き継ぎ、キャプテンを務める [写真]=田島早苗
さらには、かつて瀬川が高校3年間付けていた背番号を付け、「正直めちゃくちゃ重いですけど、琉久さんのことをとてもリスペクトしてますし、あこがれの存在なので、あの背中を追いかけて、いつか越えられるようにという思いでやっています。琉久さんのすごさは2年間一緒にやらせてもらって感じたので、そこから一つでも多く学び、一歩でも近づけるように日々頑張っていきたいです」と、声を弾ませた。
「瀬川は絶対的な存在がありましたが、それと同じことを凪にさせるというわけではなく、今度は凪の良さをもっと出していきたい」という指揮官の考えとともに、新リーダーとなった佐藤は、ゲームを支配する『コンダクター(指揮者)』になるため、これからも日々研鑽を磨いていく。
文・写真=田島早苗