日本経済大が快進撃で初のインカレ3位…試練乗り越えた立役者、ラストイヤーに結実

強豪を次々と破り、初のインカレ3位

　九州地区2位で「第77回全日本大学バスケットボール選手権大会」に出場した日本経済大学は、創部初のインカレ3位入賞を果たした。

「昨日の試合で負けて日本一という目標はなくなってしまいましたけど、メダルを取ろうという話をしました。みんなが気持ちを折らずに頑張ってくれて、本当に3位になれてよかったです」

　3位決定戦に勝利したあと、今泉太陽（4年）は胸をなでおろした。

ゲームキャプテンとしてチームを率いた今泉［写真］＝小沼克年

　今大会の日本経済大は決勝トーナメントで関東1部の中央大学、明治大学を破り、準々決勝では関西1位の天理大学を退け初の4強入り。準決勝では早稲田大学に83－92で屈した。

　しかし最終戦では、東海大学相手に21－9の好スタートを切り、その後も強度の高い守備とどこからでも得点できる強みを発揮。終始リードを奪う試合内容で8点差の勝利を収めた。

「あの時は『ブロックにいってやろう』って感じで跳んだんですけど、それ以上に十返くんのジャンプ力がすごくて……。あんなポスタライズは人生で初めてやられたので、もう笑っちゃいました（笑）」

　第2クォーターには十返翔里（1年）にポスタライズダンクをお見舞いされ、今泉は思わず吹き出した。

　だが、攻撃の中心としてドライブからの得点、アシスト、さらには外角からもスコアを重ねた。リバウンドでも奮闘し、終わってみれば両チーム最多の21得点13リバウンド5アシスト。大会を通しても背中で引っ張るゲームキャプテンの役目を全うした。

2度の大ケガを乗り越え、快進撃の立役者に

インカレでは平均14.3得点をマーク［写真］＝小沼克年

「生まれは神奈川、育ちは沖縄」という今泉は、沖縄市立コザ中学校から福岡第一高校と、名門校を渡り歩いてきた。

　しかし、福岡第一では「ほぼBチーム」。1年生から2年生に進級するタイミングで前十字靭帯断裂の大ケガを負い、約1年間はプレーできなかった。

　3年生になっても自分をアピールすることができず、「技術もそうですけど、人間的な部分で未熟でした。最初はAチームでしたけど6月あたりからはずっとBチームで、そのまま高校バスケが終わってしまったという感じでしたね」と振り返る。

　無論、3年間を無駄にしたわけではない。リバウンドからのボールプッシュ、鋭いドライブからの得点とアシスト、そしてハードな守備。今泉がインカレでも見せた持ち味は、福岡第一で身に染み込ませてきたものだ。

　大学4年間も決して順風満帆ではなかった。1年次から主力の座をつかむと、翌年はインカレでも先発ガードとして4試合を戦い抜いた。けれど、またもや進級前の時期に前十字靭帯を断裂した。

「また切った時は本当に落ち込みましたけど、自分からバスケを取ったら何をすればいいのかわからなかったので、そこはもう、めげずにリハビリを頑張るしかないと思いました」

　片桐章光コーチによれば、今年の3月に手術をする選択肢もあったという。だが、今泉は大学バスケをコートで終えることを選んだ。

快進撃を見せた日本経済大学［写真］＝小沼克年

　今年の日本経済大は、1、2年生のみが出場する「第3回全日本大学バスケットボール新人戦」で初優勝。この大会で最優秀選手賞に選ばれた児玉ジュニア（三遠ネオフェニックス）は、2年生ながらBリーグへの扉を切り開いた。そして、インカレでもチームの歴史を塗り替え、背番号8は優秀選手賞に選出された。

「本当に全部タフなゲームでしたけど、試合に出ていないメンバー、応援に来てくれたメンバー、スタッフ全員の力があってここまで来ることができました」

　年明けには、九州代表として「第101回天皇杯全日本バスケットボール選手権大会ファイナルラウンド」に出場する。初戦の相手はB2の横浜エクセレンス。4年生は出場しない見込みだが、今泉は充足感をにじませながらこう話した。

「出ない予定ですけど、アキさん（片桐HC）が『天皇杯もあるぞ！』と言っていました（笑）。自分たちが出ても出なくても、今回のインカレでのバスケがプロ相手にどこまで通用するか楽しみです」

　日本経済大の快進撃は、まだまだ続きそうだ。

文・写真＝小沼克年