2021.11.24

チームは10連勝!でも、それだけではない。越谷アルファーズに注目すべき理由

コート内外の活動が好循環を生み出し、越谷アルファーズは“愛されるチーム”へと変貌を遂げつつある[写真]=兼子愼一郎
バスケットボールキングプロデューサー(事業責任者)

 B2越谷アルファーズの躍進が止まらない。新シーズンの船出こそ開幕3連敗とつまずいたものの、ホーム開幕節となった第3節で香川ファイブアローズを連破すると、11月14日のアースフレンズ東京Z戦まで怒涛の10連勝。11月20日アウェーの山形ワイヴァンズ戦に敗れ連勝記録こそ途切れたものの、昨シーズンB2の3位につけた実力が、決してフロックではないことを証明してみせた。

 長谷川智也畠山俊樹アイザック・バッツクレイグ・ブラッキンズなどB1でも実績十分の選手に加えて、今シーズンからは“勝利の味を知る男” 桜木ジェイアールスーパーバイジングコーチ(SVC)が就任。桜木SVCはNBAドラフト2巡目でバンクーバー・グリズリーズ(現メンフィス・グリズリーズ)の指名を受けて同チームでプレー。アイシン精機(現シーホース三河)で19シーズンにわたってプレーし、その間には数々の優勝を経験。青野和人ジェネラルマネージャーが「勝利の哲学を浸透させる存在」として桜木SVCを招聘した狙いのとおり、本物の勝てるチームへの成長を感じさせる。

今シーズンの躍進を支える強さと速さの2プラトン構成

畠山は「一緒にプレーしていて楽しい」とチームメートとの関係性の良さを語る[写真]=B.LEAGUE


 B1を知る長谷川、畠山らのベテラン、高さと強さを備える外国籍選手の安定に加えて、現役時代からバスケットボールIQの高さには定評のある桜木SVCのリーダーシップが融合。勝利という結果を積み重ねることで、もともとフレンドリーなチームの雰囲気も、一層明るいものになり、チームケミストリーは日に日に高まりを見せている。

 昨シーズンから越谷でプレーする畠山は「いろいろなところでプレーしてきましたけど、アルファーズは特別に選手の仲が良いですし、本当に明るいですよ」と語る。「もちろん、仲が良すぎることのデメリットもあるのかもしれませんが、今は本当に良い雰囲気ですし、一緒にプレーしていて楽しいですね」と笑顔を見せた。

 青野GMは「桜木SVCを招へいできたことは本当に大きなことで、彼の影響力は絶大なものがあります」と改めてその効果を強調すると、続けて「桜木SVCの指導に加え、チーム作りの観点ではバッツ、ブラッキンズのインサイドを起点とした高くて強いチームと、ソウ・シェリフや落合知也など大きくても走れる、速さを武器としたチームの2プラトンが今年のアルファーズの魅力です」と語り、「GMの私が言うのもなんですが、紅白戦はどちらが勝つか分からないですし、見るのが本当に面白いんですよね」と選手層の厚さとチーム構成の妙に自信をのぞかせる。

圧倒的な“強さ”で越谷のゴール下に君臨するバッツ[写真]=B.LEAGUE

 群雄割拠のB2だが、最後までこの勢いを持続できるのか、越谷の今シーズンの挑戦、青野GMのチーム作り、桜木SVCのコーチングに注目したい。

強いだけではない! 育成も重視したチーム運営

 越谷の注目ポイントは好調を維持するトップチームだけではない。バスケットボールを知ってほしいという“競技の普及”ではなく、“育成”を目的とした越谷アルファーズバスケットボールアカデミーの運営にも力を入れる。同アカデミーはバスケットボールの技術向上はもちろん「自ら考えて行動する自主性、チームワークを大事にする協調性、人として社会のことを考える社会性を身に着ける」という理念を掲げ、現在4拠点で活動を行っている。宇都宮ブレックスユースでの指導経験もある青野GMを中心に、その拠点ごとにコンセプトを決めて、地域ごとのニーズに合わせた指導をきめ細やかに行うのが、その特徴だ。

 青野GMは「ミニバスケットボールのチームでエースをやっていて、もっとうまくなりたい。と思っている子がいれば、スポーツを始めたい。バスケットボールを楽しんでみたい。と興味を持ってくれる子もいます。そのニーズを丁寧にくみ取っていきたいですね」と話す。続けて「ただ競技の普及を行うという観点ではなく、アカデミーのなかにきれいな育成のピラミッドを作って、アカデミー生が、自分自身で次の目標を設定できるような場所になると良いなと思いますね」と優しい笑顔を見せた。

アカデミーの育成理念について笑顔で語る青野GM[写真]=兼子愼一郎


 アカデミー以外にも、昨シーズンにはチーム公認の「アルファヴィーナスキッズチアコースAlphaAngel(アルファエンジェル)」をスタートさせるなど、地域スポーツの振興に貢献しつつ、ファンを着実に開拓する活動を続ける越谷。好成績を収めるトップチーム、その躍進を支えるチームスタッフ、育成に携わるアカデミースタッフ、地域もチームも盛り上げるチアリーダーたち。それぞれの歯車がしっかりとかみ合いだしたことが、チーム成績と地域貢献の間にも好循環を生み、ただ強いチームだけではなく、ただ地域貢献ができている良いクラブでもない、非常にバランスの取れた“愛されるチーム”へと変貌を遂げつつある。

 アルファーズの地道な取り組みとトップチームの躍進により、越谷市周辺に一人でも多くのバスケットボールファン、スポーツのファンが増えていけば、地域社会全体を盛り上げる起爆剤となり、「バスケで日本を元気にする」という日本バスケットボール界の理念を体現できるはず。更なる越谷の頑張りと、地域のスポーツ熱の高まりに期待しよう。

文=村上成

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