2019.12.25

自分たちのバスケを貫き、美しく散った済美…キャプテンの三原愛莉「済美を選んで良かった」

3回戦敗退も済美の三原愛莉は「悔いはない」と話す[写真]=新井賢一
本格的に取材を始めたのが「仙台の奇跡」と称された2004年アテネ五輪アジア予選。その後は女子バスケをメインに中学、高校と取材のフィールドを広げて、精力的に取材活動を行っている。

 神は細部に宿ると言う。その細部には“気持ち”という目には見えないものも含まれるのだろう。

「SoftBank ウインターカップ2019 令和元年度 第72回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の女子3回戦、済美高校(愛媛県)は精華女子高校(福岡県)と対戦し、76-89で敗れた。しかしその戦いぶりは、自らのバスケットを貫くという視点で見事だったと賞賛できるものだった。

 サイズはロースターの平均身長で4センチほど精華女子が上回るが、ほぼ互角と言っていい。ともにディフェンスを激しくおこない、奪ったボールを素早く相手コートに運び入れる、いわゆる“トランジションバスケット”をベースに置いている。精華女子には樋口鈴乃、三浦舞華といった爆発力のある選手もいるが、済美の三原愛莉、松本みずき、三原梨央も負けてはいない。事実、精華女子のコンビが2人で48得点を挙げているのに対し、済美のトリオは3人で66得点を挙げている。平均してみてもそれぞれの得点力は大きく変わらないとも言える。

キャプテンの三原とともに済美の攻撃をけん引した松本みずき[写真]=新井賢一

 実はこの2校、普段から交流があると、済美の中川香一郎コーチが教えてくれた。

「いつもお世話になっているんですけど、ずっと勝てていなかったんです。それが今日はできすぎです。これまでは『守れない……無理』という感じでしたが、今日は自分たちで『思い切ってやろう!』と話し合ったのでしょう。この子たちはこちらが言わなくても、私のやりたいことをわかってくれる子たちなので」

 それについてキャプテンの三原に聞くと、やはり昨夜のチームミーティング後に29人の全部員が一つの部屋に集まって、全員で話したと認める。

「そこで『ウインターカップは3年生にとって最後の大会だから、明日が最後にならないよう、何が何でも自分たちのバスケットをやりきろう』と話したんです」

 この自主性こそが済美を3回戦まで導いた原動力なのだ。

「私たちは170センチ以上の選手が1人もいませんが、バスケットが高さだけじゃないところを見せようと、スピードで1、2回戦を勝ち上がりました。今日の精華女子戦も最後まで走り続けることができたし、自分たちのやりたいことをやりきれました。悔いはありません」

 三原はきっぱりとそう口にする。

コーチやベンチメンバー、そして部員全員が一丸となって“済美のバスケット”を貫いた[写真]=新井賢一

 最後は「『やっぱり無理……』が一瞬出てしまった」と中川コーチはわずかな心の揺れを敗因として挙げるが、それでもタイムアウトを取ってチャレンジャーとしての気持ちを奮い立たせた姿は清々しさを感じさせるものがあった。

 もし三原に悔いが残るとしたら、高校の進路を決めるときに掲げた目標を達成できなかったことだろう。聖カタリナ学園を破って全国大会に出場するという目標だ。それは妹の梨央らに託すしかないが、それでも済美を選んだことに悔いはない。

「目標は達成できなかったけど、そのために頑張ってきたことがウインターカップでのベスト16につながったと思うので、済美を選んで良かったと思います」

 負けるときは美しく――自分たちを最後まで貫いた済美のバスケットは間違いなく美しかった。

文=三上太

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