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『B MY HERO!』
仙台大学附属明成高校は夏から着実に進化していた。
10月16日~18日にわたり「宮城県高校選手権大会兼ウインターカップ2021予選」が開催され、決勝リーグで利府高校(103−32)、東北学院高校(117-52)、東北高校(148−22)を100点ゲームで圧倒した仙台大明成が10連覇でウインターカップ出場を決めた。宮城の出場枠は県代表枠と東北ブロック枠の2枠のため(※)、2位の東北も2015年以来となる出場権を獲得している。ここでは、昨年度のウインターカップ覇者である仙台大明成の戦いぶりと夏以降の変化を追う。
取材・写真=小永吉陽子
今予選での仙台大明成は、3日間でブロック予選を含む5試合すべてに圧勝しながらも、どんなに点差が開いても主力を長く起用していた。その意図を佐藤久夫コーチは「対外試合ができない今はこの予選は貴重な経験の場。ウインターカップに向けて、連戦の疲労感の中でどのようなプレーができるのか確認したかった」と説明する。またもう一つの狙いは、U19代表である菅野ブルースの完全復帰からくるプレータイムの増加だ。
菅野は197センチの長身でポイントガードにコンバートしている選手。しかし昨年は度重なる負傷で1年をリハビリに費やし、今夏のU19代表ではウイングのポジションでプレーしたこともあり、ポイントガードとしての実戦経験が少ない。そのため、この予選ではほぼ全試合にフル出場していた。ゲームメイクに関しては「周りを生かしながら自分の良さを出すのは難しい」(菅野)と試行錯誤中だが、「試合ごとに吸収している」と佐藤コーチ。菅野の司令塔としての成長が今後のカギを握ると言えるだろう。
夏以降の仙台大明成は新しいことに取り組んでいる。全員が3ポイントを打ち、試投数と成功数増加を目指しているのだ。またリバウンドからボールプッシュの速さも目につく。だが、点差が開くと雑に攻めるシーンも見られた。
決勝リーグ2戦目の東北学院戦の後半、大差をつけながらも佐藤コーチはエースの山﨑一渉に対し「エースの仕事は何だ」と問いかけている。正直なところ、県では仙台大明成のライバルはいない。そんな中で目的なのない試合をしていては先につながらない。「このくらいでいいや、というブレーキをかけるな」。これは常々、佐藤コーチが選手に与えている課題である。
そうした反省が優勝決定戦となった東北戦での『148-22』という堅守と猛攻につながったのだ。山﨑は「点差よりも内容が重要。ウインターカップ初戦につながる試合を」と意気込み、高校での自己最多となる58得点をマーク。さらには「僕が力強いプレーをすればチームは勢いづく」と3本の豪快なダンクを披露している。佐藤コーチは「まだ決め切るところで決め切れていない」と合格点は出さないが、以前より積極性は増している。聞けば、インターハイ後にはキャプテンに任命され、リーダーシップの面でも要求されているという。仙台大明成のエースは今、自身の殻を破ってさらなる可能性を引き出すことに取り組んでいる。
今予選ではエースである山﨑と菅野の変化に始まり、チーム全体がパワーアップしていた。その背景にあるのは夏の悔しさだ。インターハイ準決勝で帝京長岡高校(新潟)に1ゴール差で敗れた悔しさは誰もが忘れていない。
インターハイでチームプレーが噛み合わなかった原因の一つには調整の難しさがあった。ラトビアで開催されたU19ワールドカップのために山﨑と菅野はチームを約40日間離脱しており、さらには帰国後、2週間の隔離をしなければならなかった。トレーニングはしていたものの、代表選手が隔離された施設にリングがなかったためにシュートを1本も打つことなく本番に臨んでいる。相当、過酷な試練の中で戦っていたのだ。しかし誰一人として言い訳をせずチーム力不足を受け入れ「ここで凝り固まらずに、新しい自分とチームに変わろう」(佐藤コーチ)とチームビルディングを進めてきた。
エース不在の夏の間には、3年の丹尾久力、2年の内藤晴樹と八重樫ショーン龍らが伸びる収穫もあった。夏に味わった試練と収穫を融合させる成果が出始めているのだ。そうした中、今予選でもっとも躍動していたのが、3年の山崎紀人(196センチ)だ。リバウンドからボールプッシュして走る力があり、得意のパスでチームを生かす潤滑油的役割として存在感を示した。山崎は今後チームが上昇するカギをこのように語る。
「ようやくチーム全員が揃い、気持ちが高まってみんなで熱くなっています。『次はどうやって合わせよう』と考えながらプレーするのが面白いです。この気持ちで練習すればもっと成長できると思います」