2023.06.07

元Bリーガーの佐藤正成…31歳の新コーチとして実践学園を指揮「人の心を動かすようなチームに」

現役を引退し実践学園を指揮する佐藤正成コーチ [写真]=小沼克年
フリーライター

 見慣れない光景だった。

 6月3日に行われた「令和5年度 関東高等学校男子バスケットボール大会 第77回関東高等学校男子バスケットボール選手権大会」のAブロック1回戦、実践学園高校(東京都)のベンチには佐藤正成コーチが立っていた。

 ひと目で認識できたのは、彼のことを東海大学時代から知っていたこともあるが、元Bリーガーであることが大きいかもしれない。現在31歳の佐藤コーチは、大学卒業後にアースフレンズ東京Z(当時NBDL)へ加入し、Bリーグが開幕した2016-17シーズンからは地元の山形ワイヴァンズでプレー。2019-20シーズンには熊本ヴォルターズに移籍し、その後は3x3のSHONAN SEASIDEへ活躍の場を移していた。

「元々、指導者を目指していたので、大学卒業後はそのまま教員になろうかなと思っていたんです。でも、まだちょっとやり足りなかったので選手を続けました」

 実践学園でのコーチの打診については「知人を通じてお話をいただいた」という佐藤コーチは、2023年3月に現役引退を発表。昨年度まで12年間にわたり実践学園を指揮していた高瀨俊也コーチに変わり、4月からは同校のコーチとして新たなキャリアをスタートさせた。

指導者としてバスケットボールと向き合う佐藤正成コーチ [写真]=小沼克年

 迎えた関東大会では、後に優勝を果たした日本航空高校(山梨県)と初戦で激突。出だしこそ主導権を握った実践学園だったが、第2クォーターで12-34と一気に離されてしまった。最終スコア94-105で敗れ、佐藤コーチはこう試合を振り返った。

「最初はこっちのシュートが入っていたのでいい展開だったと思います。でも、2クォーターでは注意していたトランジションの部分でやられてしまいました。前半のタイムアウトを早めに使い切ってしまったので、流れも切れなかったです」

 新米コーチにとっては、一つひとつの試合、一つひとつの指示、決断が勉強であり、それを今後の糧にしなければならない。就任してまだ2カ月弱の佐藤コーチも「やっぱりバスケットは奥が深いなってすごく感じています」と話し、選手たちの気持ちを汲み取ったうえで、指導者としての今後を見据える。

「指導者が変わることは、選手たちにとっては少なからずストレスがかかることだと思っています。私としては、変わったことによってチームがよりポジティブな方向に進んでいけるようにしていきたいです。いい部分がたくさんある選手たちなので、私が彼らのいいところを出してあげて、足りない部分は全員で補い合っていけるようなチームを目指したい。そういったひたむきな姿を見て、一人でも多くの方の心を動かせられるよう、もう一度練習から徹底していきたいなと思います」

攻守に渡ってチームをけん引する実践学園・南澤 [写真]=小沼克年

 日本航空戦で31得点を挙げた南澤空(3年)は、下級生の頃からコートに立ち、今年はキャプテンとしてもチームの中心に立つ。指揮官が変わることを知らされた時は驚いたようだが、現在は「高瀨先生から教わったことを受け継いで、佐藤先生からはプラスアルファで細かい部分もいろいろ教えてもらいたい」と意欲を示している。

 94得点を奪いながらも105点を与えてしまった日本航空戦について、「100点は取られすぎました。チームのモットーはディフェンスから速攻で点を取ることなので、もっとディフェンスの強度を上げていきたい」と南澤。この言葉に対し、佐藤コーチも南澤を軸にさらなる強化をポイントに挙げた。

「まずディフェンスの部分はもっとハードにやらなければいけません。攻撃では南澤が感性・感覚があってトランジションを出すのがすごく上手なので、しっかり守って、そこから走ることをもっと押し出していきたいなと思います」

 実践学園の次なる戦いは、6月11日に初陣を迎えるインターハイ予選。東京都上位2チームにしか与えられない夏の全国切符を掴むべく、急ピッチで調整を進める。

佐藤コーチ指揮のもとインターハイ出場を目指す実践学園高校 [写真]=小沼克年

取材・文・写真=小沼克年

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