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『B MY HERO!』
試合序盤で20点以上の差をつけられた。ウィリアムスショーン莉音(3年)は、この時の劣勢を「正直、自分たちのバスケがどういうものなのか分からなくなってしまった……」と苦笑まじりに振り返った。
それでも、仙台大学附属明成高校(宮城県)は後半から息を吹き返し、第4クォーター終了間際には村忠俊(3年)が起死回生の同点3ポイントシュートをマーク。その後、土浦日本大学高校(茨城県)の攻撃を2度防いで延長戦へ持ち込むと、最終スコア78-71で「令和5年度全国高等学校総合体育大会バスケットボール競技大会(インターハイ)」の2回戦へと駒を進めた。
『辛い時こそ明るく』
それがチームの持ち味であり、「先生が最後に自分たちに言ってくれた言葉」だと佐藤晴(3年)は言う。“先生”とは、6月に急逝した佐藤久夫コーチ。佐藤は続ける。
「どんなに辛いことがあっても、明るさだけは絶対に忘れちゃいけない。そのなかで自分たちのバスケットを発揮すれば勝利につながると教えてもらったので、最後までしっかり、明るくプレーしました」
仙台大附属明成はコート上で何度もハドルを組み、試合が終盤になるにつれては、抱き合うような距離感で意思疎通を図った。ビッグプレーが出ればコートも、ベンチも雄叫びを上げて盛り上がり、自分たちで流れを、勝利を手繰り寄せた。
「これまでの試合は、追い上げても最後は1、2点で負けることが多かったです。でも、今日は追い上げて勝ち切れた。勝ててホッとした部分もありますけど、ここを乗り越えたのはチームにとって本当に大きなことだと思います。自分たちはいろいろな逆向を乗り越えてきましたし、これからもこの勢いで頑張りたいです」
そうこの試合を振り返ったウィリアムスは、最後はファウルアウトとなったものの、17得点と両チーム最多の19リバウンドを記録した。「点差をつけられた時は『何をしているんだ!』って久夫先生に怒られている気がしました」。やや笑みを浮かべながら発したこのコメントからは、勝利できた安堵感が垣間見えた。
この日、チームが着用していたTシャツの背面には『籠久』の文字があった。
ウィリアムスによれば、インターハイ前に刻んだという。これまでのチーム、そして亡き恩師を語る上でも使われてきた言葉だが、ウィリアムスは現在の意味や意義をこう明かした。
「『背中には久夫先生がついている』という想いでプレーするために入れました。今まで『籠久』のTシャツはあったんですけど、今日着た『M』のTシャツには入っていなかったので。先生のためにも自分たちは勝たないといけないですし、そういう気持ちも背負ってやっていこうという想いがこもっています」
新体制で初めて挑んだインターハイ初戦は、髙橋陽介アシスタントコーチが主な指揮を執り、畠山俊樹コーチが半歩後ろでサポートしていた。そしてもう1人のコーチも、きっと天国から喝を入れてくれたに違いない。
文・写真=小沼克年