2024.04.05

【山脇明子のLA通信】アメリカへの第一歩…瀬川琉久がBWBで学んだこと、楽しんだこと、気がついたこと

BWBに日本から唯一参加した瀬川琉久 [写真]=山脇明子
ロサンゼルス在住ライター

 男子日本U18代表として、3月30日からドイツ・マンハイムで開催されている「第30回アルバート・シュバイツァー・トーナメント」に出場中の東山高校新3年生瀬川琉久。昨年は2年生エースとして、昨年のインターハイで同校を準優勝に導き、ウインターカップでは準々決勝進出に貢献した。

 2月には、NBAオールスターゲームが行われたインディアナポリスでのバスケットボール・ウィズアウト・ボーダーズ・グローバルキャンプ(BWB)の参加選手に選ばれた。日本の高校を代表する184センチのポイントガードも、22カ国から集まった高校生年代トップ40名の有望選手の中では小さい方で、同じチームに自らよりも大きなポイントガードが存在するなど、常に試合をコントロールしている日本とはまったく違う環境となったが、その中で自分には何ができるか、どうやって見せるかを試行錯誤しながら実行していった。

 BWBを終えた瀬川に世界を経験したからこそ見えた課題やこれからについて聞いた。

インタビュー・文=山脇明子

「小さいときから海外でプレーしたいと思っていました」

――この3日間の経験で、どのようなことを学びましたか?
瀬川 この3日間は、今までになかったような経験がたくさんできて本当にいい刺激になりました。身体能力もあって、身長もある世界トップレベルの選手の中では、自分のいつものドライブとかジャンパーが通用しない部分がありました。やはり3ポイントシュート、ペイントエリア内のシュートバラエティ、バスケットIQを磨いていかないといけないと思いました。

――一番楽しんだことは?
瀬川 今まで経験したことがないような選手たちとプレーできたことが一番楽しかったです。

――日本に戻ったら、今回の経験からどういうことをチームで共有したいですか?
瀬川 日本に比べて海外の人たちは一個一個の勝ちにこだわっています。そういう部分は日本人にはないかなと思うので、みんなに伝えていければいいなと思います。

――ここでやったバスケは今まで日本でやってきたものとどう違いますか?
瀬川 東山高校では、自分が中心になっていかないといけないので基本的に40分間僕がボールを持っているような感じなんですけど、こういう世界トップレベルの選手の集まりでは、みんなエゴがあるのでパスも回ってきません。でもパスが回ってこない中で、どれだけ活躍できるかというのが重要だと思うので、そういうところは学びました。

――そのために大事なことは?
瀬川 まずはコーチからの信頼を勝ち取ることと、選手とのコミュニケーション。英語を喋れなくても、アイコンタクトであったとりとか、簡単な英語だったり、そういう部分でコミュニケーションを取っていって、信頼を得るというのが一番大事だなと思います。コミュニケーションの部分では、なかなか伝えられないことも多かったので、そこは本当に難しかったです。

子どものころからアメリカでのプレーを夢見ていた瀬川にとって貴重な経験となった [写真]=山脇明子


――インディアナポリスに入ったのは?
瀬川 14日(2日前)の夜です。1日目と2日目は時差ボケと緊張と不安で一睡もできなくて、2日間、徹夜しているみたいな感じだったんですけど、キャンプの1日目が終わって、どういう感じかがわかってきて、不安とかそういうのがなくなってしっかり眠れたので良かったです。

――このBWBのチャンピオンシップで優勝した瀬川選手のチーム “Pacers”は、試合では全員にほぼ公平に出場時間を与えていました。ただ、決勝戦の最後の方に瀬川選手だけ、もう1回出してくれましたね。あれは、パスがこなくても目立たないことをしてチームを支え、ひたむきに頑張っていたからのように見えました。
瀬川 たぶんそうだと思います。東山高校では全然ディフェンスキャラじゃないんですけど(苦笑)、やっぱりこういうところに来たらボールがもらえない分、他の部分で頑張らないといけないと思ったので、誰でもできるようなディフェンスの部分を必死に頑張ってやりました。

――将来はアメリカでプレーしたいと考えているのですか?
瀬川 はい、そうです。小さいときから海外でプレーしたいと思っていました。自分の目標は日本のA代表のスタートのガードになることです。その目標を叶えるためには、海外でのプレー経験が必要だと思います。

――アメリカを目指すことになったきっかけは?
瀬川 小さいころからNBAとかよく見ていて、その刺激もありますし、八村塁選手(現レイカーズ)とか渡邊雄太選手(現グリズリーズ)が活躍するのを見て、いろんな刺激をもらいました。

――東山高校では、1年生からチームの中心ですが、今回BWBに参加して、自分の中での意識や責任感はさらに増しましたか?
瀬川 そうですね。自分がここに選ばれるような選手だとは思っていなかったので、選ばれたときはビックリしました。でも日本を代表して選ばれたので、自覚と責任を持ってやらないといけないという気持ちでこのキャンプに挑みました。

――アメリカでやろうと思っている瀬川選手としては、ここに選ばれたというのは。
瀬川 はい。大きいですね

――将来アメリカでプレーするために今後どういうところをもっと伸ばしていきたいですか?
瀬川 一番大事だと思ったのは英語面です。今までちゃんと勉強してこなくて、英語も喋れないんですけど、いきなりこうやって呼ばれて全然コミュニケーションが取れないなというのを実感しました。今回の経験で英語の大切さというが本当にわかりました。プレー面でいうと、今回は、ポイントガードという形ではあまりできなかったんですけど、もっとボールをキープして、スリーポイントの確率をもっと上げていかないといけないと思いました。ゴール下だとみんな大きいので、ブロックされてしまうので。

――今の自分の一番の持ち味、魅せられる部分は?
瀬川 ハンドリングとジャンプシュートですね。今回のキャンプではなかなかジャンプシュートを決められませんでしたが、その分、昨日は3ポイントをいっぱい決めました。

――“Pacers”には、カスパラス・ジャクシオニス(登録では193センチ:2023−24シーズンはU18 FC Barcelona /FC Barcelona所属)がポイントガードとしてプレーしていました。アメリカに来たら、自分よりも大きいポイントガードがたくさんいると思います。そういう人たちに打ち勝つためには、どういうことが大事になってくると思いますか?
瀬川 フィジカル面とかでは負けると思うので、その分スピードをつけたり、緩急をつけたり、そういう部分は大事になってくると思います。

――この経験はどんな風に今後活きていくと思いますか?
瀬川 こんなに大きな選手の中でやったことはありませんでした。自分の目標であるA代表に入るということは、ワールドカップでもオリンピックでも世界で戦うということなので、その部分ではいい経験になったと思います。

――東山高校での3年生の目標は?
瀬川 東山高校では、去年目標にしていた日本一が取れなかったので、今年こそは絶対に取るというのが一番の目標です。

最上級生になった東山では日本一を目指すシーズンが本格スタート [写真]=バスケットボールキング


――その先の今の計画としては?
瀬川 どこから声がかかるとかまだわからないので明確なことは言えないんですけど、卒業後はアメリカに渡るような感じだと思います。