2021.09.24
8月23日、富樫勇樹(千葉ジェッツ)がサポートを受ける味の素本社を表敬訪問。今回はオリンピック・パラリンピック推進室に東京2020オリンピックの報告をするとともに同社社員ともリモートで交流を行い、初めて出場したオリンピックでのバックアップに感謝の言葉を述べた。
味の素は各競技の日本代表クラスが汗を流すナショナルトレーニングセンターのネームライツをはじめ、同施設内にある勝ち飯食堂の運営にも携わるなど、日本のアスリートを長年支えていることは周知の話。富樫がサポートを受ける「ビクトリープロジェクト」もその一環であり、日常の食事から最高のパフォーマンスを発揮するための後押しを行っている。
今回オリンピックを終えた富樫に加え、サポートを担当する栗原秀文チームリーダーにも話を聞く機会を得た。富樫の取り組みがどのようにパフォーマンスの向上につながったかを聞いていく。
――当時の富樫選手は好き嫌いが多かったと聞いていますが…
栗原 ピザとハンバーガーがあれば大丈夫という感じで、お寿司もサーモンは食べるけど、あとはマグロぐらいしか食べなかったですね。
――そんな富樫選手がサポートを受けようとしたきっかけは何ですか?
富樫 食に対して特別に考えていなかっただけで、嫌だとか抵抗などはありませんでした。それにプロジェクトでは、これを始めたから何かを一切食べてはいけないというものではありません。例えばレストランに行ったら「こういうのを摂るといいよね。プラスで摂るとよりいいよね」という感じだったので、何か追加で一品、野菜やスープなどを加えて食べるようになったという感じで、ストレスはありませんでした。
栗原 無理していろいろ食べさせるのが本人にとって良いことなのかと言われると、実はそうではなかったりします。その中でできる限りより良い方に持っていく。今よりも改善できる方向にしていく。どのようなテクニックを使えばそれができるのかを考えました。ですから、食べるタイミングを増やしたり、食に対して意識を持ってもらうことは多くなりますが、それが嫌にならないようにすることは、すごく重要なことです。全部をあるべき姿に改善していくようなスタンスではありませんでした。
――競技によってサポートの方法が変わるものですか? 富樫選手の持ち味であるスピードを活かすことも考えられたと思いますが。
栗原 競技種目によって傾向が違うことはあるかもしれませんが、結局は同じスポーツでも体を大きくしたいという人もいれば、逆に絞らないといけない場合もあるので、そのアスリートがどうなりたいかに向き合うのが一番大事なことだと思います。その中で富樫さんへのアプローチは、スピードを活かしながらも、やはり当時はアメリカでチャレンジをしていくために、大きな人たちからのチャージに対しても耐えられる体を作るために重量も必要でした。重量が重さだけにならないように考えると、筋量を増やすことになります。ただこれも単に増やせばいいわけではなくて、除脂肪量、すなわち筋量を増やすことに着目しました。アメリカと日本と離れてはいましたが、できるだけ確認がしたいということで、体脂肪率に注目したコンディションチェックが始まったのが、我々の取り組みの一つです。
――サポートを受ける効果はどれくらいで実感しましたか?
栗原 多分いつからという認識ではなく、やり続けることで意識の改革ができたのではないでしょうか。それが重要だったと思います。いつに何キロになったから成功というのではなくて、一つずつ改善していったことが進歩だったのではないでしょうか。
――もう習慣になっている?
富樫 それはあるかもしれないです。もちろんちょっとずつ体が変わっていった実感はありましたが、食事の摂り方など今までやってきたことが習慣化されていったというイメージです。
富樫 そうですね。
――オリンピックを終えて、味の素のサポートがあって良かったなと思うことは?
富樫 さまざまな試みを長い期間をかけて行ってきたからこそ、気づけたことがすごい多いと思います。自分の中でも体重計に乗って、そもそも「あ、今日やばい、少ないかも」と思うことがなかったことも大きいです。食事もそうです。どれくらい食べたら(体重が)落ちて、どれくらい食べたらキープできるのかという感覚も付きました。振り返れば、コロナ禍もありオリンピックまでの2カ月は、今までで一番精神的にキツい合宿だったのかなと。全員外にも出られない、コンビニにも行けない時期も結構あったので、その中でも体重をキープできたのは、間違いなくこれまで取り組んできた成果ですし、それがパフォーマンスにつながったかなと思います。
――オリンピックでの経験を今後どう活かしたいですか?
富樫 まだ年齢的にもそうですし、これが終わりではありません。もちろんこの数年目標にしてきた舞台が終わったわけですが、自分としてはこれからが大切だと思うので、また次なる目標のためにやるしかないと思っています。
取材・文=入江美紀雄
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