2023.02.25

「久しぶりに少し声を出したら喉が痛い(笑)」スポーツ観戦の日常が戻ってきた!

難敵イランに快勝した男子日本代表 [写真]=伊藤大允
バスケットボールキングプロデューサー(事業責任者)。学生バスケをテーマにしたCM制作に携わったのがバスケに関する初仕事。広告宣伝・マーケティング業務のキャリアが一番長いが、スポーツを仕事にして15年。バスケどころの福岡県出身。

チケット完売となった久しぶりの代表戦はイランに快勝

 春の温かさと、小刻みに変動する天候に、季節のうつろいを感じる2月23日。東京の主要ターミナルには人があふれ、新幹線の自由席に座ることが出来ない大勢の旅客がいる様子は、コロナ禍が明けつつあり、日常が少しずつ戻っていることを感じさせる。

 金曜日を休めば4連休という絶好の祝日、群馬県高崎アリーナにて「FIBAバスケットボールワールドカップ2023 アジア地区予選」のWindow6イラン代表戦が開催された。トム・ホーバスヘッドコーチ率いる日本代表にはジョシュ・ホーキンソン信州ブレイブウォリアーズ)が帰化枠として初選出を果たしたほか、Bリーグでも大活躍、好調を維持する河村勇輝横浜ビー・コルセアーズ)もメンバーに名を連ねるなど、久しぶりに開催される日本代表の試合は、バスケットボールファンにとって、待ち遠しいイベントであり、その期待の高さから観戦チケットは完売となった。

 試合は日本代表(FIBAランキング38位)が格上のイラン(同20位)を攻守に圧倒。96-61で勝利し、国内組のみのメンバー構成にも関わらず、良い意味で予想を裏切る圧倒的なパフォーマンスを見せた。代表デビューとなった東海大学2年生の19歳、金近廉が6本の3ポイントを含む20得点と衝撃デビューを飾ると、ホーキンソンも17得点11リバウンド4アシストと期待に違わず大車輪の活躍。この日、最も観客の溜息を誘った河村も3ポイントシュート3本を含む全てのシュートを成功させて、きっちり15点を取りつつ、ゲームを支配するなど好調ぶりを見せつけ、会場に詰めかけた沢山のファンに、その雄姿を見せつけた。

代表デビュー戦のホーキンソンは17得点11リバウンド4アシストの活躍 [写真]=伊藤大允

復活した声出し応援について、ファン、選手の感想は?

 この日の代表戦では、声出し応援の一部解禁も行われ、観客席の一部には“日本代表を熱く応援したいファンの皆様に向けた、常時スタンディングでの応援が可能な『スタンディング応援ゾーン』”も設置された。チケット購入サイトには、「スタンディング応援ゾーン以外のエリアについても、プレイへの反応等で一時的に立ち上がることは禁止しておりません。ルールを守りながら、スタンディング応援ゾーンとそれ以外の応援席とが一体となって日本代表を後押しいただけますようお願いいたします」との文言が記載されるなど、今夏のワールドカップに向けて、バスケファンが一体となって応援をできる環境が、平常時を想定して整いつつある様子が垣間見えた。

 スタンディング応援ゾーンでの観戦に駆け付けた横田晶次郎さんは、Bリーグアルバルク東京の熱烈なファンという。久しぶりに声出し応援の一部解禁が行われたことについて感想を問うと「フリースローのときに久しぶりにブーイングをしましたが、フリースローが落ちると本当に嬉しくて」と笑顔を見せる。ちなみにイランのフリースローは24本の機会で13本成功の54.2パーセントと、横田さんの久しぶりのブーイングの効果は絶大だった様子。横田さんは続けて「いやー、リバウンドの時や、きれいなシュートが決まったときなど、気にせず声を出せるのはやっぱり良いですね」と語ると、続けて「一部、声出しって…。と最初は思いましたが、(前半で)声も枯れちゃって、段階的に声を出すっていうのも応援する側にとっても良いのかもしれないですね。とにかく会場の雰囲気も最高ですね」と述べる。今回一緒に高崎に駆け付けた奥様は、お気に入りの日本代表選手の背番号を入れた高崎名物のダルマを4つも抱えて「日本代表の試合って、本当に最高!楽しいですよねー。」と夫婦そろって満面の笑顔を見せた。

観客席の一部にスタンディング応援ゾーンが設置された [写真]=伊藤大允


 一般観客席でもバスケットボールをしている子どもたちを引き連れた親御さんが河村選手の激しいディフェンスを見て「河村選手のディフェンスを良く見ておくのよ」と声をかけると、一緒に観戦する子どもたちも河村選手が激しく身体をぶつけながらイランの選手から自由を奪うたびに「おお!」、「すごい!」と歓声を送る。その様子を見て「ね!すごいでしょ」と声を掛け合う様子に、いよいよスポーツ観戦にも日常が戻りつつあることが感じられた。

オフェンスだけでなく河村のディフェンスにファンも釘付け [写真]=伊藤大允


 とは言うものの、日本代表戦に大歓声が届くには、まだ準備運動が必要な様子。この試合では23分プレイをして、イランの力強いインサイド陣に対抗した井上宗一郎サンロッカーズ渋谷)は、一部声出し応援は解禁されたが、フロアから見てどうだったかと問われると「僕は試合に集中していたので…。声援はあったと思うのですが、そこまで気にならなくて。(試合に集中していたので)そこまでは分かりませんでした」と素直な回答。「大声援に後押しされました!」という嬉しいコメントを聞くには、まだ時間がかかるようだ。

“声出し応援”一部解禁について、井上は「あまり気にならなかった」とコメント [写真]=伊藤大允


 今夏のワールドカップに向けて選手はもちろん、応援するファン、ブースターにとっても準備するには時間が必要となる。2月26日に高崎にて開催されるバーレーン戦はもちろん、BリーグやWリーグの試合においても、気持ちを前面に応援する機運の情勢と、これまでの静かな応援が“日常”となっていた観客席側においても、喉のウォーミングアップが必要なのかもしれない。異常な状況を強いられたコロナ禍での数年。春の訪れとともに、スポーツシーンにも活気ある日常が戻りつつある。

文=村上成

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