2023.10.20

「“代表引退”がセンセーショナルに伝わり過ぎた」島田チェアマンが自身の番組で会見の真意説明

『島田のマイク』を臨時配信
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 本記事では、Bリーグ島田慎二チェアマンがMCのポッドキャスト番組『島田のマイク』(バスケットボールキング)で10月18日に配信した内容をテキストでもお伝えします。

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「ココロ、たぎる。」Bリーグチェアマンの島田慎二です。

 普段は毎週木曜日に配信している『島田のマイク』。今回は少しイレギュラーですが、先週(10月12日)のJBA男子代表強化検討委員会の会見を受けて、多くの反響と少し混乱を招いたところがありましたので、まずはそこについてお詫び申し上げたいということと、一連の報道に偽りはないのですが、その前提となる部分の真意が伝わっていないところがあると感じています。

 前提をもう少し説明しないと、なぜ今回の発表に行き着いたかということが分かりづらい部分もあるかなということで、私も個人のnoteで説明する機会を持ちましたが、この番組で音声でお届けすることで補完できればなと。もしかするとここで初めて「そういうことだったのね」と知ってくださる方がいらっしゃるのではないかということで、急遽配信をさせていただくことになりました。

 先週会見を開いた男子代表強化検討委員会というものが立ち上がったのは、昨年の秋頃、ちょうど1年前なんです。この委員会は一旦終了し、JBA内の将来構想委員会というところの中に男子代表強化部会というものが立ち上がり、そこに移管していくかたちになります。男子代表強化検討委員会が一旦終わるということで、活動報告を兼ねて開いたのが先週の会見でした。

■会見のメインテーマは強化方針『Japan’s Way』だった

 この配信もそうですが、基本的にできる限り開かれたバスケットボール界でありたい。Bリーグでありたい。やっていることや決めたことを内々だけが知っていて、ファンの皆さん・選手の皆さんが分からないという状態ではなく、できる限りお話ししていきたいなということで発表させていただいたんですが、実は一番のメインテーマは『Japan’s Way』なんです。

 この『Japan’s Way』の部分が報道ではあまり取り上げられていなかったのが残念なんですが、日本バスケット界の5人制男女、3x3、場合によっては車いすバスケットボールも含め、どのようなバスケットで世界に打って出るかということの大きな方針を議論してきて、ようやくまとまったものをJBA技術委員会・東野智弥委員長が発表しました。

 この発表は今後の育成世代やその指導者にも影響します。日本にどんな選手が生まれて、世界に受け入れられていってほしいかという意味ではとても大きいことですし、Bリーグがいろいろな競技レギュレーションを決めていく上でも、そこに向かっていくのであればこうするべきだよねという、強化関連の大きな指針を決定発表しています。

 これが会見の一番の大きな目玉だったんですが、残念ながらあまりフィーチャーされることがなかったのは非常に残念だったなと思います。

■代表選手の移動やスケジュールの課題も委員会で議論

 また、代表招集するときに財政上の問題等々で、長時間のフライトするようなところでも、あれだけ大きな体の選手たちがエコノミークラスでフライトするということが多くありました。予算の中で数人分だけビジネスクラスの席を用意して、チーム内で話し合って座ることもあったんですが、全員分カバーできていたわけではないんです。

 特にシーズン中であれば送り出すクラブとしても行く選手としても、海外に行って試合しすぐに帰ってチームに合流してリーグ戦に参加することになったとき、やはりここは改善してあげたいというのは内々でもありましたし、トム・ホーバス男子日本代表HCや東野技術委員長からも「それはぜひ」と言われていました。

 そして、スケジュールの問題もあります。リーグ戦が60試合あるので、そのなかで代表チームのケミストリーを高める時間があまりにも足りなすぎるという問題も何とか解決してほしいという思いもあって、それらも話し合われてきました。

 さらに、『B.革新』(2026年にスタートするBリーグの新たなかたち)において外国籍選手の登録や出場に関する『オンザコート』の部分などを決めるにあたり、リーグ単独でルールを決めるのではなく、やはりJBAの強化方針に照らし、かつ様々な立場の16人からなるメンバーが一緒になって議論をして決めていくことを目的として男子代表強化検討委員会がつくられ、1年間議論をして今回発表に至ったという流れです。

 この委員会は当然、私が独断で決めているわけではありません。1年間で7〜8回集まり活発な議論をして、例えばBリーグのオンザコートルールや、2026年以降、代表強化に貢献するためにシーズン中であっても合宿参加要請があった場合には2週間前から選手を送り出すなどといったことを決めてきた背景も、この議論がもとになって、それをリーグ内の実行委員会や理事会で決議し、決まっていくという流れになっています。

■代表招集の部分だけが報道で大きく取り扱われた

 そのなかでひとつ議題に上がったのが、代表招集の件だったんです。代表招集は、日本バスケットボール界の強化に貢献していくために、さまざまな議論をしてきたなかの一部分に過ぎないというところ。今回は不本意ながら代表招集の件がほとんどメインでメディアの皆さまに取り扱われるような状況になったので、この件についてここでもう一度触れたいと思います。

 JBAとBリーグが連携協力をして物事を決めているというのは、結構画期的なことです。スポーツ界を見渡すと協会とリーグとやはり利害が食い違ってしまうので、なかなか連係連動が進まない状況が往々にしてあると、そこはやはり新興産業のバスケット界は違った路線を行きたいということで、JBAの三屋会長と、BリーグチェアマンでJBA副会長の私もそうですし、体制を強化して一緒にやっていこうと。

 あくまでもBリーグによるBリーグのための話ではなくて、日本バスケ界が成長発展するために一つの役割を担っているのがリーグであるという前提に立って、Bリーグが存在しているということを着実に守っているというのが今のスタンスです。

 かつ、Bリーグが誕生した背景について。数年前まで日本バスケ界は分裂状態にあり、2つのリーグが存在したものを川淵三郎さんが一つにして誕生したんです。分裂時には国際バスケットボール連盟(FIBA)から制裁を受けていたわけです。リーグの統合とJBAのガバナンス、そして日本代表の強化についての指摘をうけていました。

 そうした経緯からBリーグは日本代表の強化に資することを大前提にいま進んでいるんです。Bリーグが誕生した時からずっと、ルール上も規定上も規約上も、そこは徹底されている前提になっていて、契約書等々でも日本代表には選手もクラブも協力するというのが前提となっているんです。日本代表に招集された場合は、代表合宿にしても国際試合にしても基本的には参加すると。

 もちろん、怪我や不測の事態が起こったときは協議すればいい話であって、基本的には参加しなければいけないですよ、というルールが前提に立っているということを、まず皆さんにはご理解いただきたいです。最強日本代表を組成するJBAとしては、代表に行きたい行きたくないではなく、その前提がまずあるということを、皆さまにご理解いただきたいなと思っています。

■これまでは曖昧にやり過ごしてきた部分

 いろいろな状況があるので、日本代表に行きたくないということではないのでしょうが、そこまで代表活動に積極的ではない選手も過去にはいました。戦力がダウンすることもあるかもしれませんし、ケガのリスク等々、負荷がかかることによってパフォーマンスが落ちるかもしれないという懸念もあったりしたのかもしれませんが、クラブが協力的ではないということもありました。そういう状況で、ここまでバスケ界は前へ進んできました。

 トム・ホーバスヘッドコーチが就任した約2年前であっても、そういう課題はまだあったんです。トムとも何度も話して、そこは改善してほしいという話もありました。そのぐらい現場としては日本代表を何とかしなければいけないという、大きな課題と大前提があった。これまで何となく曖昧にすることで、そこをやり過ごしてきていたんですけど、選手を送り出したほうが損をするような状況にもなりうることで、不公平感や疑念を抱かせるようなこともあったりしました。

 今回は、もともとあったルールをはっきりさせるということと、ペナルティーを積極的に課していきたいというよりは、対策を打たないと不公平感はなくならないと。いろいろな議論を経て解決方法として導き出したものを発表したタイミングが、たまたま日本代表があれだけ結果を出した後になってしまったので、「それを今やる必要はある?」とか、「なぜこのタイミングで水を差すの?」という話になったんですが、これはバスケット界の長年の大きな課題であって、1年間議論してきて決まったことの中の一つのパーツでした。

 やはり物事を進めて改革していくということは、その理由をファンの皆さまにも知っていただく必要がある。受け取り方は皆さんあると思いますが、決めるとか変えるということは、その背景にあることもきちんと説明する義務があるかなと思っています。

■ルール上では「代表引退」という概念が存在しない

 もう一つ、センセーショナルに伝わってしまった代表引退について。まず代表招集があった時に参加しなければいけないということは、あくまでも日本のJBAに登録して活動している日本の選手に対してのルールであるということが大前提です。

 代表引退という概念が本来ないということについては、Bリーグでプレーしている選手が招集された場合に、基本的に参加しなければいけないというルールが前提にあるので、代表引退ということ自体がミスマッチを起こしているんです。

 代表引退ということを否定したり、代表引退が悪いということではないんですが、Bリーグの選手である以上、契約に基づいてそこ(招集があれば参加する)を了承して、これがリーグの規約になっているわけなので、例えば代表サイドから招集したいという選手がいて、その選手が「代表引退したので行きません」となってしまうと、この前提がそもそも崩れますよね。ルールに照らすと、Bリーグの選手が代表引退という概念は無いんです。

 ただし代表引退ということは自由ですし、そこまで貢献し協力してきたような選手であれば、その言葉を使う権利も当然あるでしょう。それほど代表で活躍してきた選手ですから、JBAが招集を考えるときには選手ともコミュニケーションをとると思うんです。そういう考えであれば、ということで招集を見送ることは当然あるだろうなと思います。

 原則論としては、代表に参加する前提がありますよ、とした上で対応するというのが必要なのではなかろうかということで、今回はそういう話をさせていただきました。

■ルールはBリーグだけで決めているわけではない

いろいろな案件があって、『B.革新』の競技レギュレーション等は、選手の利害に直接深く関与する部分なので、選手会の皆さんとも繰り返し協議をしています。

 今回の件は、選手会等々を通すような案件というよりは、男子代表強化検討委員会において、過去からの流れで課題だった問題に対して問題提起をし、そこで課題解決としてこういう方向がいいのではないかということを決め、それをBリーグの実行委員会でお伝えし、承認を得て、理事会に諮って決まった。そういう意味では、選手に直接何か諮っているわけではないですが、JBAとBリーグがしっかり連係して、繰り返し議論をして決まったことです。

 基本的にはクラブの現場に伝えなければいけないことの伝達責任はクラブ側にあるので、今回決めたことは、各クラブのGMを介して現場に伝えているはずです。私もいくつかクラブに聞きましたが、きちっと伝えているということは言っていました。適切な伝達プロセスで現場まで伝わるような仕組みは持っているので、もしこの話を初めて聞きましたという選手がいれば、それはクラブ内での伝達ミスということになると思います。

 ただ、今回のペナルティの意図や意義、公平性など、深い議論まで各クラブ内でしていることはないと思います。特に選手に深く理解をしてもらわないと誤解を招きそうだなというような案件については、より丁寧にクラブの社長やGMから意義や意図まできちっと伝えてくださいね、ということを念押しする等もやっていこうと思いました。

 今までグレーだったところも含めてはっきりさせて、今回は運用上齟齬が出ないような状況が作れたかなと思っています。ただ、それを選手の皆さんに文脈も含めてきっちり理解してもらえるように、もうちょっと努力した方がよかったなということと、今回一番残念だったのは代表引退というところだけがセンセーショナルに伝わり過ぎてしまい、本質から少しかけ離れたところがあった。ここは混乱をきたしたかなとは思っています。

■ 現役選手たちのSNS投稿…チェアマンはどのように受け取った?


 選手たちがこういった形でSNSで発信できるのはいいことじゃないかなと思っています。先日の『B.革新』の会見の壇上でもそうでしたが、富樫勇樹選手(千葉ジェッツ)や河村勇輝選手(横浜ビー・コルセアーズ)も自分の意見をバシッと言うじゃないですか。

 リーグや協会でいろいろと意思決定することはあったとしても、選手に相談することと、選手に相談することなく意思決定していく案件だって多々あります。それについて、決まったことなので、とみんながだんまりしてるような状況は不自然だと思いますし、今回のようなこともいろいろな意見が自由に出てくることは良い風潮だと思います。こういうことを決めてく前提にあるものが何なのかということは理解しているんじゃないかなとは感じています。

 代表参加を拒否する時には、適切な理由がない限りペナルティ(※リーグ戦3試合の出場停止)が与えられますが、当然代表活動に行かないということはケガをしているという前提になっているので、試合に出られないのは一緒のことだろうと決めているところもあります。

■日本代表の価値向上が大事な理由

 選手たちに求める以上は、こちらも変えるものを変えていくべきではないか、ということはありました。飛行機移動の際のビジネスクラスへのグレードアップはその一つですし、報奨金とかもそう。できることはやっていこうということで決めてきています。

 やはり財源が必要で、Bリーグの場合はリーグのチケット売り上げの数パーセントを協会に納める仕組みがあるんです。男子代表の強化だったり、育成年代の普及発展、レフェリーを抱えるためにも費用がかかるわけです。

 そこはBリーグも大きく影響を受ける部分なので、Bリーグの成長発展に応じて納め、そこで有効活用してくださいというような関係性があるんです。Bリーグが成長発展したり、新しいアリーナができることによってお客様の数が増えたり、チケット収入が増えれば、そこの資金を使って財源にしていこうということなんです。

 何よりも今回、日本代表の活躍でこれだけ盛り上がりました。日本代表の盛り上がりというのは、協会の財政面を大きく変えていく力があるんです。ですから一過性に終わらせず日本代表の強化が安定的に進んでいけば、協会の財政状況は改善します。改善すれば男子、女子、3x3などの分け隔てなく強化策や待遇面の改善にも投資ができるんです。いまが非常に大事なところなので、日本代表の価値向上をしていくことがすごく大事だと思います。

■協会、リーグ、選手が一体となって進めていきたい

 日本代表がどうあるべきかという時に、大事なことはベスト・オブ・ベストのチームが組成されるという前提に立つのが日本代表だと思っています。

 今回いろいろな声をいただいた時に、代表に招集されるされないの選択権があたかもないかのような状況になっているが、それは選手が選べるようにした方がいいんじゃないか、という声も結構ありました。しかし、行きたい行きたくないの選択権の前に、やはり日本代表を強くするために努力をしているメンバーやコーチが、Bリーグや海外の試合を見て、このメンバーで行きたいと思うメンバーが集うべきだと思います。選択権うんぬんじゃなくて、日本代表ですから。元々日本代表の選手になりたいと思っている選手がいるはずだと思いますし、そういうチームを作るためにも、こういったルールが前提にあるんです。

 ただし、そんなことをしなくても誰もが絶対に行きたいと思えるような価値ある日本代表にできるように、我々としても努力をしていかなければいけないと思います。こういうルールがあり、日本代表はベストであるべき、だから皆さんにも参加していただきたいんですと。参加しなかった場合には、公平性の観点からペナルティのようなものはありますと。

 そこまで言う以上、ここで一つ重要になってくるのは、前提を整えていく必要があって、メディア露出を増やしてあそこ(日本代表)にいたいなと思うことであったり、強いチームを作ることによって誇りになることもそうですし、移動の際のビジネスクラスだったり、結果を出した時の報酬もそうでしょう。日本代表に選ばれるような選手の年俸が上がっていく構造もあってしかるべきだと思います。

 選手を送り出すクラブからすると、コンディションの面では怪我のリスクなどもあるでしょう。ではケガをした時にその選手をどうサポートしていくのかなど、いろいろなことを整備していく努力も怠ってはいけないと思っています。

 そういった体制をつくるには、どうしてもJBAの財源だったり、日本代表の価値を上げていくこととの相乗効果の中でやれることの範囲というのが大きく変わってくる。同時並行的に協会もリーグも選手もみんなで力を合わせて、ファンの皆さんに喜んでいただける状況を作って、市場から評価をされればされるほど、そこにまたサポートできるような財源も生まれてくるということなんです。どれかができれば全て解決することはないので、全方位体制で改革を進めて、皆さんの理解を求めながら前へ進んでいくことが大事なんじゃないかなと思います。

 今回は緊急特番的に代表招集、男子代表強化検討委員会の前提の説明も含めて配信をすることを決めましたが、今後も何かあった場合には、こういうイレギュラーな形で直接お伝えすることはしていきたいなと思っています。

 それが少なくとも今のBリーグのポリシーですし、バスケット界は賛否があったとしても、ちゃんと正々堂々とこのようにやっているということをお伝えすることをポリシーにしていきたいと思っています。皆さま、何卒ご理解いただければと思います。

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