2023.10.23
中国・杭州で行われたアジア競技大会で男子日本代表は、予選ラウンドで韓国に勝利する金星を上げながらも、最終順位は8位という悔しい結果に終わった。
ワールドカップで男子日本代表を率いたトム・ホーバスヘッドコーチが掲げるスタイルを、アジア大会で指揮を執ったコーリー・ゲインズHCが引き継ぎ、それをもとに戦った日本。予選ラウンドの大一番となった韓国戦では各自がやるべきことを遂行し、83−77で勝利。コートに出てくる選手がアグレッシブにディフェンスをして、17/41本(41パーセント)という高確率の3ポイントシュートを決めて試合を制した。
韓国は選手を数人温存した対応で乗り切ろうとしていたがその目論見が崩れた。また日本がこれほどまで3ポイントを打ってくることを想定できず、韓国代表のチュ・イルスンHCが「きめ細かな対応ができなかった」と、語るほどの悔しさの中でよもやの敗戦を喫した。
予選ラウンドを1位で通過した日本は出場決定戦が免除になり準々決勝へ直行。優勝候補の一角だった中国と準々決勝で対戦する組み合わせは避けられたものの、インサイドを固めてきたチャイニーズタイペイの前に完敗。明らかに韓国に勝ってからの日本は各国から研究され始め、思うような対応ができなくなっていた。これは国際大会の連戦において、経験のないチームが必ずぶつかる壁を味わった。
最も惜しかった試合は5−8位決定戦のサウジアラビア戦だ。2005年のアジア選手権以来の対戦となる未知の相手で、近年はアジアの大会で上位に進出していないチームだが、213センチのセンターとシューター数枚を擁した個の力の前に、終盤に猛追したものの5点差で敗れた。
7位決定戦は韓国との再戦。日本は平岩玄(アルバルク東京)に続いて佐藤卓磨(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)を負傷で欠き、リバウンドの要を失ったことでペースがつかめず後手に回る。韓国も負傷者が多く5人を欠いての試合になったが、この大会であまり出番のなかった若手がチャンスをもらって奮起。55−74で19点差がついて8位で大会を終えた。
この大会は「予選ラウンドで1位になること」「国際大会の経験を積むこと」「パリ五輪に向けた選考」という3つのテーマを掲げて男子日本代表は臨んだ。
1つ目は達成し、2つ目は「大会を通してやり続けるタフさはなかった」(今村佳太/琉球ゴールデンキングス)という壁に直面したものの、大会を通してはタイプの違うアジア勢と連戦する経験を積んだ。3つ目のテーマ「パリ五輪への選考」については、まさしく選手たちのモチベーションとなっており、ゲインズHCは全員に出場時間のチャンスを与えて競わせることに重点を置いて戦った。
「日本はインサイドにケガ人が出てしまったことで、どうしても高さの部分で対抗できずに負けてしまったことは残念。こういう試合で川真田(紘也/滋賀レイクス、ワールドカップで負った右手の負傷のためアジア競技大会欠場)に経験させたかったですね。けれども、3つのテーマは達成できた。若いチームだけどワールドカップに出た代表と同じくプライドを持って戦えたので、日本代表の選手層が厚くなったと思う」とゲインズHCは大会を総括した。
齋藤は司令塔として速いテンポを作り、チーム1位の平均4.7本のアシストを記録。今村は平均15得点で得点リーダーとなり、細川はチャンスに打ち続けてチーム最多の21本の3ポイントを決めた(21/63本、33パーセント)。3人ともにこの経験を「必ずやBリーグに生かす」という決意のもとで帰国している。
サウジアラビア戦は(不完全燃焼で終わった)チャイニーズタイペイ戦と違って出し切ったうえでの負けだったので、そういった意味では、この小さい選手しかいない中ではよく戦ったと思います。韓国に対しては予選ラウンドではやるべきことを遂行できましたが、順位決定戦では相手のゾーンをうまく攻めることができませんでした。またシュートを決められてしまうとリバウンドが取れず、ゆっくりしたテンポになってしまったことは反省です。
6試合を通しては、食生活やコンディションの調整面ですごく難しいことを実感したので、僕だけでなく、この若いチームにとって相当いい経験になったと思います。
世界に出ればインサイドのサイズが…とは言っていられません。通用したプレーもたくさんありましたが、正直なところ、ビッグマンのところで脅威になれないと、ポイントガードとして得意なプレーを出すことができなかったのは課題です。日本のようにビッグマンがいないときにどうするかを考えたとき、打開するためにはやっぱり個の力を磨かなければならないと感じました。
小さいガードでも戦えると証明したのが、個の力を持っている富樫(勇樹)さんや河村(勇輝)だと思うので、自分はこの経験をBリーグに持ち帰ってトライしていきたい」
国際大会はタフさに対応していかなきゃいけないので、そこができない時間帯が多かったのが非常に残念です。でも残念で終わらせてはならないので、Bリーグに戻って、アジア大会に出た選手がこの大会の反省をもとに戦わないと、日本のスタンダードは上がっていかないと感じています。
個人的には得点を取ることに関しては収穫がありました。アジアの中では自分のシュートは通用しましたし、アグレッシブにできたと思います。このチームでは年齢も一番上なのでリーダーシップを発揮することもできました。ただ、もっと若い世代を巻き込んで戦えばよかったという反省点が出ました。そういう、パワーが代表のようなチームには必要だということも学べました。
自分としてはすごくステップになった大会でした。ただ自分が求めているのはもっと上のステージなので、この経験をBリーグに還元して、日本のバスケットボールのスタンダードを上げていくことに貢献していきたいと思います」
自分自身としては初めての日本代表の大会で、得意とする3ポイントを打ち切ることはできました。ワールドカップ予選のWindow6に候補として呼ばれたのですが、12名には入れずに試合を見ているだけだったので悔しい思いがありましたし、それでも自分にもチャンスがあると思ってBリーグで頑張ってきました。
今回、アジア大会のメンバーに選ばれてうれしかったですし、自分は3ポイントという強みを出してチャレンジしようと臨みました。(三遠HCの)大野さんにも『思い切ってやってこい』と言われたし、ゲインズHCからも『どんどん打っていい』と言われていたので、外すことを気にせずに打てたことは良かったと思います。自分はシュートで選ばれているので、シュートを躊躇していたら選ばれた意味がないので、そこに関してはアピールできたと思います。ただ、サイズが大きなチームにどう戦うかという課題は残りました。
自分にとってはアジア大会が本当にいい経験になりましたが、これからステップアップするためには経験だけで終わらせずに、この経験をBリーグにつなげていきたいと思います」
文・写真=小永吉陽子
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