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『B MY HERO!』
「自分の感覚というか、今は私が思ったように動いていいという感じなので、東藤(なな子)たちがインサイドを突けるときは外に広がったり、(同じセンターの)白(慶花)さんと出ているときは私が4番をやったりしています。リーグ戦なので、いろんなことを試しながらやっていければいいなと思っています」
10月に開幕した第24回Wリーグ。トヨタ紡織サンシャインラビッツの河村美幸は、ここまでの6試合をこう振り返った。
河村は、桜花学園高校(愛知県)を卒業後、シャンソン化粧品シャンソンVマジックで6シーズンプレーしたのちにトヨタ自動車アンテロープスへ移籍。3シーズン在籍したトヨタ自動車では2度のWリーグ優勝を経験した。
そして今シーズン、「昨シーズンはケガもあってあまり試合に出られなかったのですが、体もまだ動くと思っているので、一回リセットして下から這い上がってみようと思いました」と、移籍を決断した。
河村に話を聞いたのは、11月6日の東京羽田ヴィッキーズ戦の後。この試合は、接戦の展開の中、終了間際に東京羽田に逆転シュートを許してトヨタ紡織が今シーズン初の黒星を喫した試合でもあった。
「シュートが入らないときにディフェンスも同じリズムというか、シュートが入らないことを引きずってしまったところがありました。得点も60点にいかなかったし、良くなかったと思います」と、試合を振り返った河村は、こうも続けた。「今日の試合では、みんなが『どうしよう、どうしよう』ってコーチの方ばかり見ていたので、もう少し私が落ち着かせる声がけをしないといけなかったなと思います」。
だが、そう語る表情にはそれほどの悲壮感はない。
「リーグ戦なので、一つの負けを引きずらないこと。(負けて)落ち込んでいる選手もいますが、しっかり(プレーオフ出場枠の)8位以内に入って、そこからが本当の勝負ですから」
長いシーズンだからこそ、敗戦を受け止めながらも過剰に反応することはないということだろう。「トヨタ自動車だって(シーズン中は)負けてますからね」と、笑顔で語る姿には頼もしささえ感じさせた。
トヨタ紡織は、年々力をつけているチームだが、ベスト4に入ったのは昨年の皇后杯のみ。主軸を担う選手は若手が多く、東京オリンピックに出場し、今や日本代表のコアメンバーともいえる東藤もまだ21歳だ。そのため、日本代表の経験もありベテランの域にも入ってきた28歳の河村は,これまでチームにいなかったタイプの選手。それだけに、河村の加入で、トヨタ紡織への期待の声はさらに高まった。
だが、「周りから『勝てる』と言われるのですが、昨シーズンがそこまで良かったとか、強かったというわけではないと思うし、私一人入ったところでそんな勝てるような甘い世界ではないと思います」と、河村はやはりここでも冷静だ。
「トヨタ自動車のときよりは、自分自身も得点を取らないといけないと思っています」という河村は、6試合を終えて1試合の平均得点は9.5点。5〜6得点だったトヨタ自動車時代の数字をすでに上回っている。また、スクリーンや体を張ったディフェンスなど数字に現れない貢献もこれまでと変わらない。オフェンスでもフロアバランスを見ながらアシストにつながるパスなどを配給し、チームにリズムを生み出している。
「年下の選手たちをサポートするという役割はトヨタ自動車でも移籍先のチームでも変わらず意識してやろうと思っていたこと」と、若手選手を引っ張ることも自身に課せられた役割だと受け止める河村。
「勝ち方を伝えていきたいです」と、語るキャリア豊富なセンターは、その挑戦を粋に感じながら、新天地での戦いを楽しんでいる。
取材・文=田島早苗