2022.11.09

東京羽田のエース・本橋菜子が一戦に懸けた思い…「気持ちの入り方が違っていました」

今季初白星を手にした東京羽田/写真は10月21日の富士通戦のもの[写真]=W LEAGUE
中学や高校、大学などの学生バスケットをはじめ、トップリーグや日本代表と様々なカテゴリーをカバー。現場の“熱”を伝えるべく活動中。

「試合前から気持ちの入り方が違っていました。プレータイムが制限されている中、出た時間で貢献しようという思いは変わらず持っていたのですが、でもやっぱり、もっともっと(チームを)引っ張りたいなというのを感じていたので、気合いを入れて試合に臨みました」(本橋菜子)

 11月6日、前日に続いてトヨタ紡織サンシャインラビッツと対戦した東京羽田ヴィッキーズは、第1クォーターこそ11点のビハインドを負ったものの、第2クォーターで猛追。その後は、終盤までもつれる展開の中、最後は鷹のはし公歌の試合終了間際の3ポイントシュートで劇的な逆転勝利を飾った。

 この試合、決勝点となるシュートを決めた鷹のはしや、積極的な攻めが光った水野菜穂、体を張ったディフェンスとボックスアウトを一試合を通して貫いた尾崎早弥子など、殊勲の働きを見せた選手は多い。

 もちろん、司令塔の本橋もその一人。「自分で行けるときは行こう、チャンスを見逃さずに攻め気を持ってやろうと思っていました」と、バックアップのガードとして約18分半の出場で15得点6アシスト1スティールをマークした。また、数字だけでなく、大事な場面での得点や緊迫した状況での落ち着いたゲームメークは、さすがはエースと感じさせるものだった。

限られた出場時間でも存在感を発揮した本橋/写真は富士通戦のもの[写真]=W LEAGUE

 本橋は、2020年11月に負った右膝靱帯損傷の影響で、今はまだプレータイムに制限がある。「大きな問題はないのですが、(ケガから復帰した)咋シーズンの途中に足を痛めて試合に出られなくなったことがあったので、ヘッドコーチとコミュニケーションを取り、無理はしないということで調整しながら練習や試合をしています」という。

 ただ一方で、「でも、無理してやらなきゃなって」と、本音も。それにはこんな思いがある。

「ところどころ痛みは出たり、試合中の捻挫もあったりするのですが、それを言い訳にはしたくない。なんか、『しょうがないかな』って思い始めていたところがあって。この状況と付き合っていくとこういう感じになってしまうのかな? と自分の中で甘えがあったと思うんですね。でも今はしょうがないでは済ませたくない、何が何でもコートでしっかり引っ張っていきたいと思っています」

 もちろん、足の状況を考えながら今後も無理はしないだろう。だが、チームは開幕から5連敗ということもあり、無理をしてでも勝ちたいという思いは本人も強かったはずだ。

 試合中、萩原美樹子ヘッドコーチはここぞの場面でベンチにいる本橋をコートへと送る。萩原HCは、本橋が早稲田大学在学中に同校の指揮官を務めており、インカレ優勝の喜びも一緒に味わった仲。本橋自身も「信頼して出してくれているというのは感じます。私が大学のときからの付き合いだし、私も(萩原HCを)信頼しているので、任されたらそれに応えたいと思っています」と、言う。

 限られた時間の中で、その期待にしっかりと応えた本橋。この試合では、今シーズンより加入した明星学園高校(東京都)の後輩である水野の存在も大きかったようで、16得点と気を吐きながらも、終盤にフリースローを3本落としたことに、「これで負けたら(水野が)責任を感じるだろうなと思ったので、何としてでも勝たないとという思いはありました」と語った。

激闘の末、トヨタ紡織に今季初黒星を与え、貴重な勝利をつかんだ/写真は富士通戦のもの[写真]=W LEAGUE

「コンディションは悪くはないので、気持ちの作り方を後半戦は変えていきたいと思っています。今日のようにもっと引っ張っていけたら。私はチームメートを信頼してるので、任せられるところは任せるという考えを持ちつつ、もっと自分がやるんだという気持ちも前面に出していきたいです」と、12月から再開するWリーグに向けて意気込みを語った本橋。

 スターターでも、バックアップでも、自らの役割を果たす仲間思いのエースは、やっぱり頼もしい。

取材・文=田島早苗

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