2024.04.12

頂上決戦で初対戦の富士通vsデンソー…勝負を分けるキーポイントは?【Wリーグ ファイナル展望】

[写真]=Wリーグ
フリーライター

■ 両チームのセミファイナルでの戦いぶりは?

 昨年の10月14日から始まった第25回Wリーグもいよいよファイナルを残すのみとなった。

 4月6~8日の期間で行われたプレーオフのセミファイナル(2戦先勝)を経てファイナルへと勝ち上がったのは富士通レッドウェーブデンソーアイリス。両チームのセミファイナルでの戦いを振り返ると、富士通はシャンソン化粧品シャンソンVマジックを相手に第1戦は30得点の宮澤夕貴、17アシストの町田瑠唯らの活躍で73-59と勝利。だが、続く第2戦では序盤に奪ったリードを守り切れず70-71で競り負けてしまう。しかし、第3戦ではスタートダッシュに成功すると、第2戦の反省を踏まえ、コートに立った選手たちが40分間高い集中力を発揮。最後まで試合の主導権を握り、93-72で2シーズンぶりのファイナル進出を決めた。

 一方のデンソーは、セミファイナルでは前回覇者のENEOSサンフラワーズと対戦。第1戦では渡嘉敷来夢を中心に攻めるENEOSに対してゾーンディフェンスなどを駆使して失点を抑えると、攻めては髙田真希赤穂ひまわりらで得点。最終的には4名が2ケタ得点とバランスの良い攻撃で1勝目を挙げた(77-58)。ファイナルに王手をかけて臨んだ第2戦は、後のないENEOSに開始約1分で0-5と先行を許したが、馬瓜エブリンらが踏ん張り、すぐにタイに戻す。赤穂(ひ)が24得点など、それ以降もコンスタントに加点したデンソーがENEOSを突き放し、82-66で2連勝を飾った。

レギュラーシーズンでは11月に対戦していた富士通とデンソー[写真]=Wリーグ


 最終的にはレギュラーシーズン1位(富士通)と2位(デンソー)が決勝の舞台にコマを進めることになったが、昨年11月中旬にあったレギュラーシーズンでの直接対決は1勝1敗。1戦目は髙田が25得点11リバウンド、馬瓜が16得点を叩き出したデンソーが73-59で勝利し、2戦目は富士通が第4クォーターに一時逆転を許しながらも、終盤にフリースローで着実に点を重ねて、62-59で競り勝っている。

 レギュラーシーズンでの1試合平均得点は79.81と全14チームの中で一番の数字を残すデンソー。富士通は77.23点と全体5位ではあるものの、1試合平均の3ポイントシュート本数は8.46本と群を抜く。攻撃の特長こそ異なるが、ディフェンスでは1試合平均失点がデンソーが57.69点の1位で、61.81点の富士通は2位。どちらもディフェンスに定評があるだけに、相手の良さを消すような防御も勝敗を左右しそうだ。

■ 東京五輪銀メダリスト6名がファイナルの舞台へ

(左から)富士通の宮澤、町田、林、デンソーの髙田、馬瓜、赤穂ひ[写真]=Wリーグ


 この2チームには富士通は町田、宮澤、林咲希、デンソーには髙田、馬瓜、赤穂(ひ)とそれぞれ3名、東京オリンピックの銀メダリストが所属している。もちろん、3人ともにチームの中心で、富士通は司令塔の町田が安定したゲームメークを披露し、宮澤と林は外角シュートを武器とする。対するデンソーの3名は全員オールラウンダーで体の強さもあり、リング下の得点、リバウンドで優位に立つ。破壊力は抜群だ。

 この6人が自チームを引っ張る中、ファイナルでカギを握る存在として注目したいのはバックアップの選手たち。富士通は、セミファイナルの第2戦こそバックアップメンバーが出場している時間帯にシャンソン化粧品の追い上げに遭ったが、続く第3戦ではガードの赤木里帆をはじめ、センターの藤本愛妃や中村優花らが奮起。「(第3戦は)ベンチメンバーの活躍が大きいです。プレータイムは短くてもターンオーバーをしない、積極的にプレーする、ペイントアタックするということが大きかったです。今日のようにポジティブにプレーしてくれれば富士通の強さがもっと出てくると思います」と、BTテーブスヘッドコーチが言うようにファイナルに弾みを付けるプレーを見せた。

ファイナルでも活躍が期待されるデンソーの赤穂さくらと富士通の藤本愛妃[写真]=Wリーグ


 対するデンソーは、「スターターとは役割が少し違っていて、(試合に)出たときには流れを変えなくてはいけないと思っています」と、今シーズンはベンチスタートとして役割をこなし、ベスト6thマンを受賞したセンターの赤穂さくらが堅実な働き。またベテランの本川紗奈生に、勢いをもたらす渡部友里奈、高橋未来らアウトサイド陣も頼もしい存在だ。彼女たちの献身的なプレーがチーム力を強固なものにしている。

 いずれにせよ、ファイナルはよりタフな戦いが予想されるだけに、2チームともにスターターからベンチメンバーまで総合力で挑みたいところだ。

 富士通が勝てば2007-08シーズン以来16年ぶりの優勝。デンソーが勝てば初優勝で、昨年12月の皇后杯と合わせて2冠獲得となる。Wリーグのファイナルでは初顔合わせの両チーム。注目の第1戦は4月13日の14時にティップオフを迎える。

文=田島早苗