2023.09.23
日本代表活動終了後、ギリシャリーグへの移籍を発表したオコエ桃仁花。海外でのプレーを志向していたオコエが日本を離れた理由、そして、どのような環境でプレーしているのかを直接本人に聞くことができた。チームから厚い信頼を得て、充実した環境に身を置く現状をお知らせしよう。
取材・文=田島早苗
取材協力=㈱Athlete Solution
――まずギリシャリーグへの移籍を決めた理由を教えてください。
オコエ 以前から、海外でプレーしたいという思いは持っていました。移籍先を今のチームに決めたのは、ヘッドコーチとオンラインでミーティングを行ったときに、プレー面に加えてバスケットの考え方や姿勢も高く評価してくれたことが大きいです。1年目は、そういった指揮官のもとでプレーしたいと思いました。あとは、確実にプレータイムがもらえることも決めた理由の一つです。
――プレースタイルにはフィットしてきましたか?
オコエ 前から当たってプレッシャーディフェンスをするチームなので、そこは日本のチームと似ていると感じます。ただ、こっちにきて感じたのはセットプレーが多いこと。日本ではブレイクからの攻めも多いのですが、こっちではセットプレーでいかに(ディフェンスを)崩して得点するか。ほとんどセットプレーなので、セットプレーの遂行力が大事になると思っています。
それと、日本では味わえないようなフィジカルの強さも感じています。危ないシーンも結構あるのですが、日本の弱みがフィジカルだと思うので、常に激しいぶつかり合いができる環境は、成長につながると感じています。
――ギリシャでの練習がある日のスケジュールは?
オコエ 朝7時半から9時半まで基本はウエイトトレーニング。ウエイトではなくシュート練習の日もあります。チーム練習は夜19時半から21時半。個人的には全体練習後にシュート練習をすることも多いです。ある程度シュートを練習しないと不安になるので。チームには日中、学校に通っている選手もいます。
――試合会場の雰囲気や体育館事情などは?
オコエ 試合は1週間に1回で、基本はバス移動。試合が終わったら割とすぐに家に着きます。
ファンは熱狂的で、ブブゼラが鳴っていたり、発煙筒を持っていたり。毎試合、アリーナの外には警察がいます。アリーナはその時々で規模が違いますが、床が滑ることも多く、日本では、どれだけキレイで素晴らしい体育館で試合ができていたのかを実感しています。
――タフな環境なのですね。
オコエ チームには(常勤の)トレーナーがいるわけではなく、テーピングも充実していない。すべてにおいて日本は環境に恵まれていて、そういった環境は当たり前ではなかったと感じます。
すべてを自分でやっているので、日本にいたときよりも体と向き合っているし、ケガをしたら自分でどうにかしなくてはいけない分、ケガをしない体作りも心がけています。ストレッチも念入りにやっていますね。
――食事は?
オコエ スポンサーのレストランで食べることができます。でも、毎日というわけにもいかないので、今はほとんど自炊です。1試合30〜40分近く出るので、その出場時間で常に力を発揮するためにはどのくらい食べたらいいのかといったことも徐々に分かってきました。自炊するようになってから自分の体のことをもっと知るようになりましたね。
――バスケットについて日本との違いなど感じることはありますか?
オコエ コミュニケーションの取り方ですね。日本はどちらかというと静かで、発言を遠慮しがちだけれど、こっちはコーチが話をしてようが、「私はこう思うんです」とか「質問いいですか」とか、年齢関係なく発言する。そこは日本の課題でもあると思うので、日本代表では今まで以上にコミュニケーションを取れるような環境にできればいいなと思っています。
――プレーでヘッドコーチから求められていることは?
オコエ 得点です。それと、リバウンドを取ったら自分でプッシュしてリングまで行っていい、起点となってボール回しなどもしてほしいと言われています。私が(最後に)シュートを打つナンバープレーも多いので、やりがいを感じています。
――得点パターンは様々なわけですね。
オコエ はい。3ポイントシュートだけでなく、インサイドや外からドライブもあります。
私、日本にいたときに自分の強みが分からなかった時期があって。ドライブもできるし、3ポイントシュートも打てるし、ポストプレーもできる。だからこそ、すべてが中途半端に感じ、そういう自分が嫌だったんです。みんなあるじゃないですか、強みが。キキさん(林咲希/ENEOSサンフラワーズ)なら3ポイントシュートとか。
それでも、東京オリンピックに向けて3ポイントシュートを磨き上げ、強みは3ポイントシュートだと知ることができました。ただ、東京オリンピックでアメリカと決勝を戦ったときに、3ポイントシュートだけでは戦えないことも実感して。それで改めて自分の強みを考えたときに、『何でもできるのが強みだ』と再認識しました。
ヘッドコーチも、チームメートに「モニカはなんでもできる」って言うんです。チームメートからも「コンボ選手だよね」と言われるし。日本ではそんなこと言われたことがなかったので、海外で私はそう見られているというのは新たな発見でした。
――様々な経験を積んでいますね。
オコエ 私は外国籍選手という立場。チームを勝たせないといけないので、より一層チームの勝利を考えますし、責任もヒシヒシと感じています。
合流した翌日に試合に出たのですが、そのときは負けてしまったんです。そうしたら2人のアメリカ人選手がすごく落ち込んでいて。(移動の)バスの中でも話をしないぐらい責任を感じているのを見て、すごく学びになりました。プロですし、自分への評価は結果で付く。今は自分が点を取ることでチームに貢献するという意識は強いです。
――正直、行く前はギリシャリーグのレベルに関して未知数なところがあったと思うのですが、それでも海外に挑戦することで日本では得られないものを得たいという思いは強かったのですか?
オコエ ヨーロッパはバスケットのレベルが高いし、強い。どのチームも力があると思うんです。(代表の)世界ランキングを見ると日本の方が上ですが(日本9位、ギリシャ17位/10月1日現在)、ヨーロッパは、代表戦でも1回戦からタフなゲームが行われている。世界ランクというよりは、日本では味わえないことを体感できるし、オリンピックやワールドカップで結果を出すためにも、日常を世界基準にしなくてはいけないと思いました。私は日本ではフィジカルが強い方ですが、さらにそのレベル上げたいとも思ったので、それなら海外に出るべきだと考えましたね。
人生はすべて意味があると思ってるので、今回、今のチームが呼んでくれたのも大きな一歩だと思っています。
――ヨーロッパで戦うことの価値は大きいと。
オコエ ヨーロッパでは、常にスカウトやエージェントが試合を見ていて、アメリカのWNBAともつながりがあります。活動拠点をヨーロッパに置くことで、自分のプレーをいろいろなチームから見てもらえると思っています。
――さて、今シーズンのチームの目標は?
オコエ 『自分たちのバスケットをする』です。これ、私も聞いたときに少し驚いたのですが、日本は『優勝』や『ベスト4』といったように目標は数字や結果を挙げることが多いですよね。でも、海外は違うのかなと。ただ、こういった目標の立て方も大事だとは思います。
――個人の目標は?
オコエ ギリシャリーグについて手探りの状態ですが、外国籍選手として結果を出すという責任感を持ち、チームが勝てるようなプレーをしたいです。まだ遠慮するところがあって試合後に後悔することもあるので、海外の選手を見習って積極性のあるプレーしていきたいです。
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