2020.02.11

車いすバスケ女子日本代表、強豪イギリス相手に実力発揮できず黒星

“大阪カップ”の前哨戦として、日本はイギリス代表と対戦した[写真]=斎藤寿子
新潟県出身。大学卒業後、業界紙、編集プロダクションを経て、2006年よりスポーツ専門ウェブサイトで記事を執筆。車いすバスケットボールの取材は11年より国内外で精力的に活動を開始。パラリンピックは12年ロンドンから3大会連続、世界選手権は14年仁川、18年ハンブルク、アジアパラ競技大会も14年仁川、18年ジャカルタの各大会をカバーした。

 2月14日から16日の3日間、丸善インテックアリーナ大阪では「国際親善試合女子車いすバスケットボール大阪大会」(大阪カップ)が開催される。その前哨戦として10日、女子日本代表は事前キャンプですでに来日しているイギリス代表と浦安市運動公園総合体育館で練習試合を行った。

合宿の成果が見えた第1クォーター序盤

 2018年の世界選手権で銀メダルを獲得し、昨年の東京パラリンピック予選を兼ねて行われたヨーロッパ選手権でも銀メダルという成績を残しているイギリス。現在、女子車いすバスケ界で女王の座に君臨しているオランダとともにヨーロッパを代表する世界有数の強豪国だ。

 今回の顔ぶれはフルメンバーではなく、若手に経験を踏ませる意味合いも込められたチーム編成となっており、人数も8人と“少数精鋭”で来日。それでもチーム一の得点源であるエースのエイミー・コンロイと、ゲームコントロールに長けたベテランのヘレン・フリーマンを中心に、連携のとれた安定感抜群のチームプレーを披露。ともに21歳という若さながらも、すでに主力となっているシャルロット・ムーアとジョイ・ヘイゼルデンのローポインター陣もスピードがあり、日本のハイポインター陣相手にも堂々のプレーを見せた。

 一方、昨年のアジアオセアニアチャンピオンシップス(AOC)で強豪の中国とオーストラリア相手に、勝利まであと一歩というところで敗れ、悔しい思いをした日本。今年に入って2度の合宿で、さらなる強化を図ってきた。

 この日のイギリス戦で、その成果が最も示されたのは、第1クォーターの序盤だった。アウトサイドでボールを持ったハイポインターを警戒する相手の隙を狙ったピック&ロールで、ローポインターの北間優衣やミドルポインターの清水千浪がカットインをしてゴール下へ。さらに全員が積極的にアタックして相手を引き付けることでアウトサイドからのシュートシーンも作りだした。

 しかし、この日の日本のシュートはことごとくリングに嫌われ、チャンスメイクはするものの、得点は伸びなかった。前半は守備で粘りを見せ、イギリスに食らいてついていくも、シュートが入らないことで攻守ともにリズムに乗り切れず、後半に一気に引き離された。最後まで負のスパイラルから抜け出すことはできず、25-67で敗れた。

試合終盤に見せた若手の好プレー

 それでも第4クォーターの終盤には、ベンチスタートの若手が好プレーを見せた。この試合、プレータイムはわずか10分足らずだった財満いずみ。だが、持ち点1.0のローポインター財満が相手のビッグマンの動きを止めた好守備は、彼女のチェアスキルの高さを示すには十分だった。また、日本の最後の得点を決めたのは、チーム最年少の柳本あまねだった。柳本はチームの鬱憤を晴らすかのように、この日両チームで唯一の3Pを鮮やかに決めてみせた。

 試合後、岩佐義明HCはこう語った。

「これだけイージーシュートを外していたら、こういう展開になるのは当然。とにかく今日は走れていなかった。ただ、日本の力はこんなものではない。もう一度、整備をして、大阪カップに挑みたいと思います」

 この日、日本は最大の強みとするオールコートのプレスディフェンスはほとんど見せず、課題としてきたハーフコートのディフェンスにトライした形だった。それは相手も百も承知だ。ほぼ完勝に近い勝利を挙げたイギリスのダニエル・プライスコーチも「日本はまだ強さを持っている」と警戒心をあらわにした。

 東京パラリンピックまで半年と迫った中で行われる大阪カップは、本番まで公式戦がない両チームにとっては貴重な実戦の場となる。果たして日本は、何をつかんで3大会ぶりとなる“世界最高峰の舞台”へと歩んでいくのか。3日間にわたって行われる“大阪の陣”に注目したい。

文・写真=斎藤寿子

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