2025.03.31

NBAヨーロッパ計画が大きく前進「準備は整った」FIBA幹部の横でコミッショナーが宣言

NBAコミッショナーのアダム・シルバー[写真]=Getty Images

■夢の計画に動き

 NBAのコミッショナーを務めるアダム・シルバーは、NBAがヨーロッパに新リーグを設立する可能性について「検討する準備は整いました」と発表した。

 NBAがヨーロッパに進出する――これは噂が出回ったタイミングではあまりにも壮大な計画のため、様々な観点からの考察により、遥か遠い夢物語として扱われていた。しかし、その後もリーグは水面下でプランニングを進行。また、シルバーも度々、公の場でヨーロッパにおけるビジョンについて具体的な検討事項に言及しており、先日シャキール・オニール(元オーランド・マジックほか)のPodcastに出演した際には「私の後任者の仕事になるかもしれませんが、ヨーロッパにNBAチームが誕生する未来は想像に難くありません」と、力強いコメントを残していた。

 しかし、今回はその計画が大きく前進したと考えられる。その理由は、シルバーの発表がリーグの理事会との会議直後であったこと、そして、記者会見の場にFIBAのアンドレアス・ザグクリス事務総長が同席していたからだ。

 シルバーはこの度の記者会見において、計画が前進することの喜びを露わにしている。

「本日、私の同僚であるアンドレアス(・ザグクリス)と共に、次のステージに進む準備ができたことを発表できることを嬉しく思います。FIBAをパートナーに迎え、ヨーロッパでのリーグ創設を探るフェーズに突入します」

 FIBAはもちろんのこと、シルバーはNBAのチームオーナーたちからも「熱烈な支持を受けた」と述べており、この計画が全方位から大きな後押しを受けていることを強調した。一方で、具体的なリーグ構造については「合意に至ったものは何もない」とし、冒頭のコメントにあるとおり、協力者からの大筋の同意が取れた段階であることが判断できる。

■元NBA選手が橋渡し役に

欧州バスケ最高峰の舞台であるユーロリーグ[写真]=Getty Images


『Front Office Sports』によれば、ヨーロッパでの新リーグは、ヨーロッパスポーツの伝統とNBAが融合したものになるという。

 NBAは欧州進出にともない、ヨーロッパバスケットボールのあり方を尊重したリーグづくりを検討する見込みだ。具体的には、試合時間は1クォーター10分の40分形式(NBAは48分)でFIBAと同様のシステムを採用することや、プロサッカーリーグと同様のオープンリーグ形式でディビジョン制度を設け、シーズン成績を通じて球団の昇降格制度を導入する可能性を示唆している。このような検討事項について、シルバーは「ゼロからリーグを設計する機会には、双方のシステムの良い部分を取り入れることを検討します」と説明しており、サラリーキャップを取り入れる可能性も示唆している。

 会見では曖昧な返答に止まったものの、やはり気になるのはリーグ構成だろう。現状では、固定された12球団に4つの予選枠を設け、合計16チームの運営が想定されているという。

 そして、最大の関心は、世界で2番目に大きなバスケットボールリーグであるユーロリーグの強豪がNBAの新リーグに参戦するか否かだ。シルバーは「現在、既存のヨーロッパクラブの関心を調査している最中です」としたものの、『The Athletic』はスペインのレアル・マドリードとバルセロナ、フランスのアスヴェル・バスケット、トルコのフェネルバフチェ・イスタンブールに、新リーグ参加の可能性があると伝えている。特に、アスヴェルはトニー・パーカー(元サンアントニオ・スパーズ)が球団オーナーを務めており、パーカーは本件においてNBAとの橋渡し役として交渉に関わっていると報じられている。

母国でクラブオーナーを務める元NBA選手のトニー・パーカー[写真]=Getty Images


 また、新規フランチャイズを設置する可能性として、ロンドン、マンチェスター、ベルリン、ミュンヘンを検討しているほか、フランスサッカーの強豪パリ・サンジェルマンのオーナー企業である「カタール・スポーツ・インベストメンツ(QSI)」については、広報担当者より「バスケットボールフランチャイズに関心を持っています」との声明が発表されており、パリにも新球団が設立されるかもしれない。

 懸念事項は、ユーロリーグとの共存関係だ。『The Athletic』は、FIBAとユーロリーグが長年、代表戦の日程やリーグの運営方針で対立を続けており、FIBAのザグクリス事務総長は「我々はバスケットボールのエコシステムを統合しようとしている」と解決策を模索する姿勢を示している。

 一方で、シルバーはマーケティングの側面からもヨーロッパ市場の潜在能力をかねてより高く評価しており、新リーグの設立が経済的に不安定とされる欧州バスケットボール界を活性化する機会になると考えている。

 NBAヨーロッパは、大きな一歩を踏み出した。前例のないスポーツリーグが、バスケットボールから誕生する日はそう遠くないのかもしれない。

文=Meiji

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