2018.04.15
3月26日(現地時間25日)、インディアナ・ペイサーズがマイアミ・ヒートにオーバータイムの末113-107で勝ち、プレーオフ進出を決めた。ホームのバンカーズ・ライフ・フィールドハウスで行われた同試合、オーバータイムでペイサーズに得点が入るたび立ち上がって見ていた観客は、両手を上げ、歓声を上げた。そんな中、ペイサーズの選手たちはのびのびと自信に満ちたプレーを披露し、5分間で17得点を奪って試合をものにした。
開幕前には、このような結果を予想している者は少なかった。理由は明らか。7年間チームを支えたスター選手、ポール・ジョージ(現オクラホマシティ・サンダー)がトレードで去ったからだ。ペイサーズはその代わりに、かつてインディアナ大学のスターだったビクター・オラディポをドマンタス・サボニスとともに得たが、オラディポがリーダーとしてチームをプレーオフに導ける選手だとは、誰もまだ思っていなかった。その実績がなかったのだから、仕方のないことだ。
しかし試合後、ペイサーズのネイト・マクミランヘッドコーチは、「我々はクローザーを見つけた。ビック(オラディポ)は自らが試合を締めることの出来る選手だと証明した。彼がいなければ、我々はこの位置にはいなかった」と誇らしげに話した。
オラディポ自身、サンダーからトレードされたと聞いた時はショックを受けたという。しかし「すぐに立ち直った」とあっさり。「ジムに行ったんだ。単純なことさ」と、さらりと言ってのけた。
オラディポにはこのオフ、他チームに放出されたことを悲しむより、もっと大切なことがあった。自らが目指す「偉大な選手」になるために努力することだった。「技術に関しては、すべてを少しでも向上させるようにした。それに加えメンタリティー、ボディを合わせて全体的にレベルアップできるよう努めた」とオラディポ。そのトレーニングには食事制限も含まれた。すべての小麦粉、精糖、乳製品を断ち、毎日1ガロン(約3.8リットル)の水を飲むという厳しいものだった。多くの選手は途中で挫折するそうだが、オラディポはそれをやりとおし、普通の選手なら2カ月でやり遂げるトレーニング以上のことを3週間で終えた。「ジャンクフードとか、食べたいと思う状況自体を避けた」とトレーニング中を振り返るオラディポ。「それらのトレーニングがハードだとは思わなかった。偉大な選手になれるためなら何でもする」と厳しい眼差しで話した。
瞬く間にペイサーズの看板選手となり、オールスターとなった。そんなオラディポがインタビュー中繰り返し口にした言葉がある。
「まだまだだ」
プレーオフの舞台でも、きっとこんな気持ちでプレーし続けるだろう。そして、「偉大」に近づく鍵は、そこにある。
文=山脇明子
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