2018.06.01

今日は何の日? 19年前、スパーズのエリオットが逆転3Pを沈めて劇的勝利へ導く!

スパーズ史上有数の万能戦士エリオット[写真]=Getty Images
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「俺にはあと一発、球が残ってる」

 今からちょうど19年前、1999年6月1日(現地時間5月31日)。サンアントニオ・スパーズの名スナイパー、ショーン・エリオット(元スパーズほか)がスパーズ史上屈指の劇的ショットを決めた。

 毎年5月最後の月曜日をアメリカでは“メモリアル・デイ”と称され、祝日とされている。「戦没将兵追悼記念日」とし、戦争や軍事行動で亡くなられた米国の男女、兵士を追悼する日となっており、99年の5月最終の月曜日は31日だった。

 98-99シーズンのNBAは、ロックアウトにより、50試合の短縮シーズンとなった。このシーズン、ウエスタン・カンファレンス・ファイナルまで勝ち進んだチームは、97、98年と2年連続でファイナル進出を果たしたユタ・ジャズをウエスト準決勝で下したポートランド・トレイルブレイザーズと、悲願の初優勝に燃えるスパーズ。

 アイザイア・ライダーやデーモン・スタッダマイヤー、ブライアン・グラント(いずれも元ブレイザーズほか)にラシード・ウォーレス(元デトロイト・ピストンズほか)といった若く身体能力の高い選手を豊富にそろえるブレイザーズに対し、スパーズはティム・ダンカンとデイビッド・ロビンソン(共に元スパーズ)による“ツインタワー”を中心にインサイドを支配するスタイルで勝ち上がってきた。

 シリーズ初戦はダンカンとロビンソンで計42得点23リバウンド5アシスト6ブロックの大暴れでスパーズが先勝するも、第2戦はブレイザーズが主導権を握る。試合開始からリードを奪い、4選手が2ケタ得点を挙げるバランスの良さでスパーズに的を絞らせないオフェンスを展開。

 それでも、ホームのスパーズは徐々に追い上げ、残り12.0秒で83-85と2点差まで詰め寄った。

 この日のエリオットは絶好調。この時点で6投中5本の3ポイントシュートを決めるなど19得点を挙げていた。タイムアウトのハドルの中で、エリオットは大一番に強いクラッチシューター、マリオ・エリー(元ヒューストン・ロケッツほか)に対してこう語ったという。当時の状況をエリーが明かす。

 「俺たちはハドルの中で、いくつかのオプションについて話していた。するとショーンが俺を見て、『俺にはもう一発、球が残ってる』と言ってきたんだ。彼がボールを欲しがっていること、そして彼にはもう1つの球(ショット)があるとわかったんだ」。

 タイムアウト明けのポゼッション。スパーズはエリーが右コーナー付近へスローインすると、ロビンソンのスクリーンから右コーナーにエリオットが向かう。するとエリオットは、そのパスをスティールしようとしたステイシー・オーグモン(元アトランタ・ホークスほか)をかわし、コートぎりぎりの位置で1ドリブルして態勢を立て直し、つま先立ちで3ポイントシュートを放った——。

コートサイドぎりぎりのエリアから長距離砲を放ったエリオット[写真]=Getty Images

 オーグモンがかわされ、211センチの長身ウォーレスが懸命に腕を伸ばしてブロックを狙うも、エリオットの右腕から放たれたショットは高い放物線を描き、吸い込まれるかのようにリングを潜り抜けていく。

 エリオットのショットが見事に決まり、残り9.0秒でスパーズが86-85と逆転。この試合、この土壇場でスパーズが初のリードを手にした。するとスパーズは、ブレイザーズ最後のポゼッションを自慢のディフェンスで死守して劇的勝利。

スパーズを初優勝へと加速させたエリオットの一発

 エリオットはこの試合、(7投中)6本目の長距離砲をさく裂させて計22得点。殊勲の活躍を見せた名スナイパーは、「今日は試合をとおして良い感触だった。誰でも、ミスする気がしない状況になるときがあるよね」と語り、喜びを爆発させた。

エリオット(右端)が決めた一発は、ブレイザーズを撃沈させたばかりでなく、戦意さえも喪失させるほどの威力を誇った[写真]=Getty Images

 「あの勝利が、我々にかつてないほどの自信を与えてくれた」とエリオットが語ったとおり、スパーズはアウェーで行われた第3、4戦で2ケタ点差をつけてブレイザーズに快勝。ウエスト決勝をスウィープで突破し、チーム史上初となるNBAファイナルまで勝ち進んだ。

 ファイナルの相手は、史上初となる第8シードから並み居る強豪を打ち負かしてきたニューヨーク・ニックス。ラトレル・スプリーウェル、アラン・ヒューストン(共に元ニックスほか)を中心にラン&ガンで攻めたててきたものの、縁の下の力持ちとしてインサイドに構えていた元オールスターセンター、パトリック・ユーイング(元ニックスほか)をケガで欠いたニックスは、スパーズを倒すには荷が重すぎた。

 第5戦終盤にエイブリー・ジョンソン(元スパーズほか)が決勝弾を沈め、スパーズが記念すべき初優勝を達成。この年のスパーズにはダンカン、ロビンソンというリーグ有数のビッグマンに加え、ジョンソンやエリーといったベテラン陣がいたものの、チーム最高のオールラウンダーだったエリオットも初優勝に不可欠な存在だったことは間違いない。

 特に、メモリアル・デイで沈めたエリオットのミラクルショットは、スパーズを初優勝へと一気に加速させたと言っても過言ではない。

99年に初優勝したスパーズ(左からエリオット、グレッグ・ポポヴィッチHC、ロビンソン、ダンカン)[写真]=Getty Images

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