2023.04.30

上位チーム撃破で実現したニックスとヒートによる6度目の対決/イースト準決勝展望①

ニックスのブランソン(左)とヒートのバトラー(右)[写真]=Getty Images
NBA好きが高じて飲食業界から出版業界へ転職。その後バスケットボール雑誌の編集を経てフリーランスに。現在はNBAやBリーグのライターとして活動中。

イースタン・カンファレンス・セミファイナル展望①
1回戦で上位シードを撃破し、通算6度目の激突となるニックスとヒート

 4月16日(現地時間15日、日付は以下同)に幕を開けた「NBAプレーオフ2023」は、29日終了時点でファーストラウンド全8カードのうち7カードで決着がついた。そして5月1日にニューヨーク・ニックスとマイアミ・ヒートによるイースタン・カンファレンス・セミファイナルがニックスのホーム、マディソン・スクエア・ガーデンで初戦を迎える。

 2年ぶりにプレーオフの舞台へ帰ってきたニックスは、第5シードとして1回戦に臨み、第4シードのクリーブランド・キャバリアーズを4勝1敗で下した。レギュラーシーズンでチームトップの平均25.1得点10.0リバウンドに4.1アシストを残したジュリアス・ランドルが本調子ではないなか、ジェイレン・ブランソンがシリーズ平均24.0得点4.8アシスト2.2スティール、RJ・バレットが同17.4得点4.2リバウンド2.8アシスト1.4スティール、ジョシュ・ハートが同11.6得点7.8リバウンド1.2スティールをマーク。

 一方、イースト7位でレギュラーシーズンを終えたヒートは、アトランタ・ホークスとのプレーイン・ゲームを落とし、シカゴ・ブルズとの8位決定戦を制して第8シードを勝ち取り、トップシードのミルウォーキー・バックスを4勝1敗で撃破。

 第8シードが第1シード相手にアップセットを起こしたのはNBA史上わずか6チーム目。第1戦でタイラー・ヒーロー(右手骨折)、第3戦ではビクター・オラディポ(左ヒザの膝蓋腱断裂)をケガで失うなか、闘将ジミー・バトラーがシリーズ平均37.6得点に6.0リバウンド4.8アシスト1.8スティールと縦横無尽の活躍を見せた。

ヒートとのシリーズに向けてコンディション回復が注目されているランドル[写真]=Getty Images

ニックスはブランソン、ヒートはバトラーというクラッチプレーヤーが健在
シリーズのポイントはニックスが仕掛けるバトラー対策か?

 ニックスとヒートがプレーオフで激突するのは2012年以来、通算6度目。そのうち1997年から2000年まで4年連続で対戦し、いずれもシリーズ最終戦までもつれ込むほどの激闘を演じてきた。

 今シーズンのレギュラーシーズンではニックスが3勝1敗と優勢。だがそのうち2敗は2点差、4試合とも9点差以内の決着だった。ニックスのトム・シボドーHC(ヘッドコーチ)、ヒートのエリック・スポールストラHCはいずれも1990年代にアシスタントコーチを務めており、両チームがプレーオフで激しいバトルを繰り広げてきた当時を知るだけに、彼らの采配も注目したい。

 このシリーズに向けて、ニックスは3月末に左足首を捻挫して完治していないランドル、肩の打撲によりキャブズとのシリーズ最後の2試合を欠場していたクエンティン・グライムズの出場がクエスチョナブル(Questionable=不確か)なのが気がかり。

 ただ、シボドーHCは両選手とも初戦に出場できる可能性があることを示唆しており、現有戦力としてはベストメンバーでシリーズを迎えることができるかもしれない。

 ヒートはバトラーの周囲をバム・アデバヨマックス・ストゥルース、ゲイブ・ビンセント、ケイレブ・マーティン、ダンカン・ロビンソンらが囲み、優勝経験のあるベテラン陣(ケビン・ラブカイル・ラウリー)が支えているものの、第3の得点源ヒーローとベテランのオラディポ離脱で戦力ダウンしていることは否めない。

 両チームによるシリーズ予想は、『NBA.com』では4勝3敗でニックス、『NBC Sports』も4勝3敗でニックス、『The Athletic』は匿名のスカウト、コーチ、エグゼクティブがいずれも4勝2敗でニックスと予想しており、下馬評ではニックス優勢となっている。

 ただ、ニックスはブランソン、ヒートにはバトラーという、クラッチゲーム(試合時間残り5分で5点差以内)に強い選手がいる点も見逃せない。レギュラーシーズンでブランソンはリーグ4位の計139得点、バトラーが3位の計151得点をマーク。ファーストラウンドでもバトラー(2試合)がトップの平均10.5得点、ブランソン(1試合)が同7.0得点で3位という実績を残しているだけに注目したい。

バトラー(右)とハート(左)のマッチアップも注目[写真]=Getty Images

 ニックスはシボドーHCが「現代におけるミッドレンジショット」と評するほどフローターを多用しており、ミッチェル・ロビンソンやハートらがそのミスショットのオフェンシブ・リバウンドをもぎ取ってセカンドチャンスへつなげてきただけに、リバウンドの奪い合いもカギになるだろう。

 そして最大のポイントとなるのはバトラーのパフォーマンス。バックスとのシリーズで、この男はフィールドゴール成功率59.7パーセント、3ポイントシュート成功率44.4パーセントという驚異的な成功率を残してきた。

 おそらくニックスはバレット、ハート、グライムズをバトラーへの刺客として送り込むことだろう。特にハートはポートランド・トレイルブレイザーズとニックスでプレーした今シーズン、計106ポゼッションで対峙してバトラーのフィールドゴール成功率を27.3パーセント(6/22)に封じており、キープレーヤーになる可能性を秘めている。

 また、ブルズとミネソタ・ティンバーウルブズ時代にバトラーを指導してきたシボドーHCが、ファーストラウンドで超絶パフォーマンスを連発したヒートの闘将をどのようにしてスローダウンさせるかも必見だ。

文=秋山裕之

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