2023.10.11

リーグへの影響や選手のメリットは? 今季から始まるNBAのカップ戦“インシーズン・トーナメント”を予習

NBAに誕生した新たなカップ戦、その目的とは?[写真]=GettyImages
某ストリートメディアのシニア・エディターを経験後、独立。ひとつのカルチャーとしてバスケットボールを捉え、スポーツ以外の側面からもNBAを追いかける。

 NBAは、開幕に向けて助走をつけるプレシーズンがスタート。優勝候補の完成度や注目ルーキーの素質の確認など、メディアやファンにとっても忙しい毎日が帰ってきた。

 2023-24シーズンは新たなインシーズン・トーナメント、通称「NBAカップ」が初開催となる。実はこの大会、開幕直後の11月4日(現地時間3日)に最初の試合が控えているのだ。

『ESPN』は、開催まで1カ月を切ったインシーズン・トーナメントに再びスポットライトを当てている。大会の位置付けやリーグの目論見、そして選手への影響や名誉など、本番前に全貌を把握しておこう。

■開催理由と大会フォーマット


 NBAコミッショナーのアダム・シルバーは、かねてよりヨーロッパサッカーに魅了されており、欧州の熱狂的なトーナメントから着想を得たと言われている。しかし、選手の負担や開催意義の説明など、球団や選手会を説得するにはかなりの時間を要した。

『ESPN』は、トーナメント開催理由に“収益”と“注目度”を挙げている。NBAは、この新フォーマットが将来的に重要な収益を生み出すフランチャイズになると考えており、大会名をシンプルにした理由も、スポンサードやネーミングライツを見越してのことだ。

 また、シーズン開幕直後の開催は、レギュラーシーズンの結果に最も干渉が少なく、注目の最初のピークを持ってくる算段でもある。この時期はアメリカ国内で最大の人気を誇るNFLのレギュラーシーズンやカレッジフットボールも開催されており、動員数や視聴率を例年より向上できれば、トーナメント導入は成功と見なされるだろう。

 ヨーロッパのサッカートーナメントと異なる点は、独立のカップ戦ではなく、試合はレギュラーシーズンのスケジュールに組み込まれ、結果のほとんどがシーズン成績に反映されることである。

 全30球団は、5球団ずつ6つのグループに振り分けられ、はじめにグループステージを戦う。各グループの構成は以下のとおりで、試合は11月の火曜日と金曜日に開催される。

▼Group A
フィラデルフィア・セブンティシクサーズ、クリーブランド・キャバリアーズ、アトランタ・ホークス、インディアナ・ペイサーズ、デトロイト・ピストンズ
▼Group B
ミルウォーキー・バックス、ニューヨーク・ニックス、マイアミ・ヒート、ワシントン・ウィザーズ、シャーロット・ホーネッツ
▼Group C
ボストン・セルティックス、ブルックリン・ネッツ、トロント・ラプターズ、シカゴ・ブルズ、オーランド・マジック
▼Group D
メンフィス・グリズリーズ、フェニックス・サンズ、ロサンゼルス・レイカーズ、ユタ・ジャズ、ポートランド・トレイルブレイザーズ
▼Group E
デンバー・ナゲッツ、ロサンゼルス・クリッパーズ、ニューオーリンズ・ペリカンズ、ダラス・マーベリックス、ヒューストン・ロケッツ
▼Group F
サクラメント・キングス、ゴールデンステート・ウォリアーズ、ミネソタ・ティンバーウルブズ、オクラホマシティ・サンダー、サンアントニオ・スパーズ

 ノックアウトラウンドに進めるのは、各グループの1位チームのみ。ベスト8の残り2枠は“ワイルドカード”となり、グループを首位通過した球団を除く各カンファレンスの成績トップの球団が参戦することになる。準々決勝は12月5日と同6日に、準決勝と決勝は同8日と10日にそれぞれ開催され、準々決勝で敗退した球団は試合数を担保するべく、同6日と同8日の対戦に回ることになる。また、準決勝までの結果をレギュラーシーズンの成績にカウントし、チャンピオンシップは通常のシーズン順位には反映されないため、決勝に進出した球団のみ、レギュラーシーズン期間内に83試合をプレーすることとなる。

シルバー氏が愛する欧州サッカーにヒントを得ているが、大会形式は大きく異なる[写真]=Getty Images

■NBAカップがレギュラーシーズンに組み込まれた理由

 トーナメント開催計画で最も大きな壁となったのは、球団や選手がトーナメントの必要性に懐疑的だったことだ。リーグには未来を見据えたトーナメントのビジョンがある一方、トーナメントがヨーロッパサッカー形式で開催された場合、球団はプレーオフを優先してトップ選手全員をベンチに座らせ、ロードマネージメントと若手の成長を目論んでいたに違いない。

 しかし、NBA式のカップ戦システムの下では、勝利することにより結果にともなったインセンティブが発生する。また、決勝戦を除く全試合をシーズンにカウントすることは、プレーオフのタイブレークの観点でも非常に重要となるのだ。

■参加選手が得られる名誉

 インシーズン・トーナメントからは、最優秀選手賞とオールトーナメントが選出されることになっている。直近はひとつの称号に過ぎないが、将来的には契約更新時のボーナス条項に織り込まれるポテンシャルも秘めているだろう。

 そして、優勝チームには選手1人につき50万ドル(約7400万円)、準優勝チームは20万ドル(約3000万円)の賞金を用意。また、準決勝敗退チームにも10万ドル(約1500万円)、準々決勝敗退チームにも5万ドル(約740万円)が与えられる。これはマックス契約を結ぶスター選手にとっては雀の涙かもしれないが、ルーキーやミニマム契約の選手にとっては大きなインセンティブだ。

 一方で、インシーズン・トーナメント覇者にプレーオフ出場権を与える議論も一部関係者の間でなされたが、このアイデアは見送りとなり、プレーオフのチケットはレギュラーシーズンの成績で勝ち取ることとなった。

文=Meiji

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