2019.05.03

外国籍選手との素敵な関係。アルバルク東京ファンは「これからもジャワッドとともに戦おう」

ホーム最終戦後、ウィリアムズへのコールと集合写真を行ったA東京ファン [写真]=アルバルク東京
バスケットボールキングプロデューサー(事業責任者)。学生バスケをテーマにしたCM制作に携わったのがバスケに関する初仕事。広告宣伝・マーケティング業務のキャリアが一番長いが、スポーツを仕事にして15年。バスケどころの福岡県出身。

中地区優勝の新潟を破る原動力はファンの声援

「B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2018-19」クォーターファイナルで中地区王者の新潟アルビレックスBBを撃破し、連覇へ向かって次のステージへと駒を進めた昨年王者のアルバルク東京。2季連続でリーグ得点王に輝いたダバンテ・ガードナーに加え、ベテランガードコンビ、五十嵐圭柏木真介の活躍で躍進を遂げた新潟相手にシーソーゲームを展開するも、第1戦は6点差、第2戦は3点差と接戦を勝ち切った。ワイルドカードでのチャンピオンシップ出場となったA東京は、新潟のホーム、シティホールプラザアオーレ長岡に乗り込み、新潟ブースターの大声援の中で戦いを強いられることとなったが、A東京が僅差の勝利を収める一つの要因が、アウェイまで応援に駆けつけたA東京ファンたちの力強い声援だ。

 長岡まで遠征したA東京のファンは、精悍な顔立ちが赤に映えるジャワッド・ウィリアムズの似顔絵と背番号31をあしらったフラッグを持参しての応援。レギュラーシーズン終盤の名古屋ダイヤモンドドルフィンズ戦で負傷し、右足アキレス腱断裂の大ケガで手術およびリハビリのため帰国を余儀なくされたウィリアムズも一緒に戦うという姿勢を色濃く打ち出していた。

 現在36歳のウィリアムズはノースカロライナ大学出身で、スペインやDリーグ(現Gリーグ)、クリーブランド・キャバリアーズなどでもプレー。2017年にイタリアのチームからA東京に加入した。在籍2シーズン目の今季は271得点(1試合平均10.4得点)111リバウンド(同4.3リバウンド)を記録。また数字以上に、昨季のファイナルで、肋骨を骨折していながら出場し、多くの人々の記憶に強く残るブザービーターを決めるなど、そのプロとしての立ち振る舞いとリーダーシップで、チームメートのみならず、A東京のファンをも魅了した。

 チームを熱心に応援するファンと、選手をリスペクトし、少しでも早くケガを治してほしいという気持ちが結実したのが、今季のBリーグ最終節、A東京のホーム、アリーナ立川立飛で試合後に行われたファンによる“ジャワッドコール”。手術・リハビリに励むウィリアムズへ日本からエールを送ろうと実行されたこの企画だ。

CSを前に負傷離脱を強いられたジャワッド・ウィリアムズ [写真]=B.LEAGUE

“#with31”! アルバルカーズの思いは「ジャワッドと一緒に戦おう」

 イベントを主催したA東京ファンの横田晶次郎さんは、その企画趣旨を「今回、これまでチームを支え続けたジャワッド選手が残念ながら離脱してしまいましたが、『これからもジャワッドとともに戦おう』という気持ちを持つファンが大勢いて、『#with31』というハッシュタグを付けた投稿が溢れました。そのアルバルカーズの思いを一つの形にして届けたい。そう思って、このイベントを企画しました」と語る。続けて試合後にウィリアムズへのコールと集合写真のために残ったファンの多さについて「最初はエンド側階段席の半分くらいを使って集合写真を撮ろうと思っていましたが、予想を上回る人数が集まったため運営側の配慮で急遽コート内で行うこととなりました」と想像を上回る反響に驚きをしめした。

 決して応援やスタイルを強要することなく、様々なファンがいる中でもお互いを尊重しながら良い関係を構築し、楽しく観戦しているという横田さんは「こういうイベントはファン主導による自主的なイベントであることが非常に大切だと思っています」と述べると、Bリーグ元年はシャイなファンが多く、なかなか声を出したり、自主的に盛り上げたりということに戸惑いも多かった姿を振り返り、皆で作り上げ、選手やチームに対する応援でも戦えるようになってきたと笑う。

 豊富なキャリアと卓越した技術でA東京を支えたウィリアムズが不在の中、強敵新潟を退けたのは、ルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチらスタッフの入念な準備、その準備を勝利に結びつけた選手の活躍に依るものだが、ファンの声援や想いも、チームの背中を後押しする重要な要素となったはず。今季も選手、スタッフ、ファン、一丸となってCSを戦うA東京。長かった3年目のシーズンも残すところセミファイナルとファイナルのみ。選手のプレーはもちろん、コーチ陣のベンチワーク、会場で声援を送るファンの姿もまたスポーツを彩るワンシーンとして眺めてみると、残りの試合も一層味わい深いものになる。どこを見れば良いのか困りものだが、これもまたスポーツ観戦の醍醐味だと言えるだろう。

文=村上成

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