2019.05.17
レギュラーシーズン57試合目で地区優勝を決め、上昇ムードがさらに高まっていたことを考えると、新潟アルビレックスBBの「B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2018-19」クォーターファイナルでの敗退は意外な結末でもあった。
柏木真介や上江田勇樹といった効果的な補強に成功しながら、今村佳太の出場停止という非常事態が発生。北信越アーリーカップでは決勝で富山グラウジーズに30点差の大敗を喫するなど、シーズンの幕開けは決して順風満帆ではなかった。しかし、連敗したとはいえ千葉ジェッツに対して食らいつく粘りを見せたあたりから、チームは我慢強さを身につけていく。過去2シーズンはダバンテ・ガードナーと五十嵐圭のオフェンス力を軸としたスタイルだったが、今季は1試合平均73.3失点とディフェンスが向上。第3クォーターまではわずか4点リードの接戦ながら、最後の10分間を4失点にとどめ、終わってみれば23点差の大勝を飾った試合もあった。地区優勝を決めた川崎ブレイブサンダース戦も、第3クォーターまでの大接戦で最後の最後に一歩だけ前に出る粘り勝ち。ディフェンスで我慢を覚えたことが、昨季から実に17勝増の45勝15敗という好成績に結びついた。
ただ、CSクォーターファイナルで相まみえたアルバルク東京は昨季王者。リーグ制覇だけを目標に一歩ずつステップを踏んできたA東京に対し、新潟は当初CS出場が目標だった。「CSでも一戦必勝ということは繰り返し言ってきたが、どこか緩みが出てしまったのかもしれない」とは庄司和広ヘッドコーチの弁。最後のゴールまでの過程を経験していないことが、意識の部分に相手とのわずかな差を生んでいたのだろう。2戦とも最後まで我慢比べの展開だったが、庄司HCが「試合前のアップを見ていても、すごく危機感を持って臨んでいると感じた」というA東京は、新潟にとってはまだ崩しきれない壁だった。
それでも、チームの潜在能力が花開いた今季の大きな飛躍が色あせることはない。昨季上ることができなかった階段を1つ上ったことは疑いようのない事実。そして、「チームはまだ完成形ではない」という五十嵐の言葉は、来季の目標が開幕前の時点で“リーグ優勝”に設定されることをも意味するはずだ。リーグの強豪としての礎を築いた今季からさらにその存在感を増すことができるか、ブースターの期待はますます膨らむ一方。
リーグの勢力図を変えるであろう新潟の躍進は、まだ始まったばかりだ。
文=吉川哲彦
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