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『B MY HERO!』
創設4年目のチームが夏を制した。
8月22日から24日の期間で鹿児島県にて開催された「令和7年度全国中学校体育大会 第55回全国中学校バスケットボール大会」(以下、全中)。24日の最終日は男女準決勝、決勝が行われ、男子は準決勝で四日市メリノール学院中学校(三重県)を62−41で破った金沢学院大学附属中学校(石川県)が、決勝でも世田谷区立梅丘中学校(東京都)を相手に58−43で勝利。初の日本一に輝いた。
「創設して4年目。昨年は全国大会で3位になり、今年(のチーム)も強いなとは思っていたけれど、4月、5月ごろかな、本当に力が付いてきて。(全国大会の)4つ(に入る)ぐらいの力はあるだろうとは思っていました。そこからずっと、成長し続けているチームで、まだまだ強くなると思っています。優勝はすごくうれしいです」
チーム初優勝の感想を語ったのは指揮を執る角田敏コーチ。かつて1992年の全中では(当時は野々市町立、現野々市市立)布水中学校(石川県)で日本一に輝くなど、指導にあたった布水や白山市立美川中学校(石川県)で全国大会では好成績を残してきた指導者だ。なお、卒業生には三遠ネオフェニックスの大野篤史ヘッドコーチをはじめ、トップレベルで活躍するコーチや選手が多数いる。
その角田コーチは、成長を続けるチームの理由をこう語る。「各地区の大会が終わってこの(全国)大会に向かうのですが、その大会のために調整なんてしないよと。成長だよ、まだまだ伸びるよということを言い続けてきました。試合があって練習がある、この(2つの)関係だけだったら絶対に成長はない。ここに自分を成長させようという気持ちがないといけないし、チームを伸ばそうという気持ちがないといけない。それが練習につながるんだと。本当に(選手たちは)成長し続けてくれました」
特に現在の3年生については「16人いるんですけども、その『塊』がとてもいいです。私は毎日、朝日が昇るたびに練習に行くのが楽しみです」と、目を細めた。
いくつもの輝かしい成績を持つ角田コーチだが、指導者として見つめ直すキッカケとなったのがコロナ禍の時期。「子どもたちとずっと離れた時期があったときに、ボトムアップ的なチーム作りをしないといけない、コーチとして1年間の青写真をちゃんと作って選手たちに示していかないといけない」と、改めて感じたという。

コロナ禍をきっかけに指導法を再確認したという角田監督 [写真]=田島早苗
そこで「選手たちの組織をボトムアップにして、仕事の役割分担もそれぞれがやりたい仕事を選んでやる」ようにし、例えば「ドリブルハンドリングの部長さん、シュート関係の部長さん、トレーニングの部長さん」がそれぞれにいるという。その中で角田コーチが選手たちにインターネットで調べてもらい、そこでの情報を練習メニューに組み込むといったこともあるそうだ。
加えて、角田コーチの意向を伝えた上で石過祐樹コーチ、松橋和希コーチと2人のアシスタントコーチがオフェンスとディフェンスの担当となり、意見を交わしながら練習を考えたり、細かい指導をしたりしていて、まさしくスタッフ、選手が一つとなって良いチームを作るために日々励んでいる。
ほかにも、今年のチームはキャプテンが4人いるが、これも選手4人がキャプテンに立候補したからだという。キャプテンの一人である村井衛(3年)は「昨年から試合に出させてもらって悔しい思いをしたので、その気持ちをみんなに共有して頑張れるように。このチームを引っ張って優勝したいというのがあったので、キャプテンとなって、みんなを引っ張るという思いでした」と、キャプテンに立候補した理由を挙げる。さらに他3名のキャプテンについては「自分が見えない部分をみんながやってくれることもあるので心強いです」とも語った。
こうしたチームの取り組みは、選手の自立、自覚にもつながるのではないか? そんな問いに角田コーチは「そうなんです」と言い、その思いを続けて語ってくれた。
「自主性と主体性は意味が違うということ。自主性は、言われたことを一生懸命やり続けることができる人。でも主体性は、その一歩上を行っていて、何をやらなくてはいけないか、自分が成長していくためにはどうすればいいのか。自主性の上にそういうことを考えられるのが主体性です。だから主体性という言葉はとても大切に使っています」
選手たちも「1年生のころは先生の言ったことをやることしかできなかったのですが、今は日本一になるために、自分で状況判断して、いいプレーを選択できるようにはなったと思います」(村井)と、主体性を持ってチームに参加することでの手応えを感じているよう。
「まだまだ伸びる力はあるし、伸び続けていけていますね」(角田コーチ)と、春から続く成長曲線に終わりは見えない。
村井も「このチームの目標は2冠。ここで終わりではないので、来年1月のJr.(ジュニア)ウインターカップに向けてまた練習して、優勝できるように頑張っていきます」と、次なる目標に向けて気持ちを新たにしていた。

初優勝に湧く金沢学院大附属のメンバーだが、早くもその目は次のステージに向けられている [写真]=田島早苗
取材・文=田島早苗