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『B MY HERO!』
「自分がこのチームを引っ張りたいという気持ちや、日本代表活動を経てもっとやるべきことがたくさんあると感じたので、それをしっかりやって、チームの目標に向かっていきたいです。よりステップアップもしていかないといけないですし、立場もどんどん上になって中堅にもなるので、個人としても言葉でも引っ張っていかないといけないと思っています」
Wリーグ3連覇、皇后杯連覇を目指す富士通レッドウェーブ。10月3日にはメディアデーを実施し、取材に応じた赤木里帆はチーム内での自身の立場や今シーズンに向けた抱負を語った。
取材中、赤木からは強い向上心と責任感を感じさせる言葉が続いたが、その精悍な表情が緩んだのが4シーズンぶりに現役復帰となった前澤澪について聞いたときだ。
「師匠」と口にすると、一瞬にして笑顔になった赤木は前澤についてこう語った。
「戻ってくるのを聞いたときは、すごくびっくりしたんですけど、いや、かっこいいですよね。出産をして、またチャレンジするというのがさすがだなって思いました。シィ(前澤)さんが戻ってきてくれることで、オフボールの動き、もうタイミングとかが素晴らしいので、学べることはたくさんあります。いろいろな方の上手いところを吸収して、もっともっと成長していきたいなと改めて思いました」
前澤は2014ー15シーズンに富士通に入団し、1年目から主力としてチームを引っ張ったシューティングガード。東京オリンピックにも3x3女子日本代表として出場するなど、富士通、日本代表とで活躍した。そして2021-22シーズンをもって惜しまれながら引退することに。しかし、引退から3年が経った今年、結婚と出産を経た前澤は現役復帰を果たしたのだ。
前澤が旧姓・篠崎で富士通に在籍していた8シーズン、その1度目の引退となった最後のシーズンに入団してきたのが赤木だ。前澤のストイックにバスケットに取り組む姿勢を間近で見ていた赤木ら新人にとっては感じるものも大きかったのだろう。このシーズン、Wリーグ公式ホームページに新人紹介として掲載されたアンケートには、赤木をはじめ、奥伊吹、渡邊悠(2023年に引退)と当時の新人3人が、そろって目標の選手に前澤の名前を挙げていた。
そんな目標の選手が戻ってきたのだから、赤木の言葉も熱を帯びる。「そんなに走れますか? 3年いませんでしたっけ? というぐらい全然ブランクがないように感じますし、動けていますね。でも、そうやってしっかり動けているのもオフシーズンに自分を追い込んでやっていて、それができる方だから。人としてもすごく尊敬しているので、チームにとってプラスでしかないと思っています。今シーズンはシィさんのためにも優勝したいと思いますし、一緒にまたバスケットができるうれしさがあります。今までたくさん学ばせてきてもらったので、一緒にチームを引っ張っていきたいです」

今夏の国際大会でも存在感を示した [写真]=fiba.basketball
その赤木は、夏の間に出場した『2025 BNK金融 パクシンジャカップ』(韓国/8月30日〜9月7日)、『FIBA Women’s Basketball League Asia 2025』(中国/9月23日〜28日)を通して収穫も多かったとオフシーズンを振り返る。
「ディフェンスの手ごたえはありました。海外の高い選手やフィジカルの強い選手に対して、自分たちが先にやるべきことをやれば守れる。だけど、後手になるとイージーなバスケットされてしまうと感じました。オフェンスでは、個人的には3ポイントシュートの確率が上がらない中で、チームのために何ができるのかと考えたときに、今までは入らなくても打ち続けるのが大事という考え方しかしてきませんでした。でも、そうではないときもあるというのを学べた大会だったと思います。シュートが入らないときに、無理してそこばかりにこだわるよりも、もっと効率的にチームのためにできること、違うアプローチの仕方、攻め方があるんだと。もちろん、決めることが一番大事なんですけど」
こうした気づきは、がむしゃらだったルーキーイヤーから経験を重ねてきたからこそ得られたものとも言えるだろう。
「失敗で終わらせることのないように。どんどんプラスに変えていかないといけないと思っているので、シュートを打つ角度を少し変えることや、個人としても今シーズンはハンドラーのときにボールをコントロールしながら、ディフェンスの状況を見てシュートを打つことを目標にしているので、そこはしっかり練習していきたいです。今、シュートも少し修正しているのでリーグに向けていい準備ができています」。
前澤がチームを去ってからの3年間、赤木はシーズンを経るごとに地位を確立すべく成長を遂げてきた。昨シーズンのプレーオフでの活躍は記憶に新しいところで、プレーオフベスト5も受賞し、優勝の立役者の一人となった。日本代表活動も彼女にとっては大きな刺激だ。そうして迎える5年目のシーズン、赤木は尊敬してやまない“師匠”とともに、日本一という頂に向けて走り続ける。
文=田島早苗