2025.10.22

ZIGEXN UPDAERS.EXE|本社所在地ではない京都をホームに参戦する企業チームの意義と在り方、そして未来像【TEAM INTERVIEW】【BACK NUMBER】

リーグ・協会

 ネット上でライフイベント領域のサービスを多数展開する株式会社じげんが運営母体となり、京都をホームに立ち上げた ZIGEXN UPDATERS.EXEが、参戦開始から3シーズンの戦いを終えた。チーム運営を担ったのは、本社の広報部門。これまでの業務とはまったく異なる3x3という未知の領域で、チームを滞りなく運営し、成長させなければならなかった。そのため、立ち上げ時に向こう3年間の成長計画を策定したと、チーム運営の責任者、杉原麻裕子氏は語る。

「初年度はチームの安定的な運営と、地元京都での認知を拡大。2年目は京都での大会誘致とチーム力の強化。そして3年目の2024年度は、大会を定期的に誘致し、京都で3x3をさらに活性化させることを目標に掲げ、活動してきました。その結果、3年目の2025年1月には、京都の大学と連携し、3x3.EXE TOURNAMENT 誘致を実現することができました。一方で、地元での認知度やチーム力の強化は、3x3.EXE PREMIER に所属している人気・強豪チームの皆さんと肩を並べるまでには至っていません。しかし選手との面談では、彼ら自身もチームの成長を実感しているようです。1年ごとのテーマを着実にクリアし、チームの土台は確実に固まってきていると感じています」

 ZIGEXN UPDATERS.EXE は着実な成長曲線を描きながら、3年の時間を積み重ねてきた。チーム運営を継続するうえで重要なのは、しっかりとした理念を持つことだと杉原氏は語る。

「チームを運営する動機が‘3x3 のチームを持ちたい’だけでは、ここまで続けてこられなかったと思います。3x3を通じてなにを実現するのか。3x3 をなにと結びつけるか。その『なに』がとても大事だと、活動を重ねる中で実感しました」

 この『なに』とは、つまり理念である。ZIGEXN UPDATERS.EXE にとって、それは3x3を通じて京都の街の活性化に貢献し、全国でも屈指の学生が集まる京都で、若者を巻き込んだ活動を展開していくことだ。

「チームを作った先になにをするのかを見据え、実現したいことを並行して持ちながら活動する。チームを継続させるためには、それが必要だと思います。こうした活動を続けることで応援してくださる方が増え、価値が生まれていくのではないのかと感じています。自分たちの目標や目指す方向次第で、自由度の高いチーム作りができるのが3x3の魅力のひとつ。しかし、チーム設計がいかに重要かは、実際に運営してみて改めて実感しました」

 明確な理念を持って活動に取り組んでいるとはいえ、チームの歴史はまだ3年。当然、課題もある。

「チームを応援してくださる方が、まだ多くありません。京都の街の活性化に貢献するためには、応援してくださる方々をしっかりと増やしていくことが不可欠です。現状ではまだ十分に取り組めていませんので、これからの課題のひとつとして認識しています」

 一方で、学生を巻き込んだ活動については、一定の成果が出ている。

「現在、チームには同志社大学の学生2名と京都大学の学生1名がインターンとして参画してくれています。彼らは練習や試合に帯同し、チームマネージャーのような役割も担ってくれています。モチベーション高く関わってくれていており、選手たちとも強い信頼関係を築いています。そのうちの1名はじげんへの入社が内定しており、今年の4月から社員として働く予定です」

1月25日に開催された3x3.EXE TOURNAMENT 2024-2025京都予選の様子


 運営の現場だけではなく、チーム内にも同志社大学や京都大学の学生を練習生として受け入れている。学生との結びつきは、この3年で大きく深まった。そして今年1月、チーム結成から3年目のひとつの集大成として、当初から目標に掲げていた大会誘致を実現。それが、1月25日に龍谷大学で開催した国内最大級の3x3オープントーナメント、3x3.EXE TOURNAMENT 2024-2025 京都予選だ。

「大会を開いた目的のひとつは、チームスローガン『UPDATE~』を軸に、参入時に掲げた『京都で学生を巻き込んだ大会の実現』という目標を達成すること。また、もともと京都にチームを作ったのは、学生との関わりを深めたいという想いがあったからです。関東にはすでに3x3の学生トーナメントがありましたが、関西には存在しませんでした。関西では3x3の大会自体が少なく、競技の認知度が低いのが現状です。」

 京都の大学生で5人制バスケットボールをプレーしている選手は多いが、3x3の経験者は少なく、詳細なルールを知らない者も少なくないという。

「そこで、京都に3x3を普及させるために、私たちがなにかお力になれないかと考えました。関西学連の理事の方や京都のバスケットボール協会の方々にお話を伺いながら、学生を巻き込んだ大会の実現に向けて相談を重ねました。時間はかかりましたが、その積み重ねの末、ようやく開催にこぎ着けました。」

 参加チームの募集を開始すると、たちまち大きな反響があった。当初は男子12チーム、女子6チームの予定だったが、予想を超える申し込みがあり、男子は24チームに増枠。関西のプロ・アマチーム、京都の大学チームに加え、関東や九州から強豪チームが集結し、男女合わせて100名を超える選手が参加する大規模トーナメントとなり、大きな成功を収めた。

「大会を誘致したことで、さまざまな成果が得られましたが、私たちにとって特に大きかったのは、京都市や京都府の自治体、京都府バスケットボール協会、そして各大学との関係が深まったことですね。皆さんに合意を得るまでクリアすべき課題も沢山もありましたが、最終的には多くの方に喜んでいただけたと思います。関西では3x3を生で観戦する機会が少なかったこともあり、来場者の方々にも楽しんでいただけましたし、参加してくれた選手たちにも喜んでもらえたのもうれしかったです。大会後の学生向けアンケートでは、『次も出場したい』といったコメントがほとんどで、それも自信につながりました。 学生たちのキャリアの観点からも、5人制のプロや実業団だけではなく、3人制のプロキャリアという選択肢が加わることで、将来の可能性が少しでも広がるといいなと考えています。」

ZIGEXN UPDATERS.EXEは京都予選でベスト4の成績を収め3月に八戸で行われるFINALの出場権を獲得


 3x3.EXE PREMIER には、個人オーナーが主体となるチームもあれば、企業が運営するチームもある。ZIGEXN UPDATERS.EXE は後者であり、東証プライム市場に上場し、約1000人の従業員がいる株式会社じげんが運営母体だ。チームのホームは京都だが、本社は東京にある。本社勤務の社員にとってチームの活動は遠い存在になりがちだが、関東圏での試合には多くの社員が応援に駆けつけている。

「参入1年目は関東での試合がなく、社員が応援に行く機会がありませんでしたが、3年目は4試合ほどありました。グループ会社にも声をかけ、社長の平尾も一緒に会場で応援しました。また、当社では社内の有志を募ってプロジェクトチームを組み、チームの運営に携わってもらっています。これは当社ならではの面白い取り組みですね。具体的には、チームの遠征の手配をしたり、選手との面談やキャリアの相談に乗ったりと、多方面でサポートしてもらっています」

 じげん社は多岐にわたる事業領域をもつことが特徴だが、その広がりゆえに「自社のアイデンティティ」を感じにくい側面もあるかもしれない。杉原氏も「確かにそうですね」と頷く。

 そうした視点で捉えると、ZIGEXN UPDATERS.EXE は社内での認知が高まることで、じげん社のアイコンとなり、社員が自社への誇りを持つきっかけになり得る。言うなれば、企業が母体となる社会人野球チームのような存在だ。3x3.EXE PREMIER にはさまざまな形態のチームが参戦しているが、こうした企業型チームのあり方も一つのモデルになるだろう。

 本社とは離れた京都で活動の幅を広げながら、企業内でチームの価値を深めていく。その両輪に挑む ZIGEXN UPDATERS.EXE に、今後も注目していきたい。

2024シーズン開幕戦の様子©ZIGEXN UPDATERS.EXE

(Text by カワサキマサシ)

TEAM information


Team:ZIGEXN UPDAERS.EXE
(ジゲン アップデーターズ エグゼ)
Category:MEN
Hometown:京都府京都市
Since:2022
X:https://x.com/ZIGExN_UPDATERS
Instagram:https://www.instagram.com/zigexn_updaters.exe/

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