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残り10秒。スコアは64-60。
その瞬間まで、勝利は確かに目前にあった。
1月6日、京王アリーナTOKYOで行われた「京王 Jr.ウインターカップ 2025-26」女子3回戦。ONE(静岡県)は大会3連覇を目指す京都精華学園中学校(京都府)と対戦。前半は狙い通りの展開でリードを奪い、女王を追い詰める。しかし、終盤に訪れた一瞬の迷いが試合の流れを変え、決着は延長戦へ。73-77。勝利は、指の間からすり抜けた。
前半のONEは、準備してきたバスケを存分にコートで表現した。190センチのアニボグ ジェニファー チナザを擁する相手に対し、サイズで真っ向からぶつかるのではなく、アタックからキックアウト、さらにカッティングを絡めた連動で揺さぶる。石川奈美ヘッドコーチが徹底してきた「つなぎのバスケ」が機能し、テンポとリズムを握った。

選手たちの奮闘を見守る石川HC [写真]=バスケットボールキング
第2クォーターには後藤梨月、佐藤惠子、熊崎優奈が立て続けに得点を重ね、スコアは43-30。会場の空気を一気に引き寄せた。佐藤はこの試合、3ポイントシュートを4本成功させ22得点。前日までシュートが入らず苦しんでいた姿からは想像できないほど、思い切りのいいプレーを見せた。
佐藤は試合後、「京都精華と当たることは前から分かっていたので、絶対に勝って歴史を変えようと思っていた」と振り返る。終盤、6点差をつけた場面についても、「その時、一瞬『日本一』が見えた気がしました」と正直な感情を明かした。
後半に入ると、京都精華学園中が修正を施してくる。チナザがインサイドで存在感を増し、リバウンドとフリースローで着実に得点を積み重ねる。すると、外角からのシュートにも思い切りが出て、次第に追撃体制を固めていった。
第3クォーターの中盤以降、主導権は次第に京都精華学園中に移っていった。しかし、ONEは佐藤のシュートで踏みとどまり、逆転を許すことはなかった。
踏ん張りどころで存在感を放ったのが神谷和だった。ドライブで留学生を引き出し、スペースを作りながら自らも得点を奪う。試合を通して声を切らさず、コート上の温度を保ち続けた。神谷は「シュートが入らない時に黙ってしまうのが課題だったので、『入るよ』って声を掛け合った」と振り返る。苦しい時間帯でもコミュニケーションを絶やさなかったことが、リードを守る力になっていた。
第4クォーター残り38秒、後藤の3ポイントシュートで66-62。勝利は、再び視界に入った。残り時間は10秒。
だが、その直後だった。タイムアウト明けのスローインで連携がわずかに噛み合わず、ターンオーバー。その後、追いつかれ、試合は延長戦へと持ち込まれる。
石川HCは試合後に悔しさを隠さなかった。1つのプレーが試合の勝敗を変えることはバスケットボールではよくある話だが、それが現実として自分たちに降りかかれば、悔しさはひとしおだ
延長戦では、京都精華学園中が一枚上だった。杉本愛姫、松田梨月の3ポイントシュートで先行され、追いかけるONEのシュートは徐々に短くなる。最後は7-11。延長戦で力尽きた。
それでも、この一戦がONEに残したものは大きい。神谷は「留学生がいなくても、小さくても、気持ちとシュート力があれば勝てるチャンスはあることを見せられた」と語り、エースとしての自信をにじませた。佐藤も「疲れや痛みはあったけど、それよりも絶対に勝つ気持ちだった」と振り返り、この舞台で得た経験の重みを口にする。
石川HCは、この試合を「クラブとしての財産」と表現した。京都精華学園中に勝つために積み上げてきた準備は間違いではなかった。2023年4月に産声を上げたONEは、いわゆる街クラブ。多くの人達の協力で成り立っている。そのONEは3年を待たずして大きく成長を遂げたと言えるだろう。また来年もこのステージで思い切りの良いバスケを披露してくれるはずだ。
文=入江美紀雄