2021.07.09
満22歳以下の選手を対象に、個人の能力に応じた環境を提供することを目的として運用されている「特別指定選手」。これまで数多くの選手が特別指定選手としてBリーグ各チームに加入してきたが、今年も多くのホープたちが参戦した。三遠ネオフェニックスへ入団した津屋一球もその一人で、初出場となった昨年12月20日の新潟アルビレックスBB戦で2本の3ポイントシュートを決める強心臓ぶりを発揮すると、1月30日の琉球ゴールデンキングス戦では20得点と大暴れ。“津屋ってる”というキャッチフレーズで早くも親しまれている津屋は、どのような思いでBリーグへ乗り込んできたのか。
(注:2月25日に特別指定選手としての活動を終え、選手契約を結んだと発表)
インタビュー・文=岡本 亮 取材日=2021年2月18日
――まずは三遠ネオフェニックスへ入団した理由を教えてください。
津屋 新型コロナウイルスの影響でアピールする場が無くなり、自分からアプローチしていかないといけないと感じたので、昨年8月に行われた三遠のトライアウトを受験し、2日後くらいに「合格」の通知をもらったんです。それを聞いてすぐに決断したわけではなくて、三遠に所属している寺園(脩斗)さんや山本(浩太)さん(現金沢武士団)に話を聞いたところ、「三遠はまだチームとして完成していない」ということだったので、「チャンスを貰えるのではないか」と思い、加入を決めました。
――三遠というチームにどういう印象を抱いていましたか?
津屋 ほかのチームだとずば抜けて上手い選手がいて、最後はその人に任せるという形が多いと思うのですが、三遠は上手い選手がたくさんいる中でも「チームバスケをやっているな」と思ったんです。僕自身、チームでするバスケがすごく好きで、(三遠は)いい結果は出ていませんでしたが、そういう方向性だったので「自分に合っているな」と感じていました。
――大学4年次は新型コロナウイルス感染拡大もあり、思いどおりに練習や試合ができなかったと思いますが、津屋選手はキャプテンとしてどのようにチームをまとめようと考えていましたか?
津屋 自分たちの代はスーパースターが多くて、自分の主張を持つことは大事だとは思うのですが、違う方向を向いてしまうことがありました。そこを4年生たちでまとめるべく、一人ひとりの意見を全員で共有するようにしました。
――難しい状況の中バスケを続け、昨年12月に行われたインカレでは優勝することができました。優勝が決まった瞬間、どんなことが頭に浮かびましたか?
津屋 パッと思い浮かんだのは、毎日やっていたミーティングのことでした。その日起きたミスを共有して、「次の日は絶対に起こさないように」というのを皆で言っていたんです。ミーティングをやって良かったと思いましたし、ミスをなくすことで「今日の練習は良くなかったな」という日が一日もなかったのがすごく大きかったと思いました。
――「同じミスを起こさない」という考えはプロの舞台でも役立っていますか?
津屋 そうですね。東海では同じミスを許さない雰囲気になっていたので。全員が全員を厳しい目で見て、プレッシャーを与える環境はメンタル的にも成長できました。
――津屋選手にとって大学生活は大きな財産になったようですね。
津屋 間違いないですね。ただ自分がやるだけじゃなくて、他の人の意見も聞いて気を遣うことはすごい大事だと思いましたし、6年くらいやったんじゃないかと思うくらい濃い4年間でした。
――プロを意識しはじめたのはいつ頃ですか?
津屋 大学に入ってからずっとBリーグの選手になりたいと思っていました。一昨年はプレータイムが少なく悩んでいた時期があり、その時に実業団から声を掛けてもらったのですが、陸さん(陸川章監督)に相談したところ「お前が後悔しない道を選べ」と言ってもらって。その言葉を聞いて、Bリーグへ行くことを決めました。
――昨年12月20日の新潟アルビレックスBB戦では初出場・初得点を記録しました。
津屋 これから上がっていくぞという気持ちになったのを覚えています。その時、現状には全然満足していませんでしたし、新人だとしても「重要な局面で出されるような選手じゃないとダメだな」と思っていたので。デビュー戦は自分の持ち味を出そうと思ってプレーした結果、6得点という結果につながりました。
――その後継続的にプレータイムを確保し、1月30日の琉球ゴールデンキングス戦では20得点を挙げる活躍を見せました。
津屋 西川(貴之)さんがケガをしてしまい、そのぶんも頑張ろうという思いもありましたが、正直に言うと「チャンス」だと思っていたので。もしそこでダメだったとしても頼もしい先輩がたくさんいますし、チャンスを無駄にしないように思い切ってやろうと考えていました。
――ここまで15試合に出場しましたが、プロの舞台で感じた課題は?
津屋 Bリーグにはものすごく上手い外国籍選手やシューターがいるので、大学と比べてヘルプの距離感が違います。そこには苦労していて、練習中や試合中に先輩から教えてもらいながらやっています。
――ブラニスラフ・ヴィチェンティッチヘッドコーチは津屋選手から見てどんな指揮官ですか?
津屋 実は、ヨーロッパ出身のヘッドコーチがいるというのも入団の決め手になったんです。大学時代にユーロリーグを観る機会があり、その時「日本に合っているバスケだな」と思っていました。理にかなっているというか、パス回しやピックの使い方は自分たちでもできるバスケをしている。とても学びやすいバスケなので、ヨーロッパを経験しているコーチのもとでやりたいと思っていました。毎日のように怒られてストレスが溜まることもありますが(笑)、すごく学べています。
――豊橋の街の印象を教えてください。
津屋 カフェが多いかな(笑)。関東はチェーン店のカフェが多いですが、豊橋は老舗ですごく雰囲気のいいカフェがたくさんあります。そこでランチをしたりして、楽しく過ごさせてもらっています。
――ブースターの印象はいかがですか?
津屋 ホームゲームではすごく「ホーム感」がありますね。試合前のシューティングに行く時に拍手をしてもらうと「頑張らないと」と思いますし、自分自身観られるのがすごく好きなので、観られると思うと力が湧いてきます。
――では、今シーズンの個人的な目標を教えてください。
津屋 まずはディフェンスのさじ加減に慣れること。相手との駆け引きができずに抜かれることがあるので、間合いとヘルプの位置をベテランくらいに習得したいのが一つですね。あとは、最近ようやくチームで作ったシュートを打てるようになったのですが、確率があまりよくないので、3ポイントシュートを4割以上決めたい。それに加えて、自分の持ち味であるアグレッシブなドライブやリバウンドを継続できればと思っています。
――最後にファン・ブースターへメッセージをお願いします。
津屋 僕には「津屋ってる」というキャッチフレーズがありがたいことにあるので、今はアリーナで声を出せないぶん心の中で言ってもらい、家で観ている人は存分に叫んでほしいと思っています。そう言ってもらえるようにアグレッシブなプレーをしますし、観ていてワクワクするような選手になりたいと思っているので、応援よろしくお願いします!
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