2021.05.28

琉球が千葉に教えてくれた「勝ちたい意欲とボールへの執着心」

激戦を終えて互いの健闘を称え合った千葉の富樫と琉球の岸本 [写真]=B.LEAGUE
バスケットボールキング編集部

宇都宮は万全な体制でファイナルに進出

 5月29日からスタートする「日本生命 B.LEAGUE FINALS 2020-21」はレギュラーシーズン東地区1位の宇都宮ブレックスと同地区2位の千葉ジェッツが対戦することになった。現在のBリーグの頂上決戦であり、まさに竜虎対決が実現したと言えるだろう。

 しかし、この両クラブのチャンピオンシップでの勝ち上がり方は対象的だ。宇都宮の安齋竜三ヘッドコーチは常々、「レギュラーシーズンとチャンピオンシップは別物」と語っているが、セミファイナルの川崎ブレイブサンダース戦が象徴するように、比江島慎遠藤祐亮ライアン・ロシタージョシュ・スコットジェフ・ギブスを一度にコートに送り出す宇都宮版“ビッグライナップ”を披露。川崎の高さに対して、宇都宮は高さプラス機動力で凌駕し、戦前の予想を覆す2連勝でファイナル進出を果たした。

 対する千葉は、クォーターファイナルのシーホース三河戦こそ2連勝でセミファイナルにコマを進めたものの、第2戦では1ゴール差の辛勝と三河の粘りに苦戦した。

 さらにアウェーとなったセミファイナルの琉球ゴールデンキングス戦では、第1戦に勝利するも、第2戦では出だしから14−0のビッグランを許し、それでもリードして迎えた勝負どころで琉球に14−3の猛攻を食らって逆転負けを喫することとなった。

千葉は琉球との試合の中で自分たちがしなければいけないことを思い出していった [写真]=B.LEAGUE


 迎えた第3戦、前半こそ競った展開となったが、琉球の藤田弘輝ヘッドコーチが試合後の会見で「後半はガス欠でした」と語ったようにすでに琉球のスタミナは限界に達していたのだろう。3ポイントシュートはコントロールを失い、15本の長距離砲は1本もリングを通過しなかった。

琉球との激戦を経て富樫勇樹は自信を深める

 最終的には2勝1敗で千葉がファイナルに進出するが、ひたむきにボールを追い、どのような状況の中でも自分たちのバスケに徹する。そんな琉球のバスケを前にして、千葉のバスケも変わっていったとも言える。第3戦後の記者会見で大野HCは「昨日(第2戦)の時点でインサイドのプレヤーヤーだけでなく、琉球のアウトサイドのプレーヤーに7本リバウンドを取られている。これが本当の問題」と言及。その反省を踏まえ、「ビッグマンだけでなく、アウトサイド陣のボールへの執着、50−50ボールに対してひたむきに追いかけることが試合の結果につながったと思います」と最終戦の勝因をあげた。

「彼らに伝えたのは、古い言い方かもしれないけど、エナジーがなければ絶対に勝てない。根性論みたいなことを言うけど、そのエナジーがあって初めてゲームプランが、自分たちがやらなければいけないことがある。相手よりも勝ちたい意欲が勝らないかぎり試合には勝てないことは午前中の練習で伝えたので。今日は彼らの勝ちたい意欲が見えたいいゲームだったと思います」

 エースの富樫勇樹は第3戦の勝利について「昨日言ったとおり3戦目まで行きたくなかったというのは正直なところですけど、切り替えて戦った結果だと思います。3戦目まで戦って疲労などの問題があるかもしれませんが、それ以上にチームとして得たものが大きいと思います。ファイナルに向けて頑張ります」と力を込めた。

 千葉が得たもの、それは琉球が教えてくれた勝ちたい意欲とボールへの執着心にほかならない。そして富樫はこう続ける。

「今シーズンはファイナルに勝つためにやってきているので、それだけです。この琉球戦の前はコー(フリッピン)選手はそれほどプレータイムがなかったのですが、このような大きな舞台でコートに立って自分の仕事をしてくれた。シーズン途中はもっと出たいという気持ちがある中で、ちょっとフラストレーションが溜まっている選手が明らかにいたんですけど。今はチームが優勝するために自分ができること、試合に出ないなら違うところで、そういう気持ちでいてくれるので大きいかなと思います」

 過去2回ファイナルでアルバルク東京に敗れた千葉。その悔しさをバネにここまでやってきた。富樫は「琉球さんの分まで戦わなければいけない」と気持ちを新たにする。

 今シーズンの最終カード、竜虎対決でどのようなドラマが演じられるのか、今から楽しみで仕方ない。

琉球との戦いを終えて、「チームとして得たものが大きい」と富樫は語った [写真]=B.LEAGUE


文=入江美紀雄

富樫 勇樹の関連記事

千葉ジェッツの関連記事

B1の関連記事