2023.06.14

横浜BCが河村勇輝の契約継続会見開催「横浜といえば『ビーコル』と言われるクラブにしたい」

会見ではシーズンの振り返り、来るワールドカップについて語った河村勇輝 [写真]=横浜ビー・コルセアーズ
スポーツライター

 横浜ビー・コルセアーズが14日、今シーズン、八面六臂の活躍を見せBリーグでは球団史上初のチャンピオンシップ(以下CS)出場へと牽引したスターポイントガード、河村勇輝の継続契約記者会見を横浜市内で開いた。

 今月2日にチームから契約継続の案内は出ていたが、この日はその契約期間が2025−26シーズンまでの3年であることが明らかになった。

 2022−23シーズンは大学を中退して純然たるプロ選手としての初めてのシーズンを送った河村獲得へ向けて交渉を望んだチームは相当数にのぼった模様。しかし、22歳の司令塔は特別指定選手としての前2年を含めて3年を過ごしてきた愛着ある横浜BCへの残留を決断した。

 Bリーグに入ってから今シーズンまで、勝ち越したことすらなかった横浜BCの今シーズンの大躍進を支えたのは間違いなく河村の力が大きかった。今シーズン、天皇杯、CSともに準決勝で敗れ頂点に手が届かなかったが、その苦渋を同じチームで甘美なものへと変えてみたいという意思が、契約継続の大きな決め手となったという。

「他のチームに移籍してさらに高い目標を掲げてプレーをするっていう選択肢もありましたが、それ以上にこの悔しさや反省を生かして、強いモチベーションを持って試合に臨むことができる、悔しさを晴らせるのはこの横浜ビー・コルセアーズで戦うことが一番だと思いました」

 河村が残留したこと自体も驚きだったが、その契約期間が3年というこのリーグでは異例の長さであることがそこに拍車をかける。おそらく横浜BC以上の好条件を提示されたであろう彼にとって、お金だけに価値を見出すのではなく、バスケットボール選手としての自身を成長させる環境であることにも重きを置いたように感じられる。

 河村にとって横浜BCはまだまだ伸びしろの多い「変わっていくチーム」で、その一員であり続けたいというのがこの契約締結に至った大きな理由だとした。

「チームとしても組織としても、今、横浜ビー・コルセアーズは変わっていけるチームだと思っています。元々出来上がったチームに行くことも1つの選択肢ではあるんですけど、試合の結果に対する僕の役割だけではなくて、横浜ビー・コルセアーズという会社、組織としても変わろうとしていて僕としても大きくしていければいいなという気持ちがありましたし、こういうと失礼な感じですが、今のビーコルはすごいビッグクラブというチームではないですけど、それを今後、(他の)Bリーグのクラブの人が聞いても『ビッグクラブだ』と言われるようなチームにしていきたいなという気持ちはあります」

 そう力強く言葉を述べた河村。横浜という370万人以上が住み野球の横浜DeNAベイスターズやJリーグの横浜F・マリノスといった他のプロスポーツのライバルがいる中で「横浜といえばビーコルだ」と言われるようなチームにしたいという意欲も強い。

 繰り返しになるが、2022−23シーズンの河村のプレーぶりはあまりに鮮烈だった。かねてから持っていた抜群のアシスト能力に加え、日本代表での活動もあって秘めていた得点能力が開花し、手のつけられない選手となった。その活躍で、シーズンMVP、アシスト王、新人賞、ベストファイブなど計6冠に輝いた。

 シーズンの終盤からこのスター選手の去就はファンや関係者の関心の的となっていた。横浜BCの竹田謙ゼネラルマネージャーは、数多のチームが河村との交渉許可を求めてきたと明かしたものの、彼等がどういった条件を提示しているか等まではわからず忸怩たる思いもあったと吐露した(リーグの規定で新人選手の基本報酬金額の上限はB1、B2ともに460万円となっているが、今年までその対象だった河村の来季以降の年俸は相当上がるものと推察される)。

「それはもう毎年、どの選手であってもそこのところはこの仕事で本当に一番、ムズムズする嫌な感じはあります。そういう意味では、(河村の残留で)本当にホッとしていますね」(竹田GM)

 シーズン終盤からCSにかけて脚の故障を抱えながらコートに立っていた河村だが、治療の経過は順調だと口にした。今夏、沖縄でも開催されるFIBAワールドカップの日本代表に選出されることは濃厚で、同チームの成否の鍵を握るキーマンと目される。見据える将来の海外でのプレーをするに足る力量を備えていると証明するためにも、この世界大会で力量を十全に見せる意気込みも大きい。

 1年前――東海大を中退してプロ転向を発表する会見で河村は「日本一のPGになりたい」と述べた。その後の大きな成長をもってしても、自身がまだその称号を得たなどとは露ほどにも感じていないようだ。

「日本一のチームになったからといって日本一のPGになるわけではないですけど、まずはチームを日本一に導きたいという気持ちがあります。それ以外でも、個人の目標として海外で活躍するようなプレーヤーになりたいという気持ちがあります。それを証明できるワールドカップが8月にあるので、それまでしっかり準備したいなと思っています」

取材・文=永塚和志

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