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【対談】橋本竜馬×東俊介「Bリーグが掲げるアスリートのキャリアマネジメント」<前編>

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Bリーグでは選手の現役時代の魅力を最大化させ、未来につなげることをテーマにしたキャリアマネジメントプログラムに取り組んでいる。プロジェクトを支援する株式会社アーシャルデザインの東俊介と越谷アルファーズに所属する橋本竜馬の対談が実現。前編ではアスリートの価値をテーマに話をうかがった(6月25日取材)。

インタビュー=酒井伸
写真=須田康暉

――お互いの自己紹介からお願いします。
 元ハンドボール日本代表のキャプテンで、現在は株式会社アーシャルデザインに勤務しながら、女子ハンドボールチーム・北國銀行ハニービーの監督、Tリーグ・琉球アスティーダの取締役、公営競技のマーケティング・コンサルティング事業を手掛ける株式会社MAGNETの取締役も務めています。
橋本 越谷アルファーズ橋本竜馬です。僕も日本代表でキャプテンを務めた経験があります。

――まずはアスリートの価値について、東さんは元選手の立場としてどのように感じていますか?
 競技を通じて夢を与えられること、ファンを作る力を持っていること。あとは、学力や記憶力、知識ではなく、コミュニケーションを取りながら答えのないものに挑戦する非認知能力があることだと思っています。
橋本 アスリートの価値はアスリートそのものですよね。チームは自分が積み重ねてきたものを価値として感じ、「我々の選手にしたい」と受け入れてくれます。行動自体が価値ですし、それにどのようにして気づくのかが大切だと思っています。
 アスリートは競技力だけを価値にしてしまうと、頂点を迎えたあとは下がっていく一方。競技力がなくなると、その競技のことしかわからず、自分の存在意義を見失うことにつながりかねません。
橋本 36歳とベテランの域に達し、現役を退く同年代の選手が増えてきました。自分がなぜ生き残っているのかを考えた時、競技力に対する付加価値というか、人間力を向上させていく姿に価値を感じてもらっているのかなと。競技力と人間力の両方を磨くことで、価値が高まっていくと思っています。

 ファンを作るために必要なのは「競技力×人間力」で、足し算ではないんです。競技力「100」、人間力「0」の場合、足し算では「100」になるけど、掛け算では「0」になる。その逆も同様です。人間力を高めるためにはどのようにすればいいと思いますか?
橋本 そのようなことに気づき始めたのは最初に日本代表に選出された時。チームメートも日本代表に選出されるほど上手だから、そのなかでどのようにして自分を出していくのか、どのようにして人を引っ張っていくのかを考えた時、その姿勢、人とのコミュニケーション能力も人間力だと感じ、競技力同様に伸ばしていこうと思いました。シーホース三河琉球ゴールデンキングスを経て、2019年にレバンガ北海道へ移籍しました。このチームは前の2チームに比べて規模が大きくなかったけど、スポンサーやファンの方々との距離がすごく近かった。スポンサーの方といろいろなことを話していくうちに、自分に魅力を感じてもらえたと思っています。そこで自分としてまだ成長できると思ったので、いろいろな知識を吸収できるチャンスがあれば積極的に活かすべきだなと。その結果が自分のキャリアにつながっています。
 橋本選手は所属チームに頼らず自分の価値を高めたい意識を持っているのかなと。2016年のBリーグ誕生に伴ってプロ化され、2018-19シーズンに在籍した琉球ゴールデンキングスは自分がいなくても成長するチームと感じたようですね。そこからレバンガ北海道へ移籍し、競技面やビジネス面を変えなければいけないと。自分の存在意義を表現するというか、ベンチャースピリットを持っていると感じました。ところで、シーズン終了後のスポンサー挨拶を嫌がる選手は多くないですか?
橋本 はい。自分も最初はなぜ行かなければいけないのかと思っていましたけど、徐々に必要性を感じてきました。スポンサーの方と会話を重ねることで、チームに魅力を感じてもらい、チームのために尽力してもらえる。アスリートには人の心を動かす力もあると思っています。
 うまくなりたい気持ちはアスリートなら持っているものですが、人間力を高めるためには、自分がどのようなコミュニティにいて、どのような機会があるのか。選手であれば、試合、スポンサーとの交流会、クリニックなど様々な機会があります。そこでどのような行動を取るのかが大事です。例えば、試合でシュートを決めた時、ガッツポーズを取るとします。チームを盛り上げるために仲間にするのか、それとも自分の名前が書かれているタオルを掲げているファンにするのか。そういったことだと思います。スポンサーへ挨拶する時、「どのような仕事をしているんですか?」と聞いてみるとか、その企業の商品を持っていってみるとか。こういったことも人間力です。チームが必要とするのは、競技力が高くて人間力がない選手より、競技力はそこそこでも人間力がある選手なのかなと。

橋本 僕もそう思います。仮に自分が選手を選ぶ立場になれば、人間力を優先します。
 会社員が「僕が営業している姿を見てください」と言っても見てもらえない。僕は現役時代、「試合を見に来てください」といろいろな人を誘っていました。その方にガッツポーズをしたり、試合後にユニフォームのまま挨拶に行ったり。街中では誰も知らないようなハンドボール選手でしたけど、試合会場ではスターでした。試合後の食事にも必ず顔を出していて、スケジュールの都合で、挨拶だけで帰ることもありましたけど、「数分だけなのにわざわざ来てくれたのか」と。僕という選手のことを好きになるのではなく、僕という人間のファンにになってもらえるように。ファンを作るためには知ってもらい、好きになってもらい、応援してもらうという段階があり、応援してもらうということは、お金と時間を使ってもらうことなんですよね。

――子どもたちの憧れであることもアスリートの存在意義だと思います。
橋本 試合で活躍する姿を見て、「自分もあの選手のようになりたい」と思ってもらえるのが一番。ただ、日頃の生活をどのように過ごして、どういった練習をこなしたからプロになれたという、夢を叶えるための行動をわかってもらえたらいいですね。選手によって歩んできた道は異なりますから。

――そのように考えるようになったきっかけは?
橋本 考え癖がついたと思っていて。すべての物事には理由があると思います。なぜ起きているのか、どのように感じてもらえるのかを考えてから行動に移すようにしています。ただ時間を過ごすだけではダメで、1日24時間なのは同じ。それをいかに濃厚に過ごすのか。そういったところから今の自分が作られていると思っています。
 なりたい自分になるためには、できないことをできるようになる必要があります。そのためにはできないことにチャレンジし、失敗と成功を繰り返しながら、成長していくことが大切です。あの人は特別だと思わせるのではなく、チャレンジする姿を見せ続けることが子どもたちに夢を与えると思っています。
橋本 あとは楽しむことですね。苦しい姿を見せても共感してもらえない。楽しむなかで苦しさもあるということ。自分がやりたいことを取り組んでいかないと、ファンの獲得につながらないし、皆さんの共感を得られないと思っています。

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