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【対談】橋本竜馬×東俊介「Bリーグが掲げるアスリートのキャリアマネジメント」<後編>

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Bリーグでは選手の現役時代の魅力を最大化させ、未来につなげることをテーマにしたキャリアマネジメントプログラムに取り組み始めている。プロジェクトを支援する株式会社アーシャルデザインの東俊介と越谷アルファーズに所属する橋本竜馬の対談が実現。後編ではアスリートのキャリアをテーマに話をうかがった(6月25日取材)。

インタビュー=酒井伸
写真=須田康暉

――これからはアスリートのキャリアについて聞いていきます。
 橋本選手は、「キャリア」はどのような意味かご存知ですか?
橋本 キャリア……。わからないです。
 経歴というイメージがあると思いますが、キャリアの語源は轍、つまり車輪の跡。ということは、キャリアは振り返らないと見えないものなんです。前に向かって、キャリアを作っていくのは自分です。橋本選手は様々な考え方に基づき、単にオファーを受けた中から条件のよいチームに移籍するのではなく、誘われたなかから自らがどのようなキャリアを歩みたいのかを重視して、チームを選んできたのかなと。オファーを断るのは辛いと思いますけど、主体的にキャリアを選んでいると思っています。
橋本 アスリートは限られた時間でお金を稼がなければいけませんが、お金を基準に移籍先を決めることはないですね。どこで1年を過ごしたいのか、どれが一番成長できる選択なのかを考えて決めています。人間力の向上はもちろん、これまで自分を欲するチームを選べているので、選手として良かったと思っています。失敗した選択は一度もないですね。
 橋本選手は自分がチームでどうなれるのか、チームに対してどのように恩返しできるのかをよく考えていますよね。アスリートのあるべき姿だなと。1日は24時間で、練習やケアに8時間、睡眠に8時間を使ったとしてもまだ8時間も残ります。この8時間で何をするのか。例えば、スポンサーさんと会って話すだけで、好きになってもらえる可能性がありますよね。そして応援してもらえるようになればチーム、自分のためにもなります。そういった機会を作ることは大事だと思います。

――Bリーグは2023年12月にアーシャルデザインとサポーティングカンパニー契約を締結しました。選手のキャリアマネジメントに関わっていますが、どのような特徴があるのでしょうか?
 世の中の課題として、人手不足とアスリートのセカンドキャリアの2つがあると思っています。非認知能力と粘り強さを持つアスリートが社会で活躍すれば、両方の課題を解決できます。アスリートの本質は競技をプレーすることですけど、現役時代から競技以外の活動にも取り組むことによって自分の価値だけではなく、チーム、そしてBリーグ自体の価値も高まります。アーシャルデザインはスポーツとアスリートの価値を高め、日本を元気にしたい、日本を変えていきたいという思いでご一緒させていただいています。

――東さんは現役引退後、早稲田大学大学院でスポーツマネジメントを学び、日本ハンドボールリーグなどを経て今に至ります。橋本選手は現役引退後のセカンドキャリアをどのように描いていますか?
橋本 現役を引退すれば選手としては終わりですけど、人生は続いていくもの。自分がどのように生きていくかだと思っています。セカンドキャリアを支援してもらうのはすごく大事なことだと思いますけど、そもそも選手が自分の人生をしっかりと考えて、どのような意図を持って生きていくのか。そうすると自ずとやらなければいけないことがあり、それがセカンドキャリアだと思っています。
 セカンドキャリアというより、ネクストキャリアですよね。現役引退後にバスケットボールの技術を使うことはありませんが、肩書だけは残ります。僕がハンドボール元日本代表キャプテンだと伝えると、すぐに相手の心をつかむことができます。1つの言葉にはいろいろな意味がこもっていて、アスリートだったんだとか、日本代表に選ばれるほど頑張ったんだとか、キャプテンだったなら人望もあったんだとか。
橋本 自分自身を大きくするというか、選手のうちからいろいろな活動をしていきたいです。自分自身を助けるという言い方はしたくないですけど、そういう意味だと思っています。

 競技以外のことにも視野を広げていかなければ、やりたいことは見つかりません。なぜなら、知らないことはやりたくないですから。バスケットボールクリニックは競技をプレーしたことがない人、Bリーグを知らない人に認知してもらうきっかけになります。先日は鹿児島県でクリニックを開催していましたよね。いろいろな場所に足を運び、いろいろな人に会って、自らのファンを増やし、視野を広げていく。現役のうちから積極的に取り組んだほうがいいと思います。

――アーシャルデザインは具体的にどのようなことに取り組んでいくのでしょうか?
 まずは適性検査を受けてもらい、どのような職業に向いているのかを知ってもらいます。営業やマーケティング、広報などいろいろな仕事がありますが、自分がやりたいことと向いていることは少し異なる場合があります。自らがやりたいことに向いているかを知ることができますし、自分が向いていることを知ることが、やってみるきっかけにもなるのかなと。僕自身は思いやりがあって、努力する習慣がある人間だと思っていましたけど、実際に適性検査を受けたらあまり周囲のことを考えずに自分で物事を進めていくリーダー的なタイプという結果でした。
橋本 僕もその結果になりそうです。突っ走る性格ですから。
 いい、悪いではなく、向いているのか、向いていないの話なんですけどね。今はエンジニア不足という社会課題があります。アーシャルデザインではそれを解決するため、アスリートにプログラミングを教育する事業にも取り組んでいます。アスリートは明るくて、コミュニケーション力を持っている人が多い。そういったエンジニアを社会が必要としています。個人で仕事をできるようになってきましたけど、ビジネスはチームで動いていくものです。キャプテンは自分のことに加え、チームメートのことも考えなければいけないので大変ですよね。キャプテンの上にはチームを束ねるヘッドコーチがいる。橋本選手はヘッドコーチに挑戦してみてもいいかもしれませんね。
橋本 ただ、少し敬遠している部分があって、大変そうだと思いながらHCのことを見ています。どのようにするんだろうと思ったり、もっと助けてあげなければいけないと感じたり。HCになることはないと思っていますけど、もしかしたら指導者の道に踏み入れることはあるかもしれません。
 指導者以外にもキャプテンの経験は活きるはずです。いろいろなことにチャレンジすればいいと思います。

――適正検査を受けて、自分のことを知ったあとはどのようなステップに移るのでしょうか?
 自分がどのような価値を出せるのかを勉強していきます。アスリートだからこその強みと弱みを理解した上で、いろいろなことを提示できるような研修を実施していきたいです。ワークショップではグループワークを実施しようと考えていて、選手同士でそれぞれのキャリアについて話し合うのがいいのかなと。あとは例えばバスケットボールクリニックを開催するとなった時、どれくらいの生徒が必要で、月謝はいくらで、場所代はいくらなのか。そういった事業モデルを作ってみるのもいいですね。

――選手の立場として、Bリーグのキャリアマネジメントに期待することを聞かせてください。
橋本 活動を少しずつ広げ、根付かせることによって、様々な選手が自分も参加しなければいけないと感じるはずです。そこに参加した人が成長し、成功することで、自分もできるかもしれないと思わせることが大事なのかなと。自分自身も参加することで、魅力的なキャリアを作っていきたいです。
 橋本選手にはリーダーシップを取り、先頭に立って取り組んでもらいたいです。アーシャルデザインとしては意味と意義のあるプログラムにしていきたいです。
橋本 今日は様々なお話を聞けたので、これからはキャリアマネジメント部長として、Bリーグと一緒になって前に進んで行きたいです。選手生活の1日、1日を大切にして、周りの選手に影響を与えられるような存在になっていきたいです。

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