2022.06.23
「日本生命 B.LEAGUE FINALS 2021-22」第1戦で宇都宮ブレックスが先勝したその5時間後、同じ東京体育館でそれ以上にシビアな決戦の火ぶたが切られた。トライフープ岡山とアルティーリ千葉による「B2昇格決定戦2021-22」だ。一足早く昇格を決めた長崎ヴェルカに続くのはどちらか、B3ファンならずとも必見の大一番だった。
そもそもこの昇格決定戦が組まれたのは、コロナ禍が契機となっている。打ち切りとなった2019-20シーズンのB3からB2への昇格は、東京エクセレンス(現横浜エクセレンス)のB2ライセンス失効に伴う佐賀バルーナーズの自動昇格のみ。2020-21シーズンはB2、B3間の昇降格が見送られ、そのシーズンと2021―22シーズンの優勝クラブが2022-23シーズンからB2で戦うこととなったが、B2ライセンスを持たないアイシンアレイオンズ(今シーズン限りで活動終了)が昨シーズン優勝したことで、昇格決定戦実施の可能性が浮上した。
昨シーズンは最終節までもつれた3チームの2位争いを岡山が制し、今シーズンは新規参入の長崎が他を圧倒して自動昇格。同じく新規参入のA千葉が37勝7敗で2位に入り、かくして両シーズンの2位同士で残り1枠が争われることとなった。岡山は今シーズンも29勝14敗で5位に食い込んでおり、熱戦が期待された。
しかし、試合は第1クォーターから一方的な展開となった。第1クォーター残り7分45秒の杉本慶の3ポイントを皮切りに、A千葉がアウトサイドシュート攻勢。ゾーンディフェンスで対応を試みる岡山に容赦なく3ポイントを浴びせ、第1クォーターを27-13とリードした。
第2クォーターに入ると、レギュラーシーズンでもリーグトップの成功率を残したA千葉の3ポイントが爆発。序盤こそ岡山が好ディフェンスからの速攻などでA千葉にタイムアウトを取らせるが、その後は岡山のディフェンスの穴を突いたA千葉のシュートが面白いように決まり、このクォーターだけで6本の3ポイントを炸裂させた。岡山はディフェンスの対応が遅れた上、オフェンスでは今シーズン得点王のクリストファー・オリビエ一辺倒となってしまい、ファウルトラブルに陥りかけたA千葉の隙を広げることもできないまま、徐々に攻め手を失っていった。
63―27の大量リードで前半を終えたA千葉は、第3クォーターも全く手を緩めなかった。前半のオフェンスの好循環はこのクォーターにも効果を発揮し、最終的に24得点11アシストを挙げた杉本を中心とした素早いパスワークからインサイドでの得点も量産。一方の岡山は3シーズン積み上げてきた組織力を発揮できず、第3クォーターを終えたところで85-43と勝敗はほぼ決した。第4クォーターは岡山が26得点を挙げて意地を見せたが、最後は100―69という大差をもってA千葉がB2昇格を勝ち取る結果となった。
オーストラリア代表を率いた経験のあるA千葉のアンドレ・レマニスヘッドコーチは、1カ月近くあった準備期間の間に「大事な試合だということは全員がわかっていた。彼らにプレッシャーをかけるのではなく、まずは過程を大事に集中して練習していこうと話した」とのこと。試合後の会見で「最初からエナジーを注ぎ、集中して戦うことができた」とその成果を語り、チームの戦いぶりを称賛。そして、「すべての選手が貢献してくれて、誇らしい気持ちでいっぱいです。ケガやコロナによる隔離など難しいことはたくさんありましたが、最後はチームが団結した。目標を達成してホッとしているが、また来シーズンに向けて準備していきたいと思います」と早くも次のステージに目を向けた。
長崎に次ぐ“黒船”としてB3リーグを盛り上げたA千葉がはたしてB2でどのような戦いぶりを見せるのか、オフシーズンの動きにも注目する必要がある。
文=吉川哲彦
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