2024.09.24

株式会社りそなホールディングスにどうしてB.LEAGUEのタイトルパートナーになったのか聞いてみた

株式会社りそなホールディングス取締役兼代表執行役社長兼グループCEO南昌宏氏[写真]=兼子愼一郎
バスケットボールキングプロデューサー(事業責任者)

 Bリーグは発足以来初のタイトルパートナーとして、株式会社りそなホールディングス(以下、りそなグループ)を迎え入れることを2024年7月1日に発表した。これにより9シーズン目となるBリーグは「りそなグループ B.LEAGUE 2024-25シーズン」として新シーズンの幕をあける。この提携は、6月末に発表があったBリーグの中期経営計画やこれまでの歩みに対する、りそなグループの賛同があってのことだ。

 なぜ、野球でもサッカーでもバレーボールでもなくバスケットボールだったのか?Bリーグが掲げる理念のどこに賛同のポイントがあったのか…。素朴な疑問をぶつけるべく、タイトルパートナーとして、日本のバスケットボール界そしてBリーグを支えるために手を挙げた株式会社りそなホールディングス取締役兼代表執行役社長兼グループCEO南昌宏氏に話を聞いた。

インタビュアー=村上成

■ 野球に情熱を注いだ少年時代と痛烈な思い出

――Bリーグとタイトルパートナー契約を締結されましたが、まずは南社長のスポーツに対する思いや、スポーツとの関わりを教えていただけますか。

 小学生の頃から、もともとスポーツが大好きでした。今でも本を読むことと、スポーツを見ることは好きで、特に球技が好きですね。サッカーもラグビーも大好きですし、もちろん、バスケットボールを見るのも好きです。

競技面では、小学校の時は野球をやっていて、ポジションはピッチャーでした。小学6年生からはボーイズリーグで硬式野球をはじめて、中学校3年生までプレーしていました。自慢ではないですが、所属していたチームが強く、中学3年生の時に和歌山県代表として全国大会にも出場しました。決勝まで勝ち上がりましたが、私のエラーがきっかけで負けてしまいました。私がエラーしていなければ、おそらく全国制覇ができていたので、チームメートにあわせる顔がありません…(笑)。いまだに覚えているので、自分の中では強烈な思い出ですね。

――小学生時代から硬式野球。中学では全国大会準優勝とは、かなり高いレベルでプレーされていたんですね。

 小学生の頃は本気でプロ野球選手を目指していましたが、中学時代に「プロは無理だ」と悟りました。他チームに吉井理人さん(元ニューヨーク・メッツ他/現千葉ロッテマリーンズ監督)がいて、彼の球を見てレベルが違うと思いました。吉井さんは、中学生の時点で身長が180センチくらいありましたし、変化球も良かったですし、こういう人がプロの道に進むのだ、と思いました。

――15歳で挫折のような経験をされたんですね。

 やっぱり全国大会に出るとすごい選手たちがいるんですよ。努力する才能は当たり前であり、その上に天賦の才を持つ人がいて、さらに奇跡的に努力できる人もいる。あとは運とか縁もあり、その先にプロに進めるのではないか、と中学生の時に悟りました。子供ながらに痛烈に思いました。高校に進学後は、ハンドボールをやりました。ハンドボールを選んだ理由は、当時、和歌山県には4つ程度しかチームがありませんでした。チーム数が少ないので、もしかしたら優勝できるのではないか、と思い、自分でチームを作りました。しかし練習を真面目にしていなかったので、結局勝てなかったですけどね(笑)。

Bリーグをパートナーとして選んだ理由とは?

[写真]=兼子愼一郎


――そんなスポーツ好きな南社長がバスケットボール(Bリーグ)を選ばれた決め手は何だったのでしょうか。

 一つはBリーグの皆さんの志の高さ。さらに戦略性、それを進めていく実行力にも共感しました。プロバスケットボールは発足当初、野球やサッカーに比べて日本国内の認知が低かったと思います。、黎明期から支えてきた上で、今に至りますので、その道程は言葉で語れないような大変さもあったと思います。

我々も2003年にいわゆる「りそなショック※」があり、あれから21年が経ちますが、平坦な道を歩いてきたわけではありませんでした。このような歴史と合わせて、挑戦、変革をキーワードに自分たちの生きる意味を探ってきたという意味では、すごくBリーグ様に共感するところがありました。
※りそなショックとは自己資本比率の大幅な低下を受け、自己資本増強のために金融庁へ公的資金注入の申込みを行ったこと。
我々は、ここ何十年も仕事以外で“一つになる”社会貢献のようなこともやってきていますが、今回のような我々にとって起爆剤になるような大きなインパクトがあるものに参加させていただくことは初めてになります。Bリーグ様となら一緒に夢を追っていける、と想いを強く持つことができたことも理由です。

――2023-24シーズンのBリーグファイナルも観戦されたとお聞きしました。実際にアリーナで見たBリーグの印象はいかがでしたか。

 日本であれほどのビッグゲームをリアルで見たことがなかったのですが、想像していた以上に一体感と熱気を感じることができましたし、あの魅力に多くの人たちが共感しているのだと感じることができました。

私は1994年にアメリカのシカゴにいましたので、NBAのシカゴ・ブルズの試合を見たことがあります。30年前ですが、その時もやはり驚愕したといいますか、アメリカのバスケットボールの熱気とか、ファンの人たちの熱量みたいなものを肌で感じました。当時は日本でこれほどバスケットボールが盛り上がるとは想像していませんでしたが、Bリーグも当時感じた熱狂に近く、NBAに近づいてきていると感じました。

これからが楽しみです。まだ道半ばで成長の途上の部分にも魅力を感じています。出来上がったものではなく、これからまだやり方次第では大きな変化を遂げることができるところもBリーグ様に惹かれたところです。

――島田慎二チェアマンと最初にお会いされた印象はいかがでしたか。

 強い志と熱量を感じました。私は一生懸命に正面からやる人が大好きです。最近は、一歩引いて冷静に物を見ているが、自分ではなかなか一歩目を踏み出せないという人が多いと思っています。

しかし、島田チェアマンはプロ選手だったわけでもなく、違った業界からバスケットボール界に入って来られましたが、事を起こそうという気持ちの強さと実行力がある。一生懸命やれば勝てるという問題ではないので、戦略性は高いと感じますし、かなり挫折も経験されてきたとも思うので、そこを乗り越えていく修正力も今のBリーグを作っているのだと思っています。我々も同じような道を歩んできており、このような部分も共感します。

島田チェアマンは「バスケで日本を元気に。」と仰っていましたし、Bリーグ様が2050年に向けて掲げたビジョン「感動立国」というネーミングもすばらしいと思います。まず大きな旗(目標)を立てており、そこに向けて様々な困難をどう乗り越えて目標達成に向かうか、という熱量がいいですよね。

■「JOIN THE HOPE」に込めた想い

[写真]=兼子愼一郎


――今回のタイトルパートナー就任に際して、りそなグループとしても「JOIN THE HOPE」という言葉を掲げています。この言葉に込めた思いは?

 希望や夢を共有して人がつながっていくことで、今まで感じなかったような熱量とか、今まで一人では突破できなかった壁を越えていく力が出てくると思っています。人々が集まり熱量を持って前に進むということは、スポーツだけでなく企業にとっても重要な要素だと思います。誰かのために何かをやり遂げようという思いがなかったら、熱量は長く続かない。今回、Bリーグのみなさんと我々が一緒になって進んでいくという意味も込めて、「JOIN THE HOPE」はとても良い言葉だと思います。

――“今”というより“未来”に向けてという言葉もいいですよね。

 顔が上がっていて前が見えるのは大事なことと思います。過去の経験値とか自分たちの土台となる根っこの部分を大事にしつつ、この先に自分たちがどうなりたいのかという目標は持つことは原動力になる。人を動かし、何かを変えていくための力になると思います。

――そうしたキャッチーな言葉も含め、どこか金融機関らしくない印象も受けます。

 我々はずっと前から「脱銀行」と言っています。既存の自分たちが持っていた価値観とか、従来の我々が持っている前提みたいなものを超えていこうと考えています。それほど世の中の変化が速いし、お客さまのニーズの変化や多様化、高度化が進んでいく中で、我々自身が過去や固定概念に捉われていては良いものを提供することができないと思っています。

Bリーグと共に目指す未来とは

[写真]=兼子愼一郎


――Bリーグとともに目指す将来はどんな世界なのでしょうか。

 島田チェアマンとお話しをする中でも出てきたのですが、30年来のデフレ、そして今、ようやく少し緩やかなインフレの入り口に立ちつつあるかもしれないですが、やはりバブル崩壊後に日本が辿ってきた現在までの道筋を見ている中で、日本全体の元気が少しなくなってきているのではないかなと思います。

やはり、日本全体が盛り上がらないといけないと思います、そのためにはそれぞれの地域が元気であることが必要です。人口動態のようなものを考えていくと、どうしても色々な意味で各地域の工夫や、新しい起爆剤が必要だと考えていますので、それになり得るコンテンツの一つがスポーツであると思います。

Bリーグは各地域に根が張られており、バスケットボールは競技人口も多く、ファンの皆様も多岐に渡っています。特に若い世代や女性ファンの方々に支えられているというところは我々にとっても魅力的です。それぞれの地域単位で盛り上がって、つながって、バスケットボールというキーワード、感動立国という大きな旗印のもとで一つになり、盛り上がっていくことは非常に素晴らしいことだと思います。我々もサポートさせていただきたいと思いますし、我々のビジネスの変化にもつながっていくとも思います。

もう一つは我々の話になってしまいますが、「従業員が一つのものを見て、もう一度一つになれる」、このような機会が作れるのはスポーツが持つ力だと思っています。

――Bリーグの今シーズン開幕に際して、具体的に挑戦してみたいことは?

 やりたいことは色々とありますが、一つの例を挙げますと、りそなグループは2005年から小学生向け金融経済教育を各地で草の根的に実施しており、これから金融教育×バスケットボールという取り組みを考えています。

金融経済教育は日本国民、国益にとってものすごく大事なことだと思いますし、小学生たちがプロバスケットボール選手と会ってゲームを通じて触れ合うことができるのは、子どもたちにとって、印象的な思い出になってくれると考えています。私自身も色々なところで人とお会いして印象に残っていることがあります。出会いも、風景も、その一瞬の一コマではありますが、色々な人たちの道筋を左右するかもしれません。

20周年時点で小学生向け金融経済教育の卒業生が約4万6000人。ついにその卒業生も入社してきました。このこともご縁なんです。私は来年還暦になりますが、この年になり、ようやく運や縁がすごく大事なことであると感じることがありました。島田チェアマンとの出会いもそうです。

我々にとって、りそなショックから20年の昨年はターニングポイントでしたが、その年にお話がなければ、タイトルパートナーはなれなかったと思っています。同じタイミングでたまたまBリーグ様もタイトルパートナーを探されていて、先ほど話したように共鳴できることを感じる、そしてご一緒する機会をいただけたということが大きなご縁だと思っています。このご縁から大きな花を咲かせられるように、これからグループを挙げて一生懸命応援させていただきます。最初は我々も勉強をしながらになりますが、ともに成長できればなと思っています。

――最後にBリーグファンの方々へ向けてメッセージをお願いします。

 昨シーズンのBリーグファイナルを観戦させていただいた時に、あの熱量がBリーグを支えているし、各チームはもちろん、選手一人ひとりの原動力になっていると思いました。ぜひ、もっと大きな輪で、Bリーグ、そして地域の活性化、日本を元気にという出発点として、我々も全力でサポートをさせていただきたいと思っています。

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