2024.05.30
就任1年目にして名門シーホース三河を3シーズンぶりのチャンピオンシップに導いたライアン・リッチマンヘッドコーチは、シーズン終了後に選手一人ひとりに、攻守、そしてフィジカル面の改善点を書いた紙をラミネートして手渡した。
昨シーズンをともに戦った10人の継続選手は、オフの間に各自その課題に取り組み、パワーアップして戻ってきた。そこに、リーダーシップに優れた須田侑太郎、帰化選手のモッチラミンなどが加わり、昨シーズンに足りなかったピースが埋まった。三河は悲願のB1タイトル獲得に向けて理想的な夏を過ごしたと言えるだろう。
プレシーズンに行われた「AICHI CENTRAL CUP 2024」の名古屋ダイヤモンドドルフィンズ戦、天皇杯2次ラウンドの富山グラウジーズ戦。三河は最終クォーターまでリードされながらも逆転勝利を収めるという、昨シーズンはやや足りなかった胆力を示した。
その変化を生み出したのは、キャプテンの須田とエースの西田優大だった。須田は我慢の時間帯にチームメートを集めてハドルを組み、「チームがバラバラになりそうな、実際になっていたタイミングで須田さんのひと声があって、一気にチームがまたグッとまとまった感じがあった」(西田)とリーダーシップを発揮した。一方の西田も富山戦ではクラッチタイムで13得点を挙げ、リッチマンHCから「エースたる所以が出た」と称賛された。
AICHI CENTRAL CUPの三遠ネオフェニックス戦や天皇杯のファイティングイーグルス名古屋戦のようにまだまだ“カイゼン”の余地は多い。キャプテンとエースを中心に、シーズンをとおして1日1パーセントの成長を積み重ねることで、昨シーズン成し遂げられなかった「6勝」を取りにいく。
久保田のこの夏の変化は誰の目にも明らかだった。昨シーズンは移籍1年目ながら55試合で先発を務め、「ポイントガードとして本質的な部分で成長できた」。しかしチャンピオンシップはケガもあって万全の状態で臨めず、悔しさを味わった。
「太りやすい体質」という久保田だが、全試合を万全の状態で戦うために「シーズンが終わってすぐにトレーナーに作ってもらったメニューを始めました。チャンピオンシップの悔しさもありますけど、コーチから求められていることは素直にやるべきかなと。こんなにトレーニングしたのは初めてです」。
その成果は目に見えて表れている。スピードと跳躍力が増し、26歳にしてリングに手が届くようになった。「自分が何かを変えなきゃ、状況が変わらないので」。クールな司令塔は並々ならぬ覚悟で今シーズンに挑んでいる。
文=山田智子
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